初代プロデューサーが語る誕生秘話:「女の子はこうあるべき」を変えたアニメ「プリキュア」制作現場を支えるクラウド

15周年を迎えた人気アニメ「プリキュア」。制作を手掛ける東映アニメーションは、クラウド活用を積極推進中だ。初代プロデューサーの鷲尾 天 執行役員に、アニメの誕生秘話と、その裏側にあったクラウドツール「Box」の活用法を聞いた。


 

人気アニメ「プリキュア」シリーズ ©ABC-A・東映アニメーション

「従来の女児向けアニメでは、女の子キャラがピンチになると必ず“王子様”が助けに来ていた。でも私は、そんなアニメ界の常識を変えたかった。」

東映アニメーションの鷲尾 天 執行役員(第一映像企画部部長)は、6月上旬に都内で開かれたBox Japan主催イベントでBox Women’s Network (BWN)提供のセッションに登壇。かつて初代プロデューサーとして手掛けた人気アニメ「プリキュア」シリーズを生み出した背景についてこう語った。BWNとは、女性がビジネスでも、また個人としても成長できる環境づくりを推進するBox公認コミュニティだ。

「プリキュア」の放送をスタートした2004年、社会における女性活躍はまだ発展途上だった。「アニメ界では、女性キャラはいつも男性キャラに助けられていた。ビジネス界では、毎年女性社員が一室に集められ『今年結婚して辞める予定の人は挙手してほしい』と上層部から告げられる企業があると聞いていた」と鷲尾氏は当時を振り返る。

女の子だって暴れたい

東映アニメーションの鷲尾 天 執行役員

そんな社会通念を変えるべく、鷲尾氏は「プリキュア」の企画を任された際、「女の子だって暴れたい」とのキャッチコピーを付けた。「女性だって、自分たちで困難を解決できる」との思いを込めたという。

「女の子たちが、りりしく自分の脚で立つさまを表現したかった。『プリキュア』の登場キャラクターが、魔法のステッキなどを持たずに“徒手空拳”で敵と戦う設定なのはそのためだ」(鷲尾氏)

鷲尾氏の思いが伝わり、「プリキュア」は日曜の朝アニメの定番として子どもたちに受け入れられた。同タイトルの4~6歳女児の年間平均視聴率は約39%、最高値は約60%で、年末の恒例番組「紅白歌合戦」の世帯視聴率と同程度の数字をたたき出した。

変身用のアイテムは、初年度だけで60万個以上売れた。この数字は女児向けの玩具単体としては歴代2位で、現在も破られていない。

だがプリキュアを世に出して2年が経過したころ、鷲尾氏は翌年以降のプランに迷っていた。同じキャラクターを継続して登場させると、いつかは子どもたちに飽きられると感じたからだ。ただ、親しみがあるキャラを降板させるとファンが離れる危険性もある。

そのはざまで迷いに迷った鷲尾氏は、主人公を含めた初代のメンバーを“卒業”させることを選んだ。「戦隊ヒーローもののように変身後の名前を継承しつつ、登場人物を一新し、作品そのものをモデルチェンジした」(鷲尾氏)

その後、プリキュア人気はどうなったのだろうか。

売り上げは3分の1以下に

初代メンバーが“卒業”した結果、グッズなどの売り上げは一時的に3分の1に落ち込んだ。だが鷲尾氏は考えを曲げず、翌年もメンバーを一新。しかも、それまでの“2人組”という設定を変え、何とプリキュアを5人に増やしたのだ。

すると、人気と売り上げは一気に回復した。鷲尾氏は「いまだに、なぜメンバーを増やしたらファンが戻ったのか正確な理由は分からない」と笑う。

“メンバーチェンジ”が奏功し、プリキュアシリーズは今年15周年を迎える©ABC-A・東映アニメーション

鷲尾氏がプロデューサーの座を後任に譲った後も、プリキュアは毎年キャラクターを刷新し続けた。18年の「HUGっと!プリキュア」までの14年間で登場した歴代キャラの数は、累計55人を数えるまでになった「

プリキュアを見て、『男の子だから』『女の子だから』という先入観を持たずに育った子どもたちがもうすぐ20歳になり、社会に出る。彼ら彼女らが企業の主力に育った時、大きく社会を変えるかもしれない」(鷲尾氏)

新シリーズのキャッチコピーは「なんでもできる!なんでもなれる!輝く未来を抱きしめて」。プリキュアたちは不思議な赤ちゃん「はぐたん」を守り育てながら、忙しい毎日をパワフルに突っ走っている。

そんなプリキュアたちの姿は、子供たちだけではなく、仕事に子育てに全力で取り組むワーキングマザーへのエールにもなっているようだ。まさにBWNが推進する「自分らしく働く」を実現するためのエッセンスがちりばめられていると言っても過言ではないだろう。

“縁の下の力持ち”のITツールとは?

東映アニメーションは、こうして国民的人気アニメに育った「プリキュア」以外にも、多数のヒット作を手掛けている。鷲尾氏によると、同社が次々と話題作を世に出せる理由の一つに、ITツールを積極的に導入して現場の生産性を上げている点があるという。

そんな制作現場を支える“縁の下の力持ち”といえるITツールの一つが、クラウドを活用したコンテンツ・マネジメントサービス「Box」だ。

ストレージ容量は無制限

「Box」は、ストレージ容量が無制限である点が大きな特徴だ。ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、画像、音声、文書など様々な形式のファイルをチームメンバーに共有できる。iOS/Androidアプリもあり、外出先からでも社内にいるのと同じように情報を閲覧できる。

メンバー一人ひとりの立場に応じて、(1)アップロードのみ、(2)ダウンロードのみ、(3)プレビューのみ――など7種類の権限を付与することが可能で変更も容易。プロジェクト単位で共有フォルダを作成・管理できるため、異なるタスクを並行して抱えている場合でも混同する心配はない。

東映アニメーションが「Box」を導入したきっかけは、ある重大なトラブルの解決に役立ったからだという。果たしてどんなトラブルなのか。

「セーラームーン」リメーク版の制作を救った

東映アニメーション 情報システム部 課長の賀東 敦氏

「Box」を東映アニメーションに導入した、情報システム部 課長の賀東 敦氏は、「14年ごろに『セーラームーン』シリーズのリメーク版を制作している時、フィリピンの子会社からデータが送られてくる最中に突然ネット回線が落ちた。現場は『早くしろ!』『どうなっているんだ』とパニック状態になった」と話す。

「そんな中で、トライアル導入していた『Box』がピンチを救ってくれると信じて『Box』経由でデータを送り直すようフィリピン側に頼んだ」と舞台裏を明かす。

結果的に重要なデータはBox経由で比較的すぐ日本に届き、リメーク版の「美少女戦士セーラームーンCrystal」は無事完成。古参・新規を問わず、幅広いファンから愛される作品となった。

制作現場の心強い味方

「Box」は現在のプリキュア制作を支えている ©ABC-A・東映アニメーション

同社は危機を救った「Box」を、15年に正式導入することを決断。「魔法つかいプリキュア!」(16年)や「キラキラ☆プリキュアアラモード」(17年)、そして「HUGっと!プリキュア」(18年)などの制作現場などでも活用してきた。

「容量を気にせず送れる点が、当社のように重い画像・映像をやりとりする業種にはありがたい。拡張子を問わず美しい画像でプレビューを再生できる点も役立っている」(「プリキュア」初代プロデューサーの鷲尾天執行役員)

現在では、「Box」上でスタッフ同士が画像ファイルなどを共有し、共同で閲覧・編集することが当たり前になっている。上司が外出中に、部下から上がってきた素材を「Box」のアプリ上で確認し、改善案を指示する――といったことも日常茶飯事だ。

「アニメの原作者と打ち合わせして素材を仕上げ、その場で本社に送って上司からOKをもらう、などの使い方も定着している」(鷲尾氏)

全社展開も視野に

今後は制作部門だけでなく、人事部門など全社的に導入し、採用時にアニメーター志望者のエントリーシートや作品データを「Box」上で受け取ることなども計画している。

賀東氏は「その昔、外付けHDDに画像データを入れ、郵送でやりとりしていた時期もあるが、『Box』に慣れた今ではとても考えられない。今後もテクノロジーを駆使して、ビジネスプロセスを変革していきたい」と力を込めた。

 

 

最終更新日:2018年09月27日

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