いまや新しい働き方の標準となりつつあるハイブリッドワークは、オフィスワークに加え、在宅勤務やリモートワークといったテレワークを加えたものです。人によっては完全在宅勤務やサテライトオフィス利用など、さまざまな形やオフィスワークとの比重があります。しかし、いずれの形をとってもどこでも働けるようなシステムやツールの導入は必須です。今回は、ハイブリッドワークやテレワークで必要となるシステムの種類とおすすめの製品を紹介します。
クラウドストレージ
テレワークを実施するために最も大切なことは、遠隔地にいる従業員同士や、お客様を含むステークホルダー(関係者)との間でスムーズに情報や資料を共有できる環境整備です。クラウドストレージはそのためにインターネット上でファイル共有スペースを提供し、複数メンバーでの作業を可能にします。また、セキュリティも意識しなければいけません。ビジネス向けのクラウドストレージならば、厳格な権限管理に加えてシステムログ情報をすべて取得し、あらゆる行動を追跡できます。
1. Box
ビジネス用途としてはデファクトスタンダードとなりつつあるクラウドサービスです。国内1万5千社以上、世界で11万社以上が導入する企業向けコンテンツ管理基盤で、クラウドストレージ機能を持っています。初めて使う人でもトレーニング不要の使い勝手の良さはもちろん、マルウェア対策といった高度なセキュリティ機能やアクセスコントロールによって、どこからでもセキュアなファイル共有ができ、効率的に働く環境を提供しています。Boxは単なるファイル共有スペースではありません。後述するテレワークに必須のサービスを含む1,500以上の他社アプリケーションとの連携でき、あちこちに散在するファイルを集約し利便性やセキュリティを上げるコンテンツハブ化が可能です。作成、共有されたファイルを効率的に管理・活用するためのコンテンツ管理機能も備え、使うほどに業務が効率化していきます。
テレワークの普及は進んでいるものの、社内外のファイル共有方法としてメールを利用している企業がいまだに約6割に上るというアンケート結果もあります(2021年「リモートワークに関するアンケート」より)。
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これは、PPAPと呼ばれるパスワード付きの暗号化ZIPファイルをメールで送信した後、別メールで暗号解除用のパスワードを送るというファイル共有方法が、いまだに多くの企業で行われていることを示唆しています。しかし、この方法でファイル共有を行うと、メールの誤送信やメールの盗み見によって情報漏えいが起きる危険性があります。添付のZIPファイルが暗号化されているため、ウイルスチェックも行えません、モバイルデバイスでちょっと確認、ということも困難です。こういった時代に合わなくなった問題もクラウドストレージを使えば解決します。クラウドストレージ機能を利用すれば、社内外でセキュアなファイル共有が可能です。さらにコンテンツ管理機能にある共同編集機能を使えば、リアルタイムでの複数メンバーによる同時編集も行えます。
Boxには、個人向けに無料プランと有料プランが用意されています。法人向けはすべて有料ブランですが、14日間の無料トライアルでお試し利用することも可能です(Enterprise Plusを除きます)。法人向けプランには、基本プラン「Business」、社外メンバーともファイルの共同編集を行える「Business Plus」、より高度なセキュリティ機能を備えた「Enterprise」、全機能とサービスをオールインワンで提供する「Enterprise Plus」の4種類があります。全プランで容量無制限のストレージが使える他、電子サインやワークフロー自動化も標準装備します。またオプション機能を各プランにアドホックに追加して購入することもできます。
ビジネスチャット
ビジネスのコミュニケーションをリアルタイムにすばやく行うために、最近ではメールよりもビジネスチャットが主流になりつつあります。チャット形式でメッセージをやり取りできるので、定型文が不要なうえ、時系列でログが残るため、情報を追跡しやすいことも特徴です。チャットスペース上でファイルを共有したり、共同編集したり、あるいは無料通話やビデオ通話でコミュニケーションが取れるようになっているサービスもあります。
2. Chatwork(チャットワーク)
30万社以上が導入し、国内利用者数トップを謳い文句に誰にでも使いやすく、IT業界以外の人でも直感的に操作できるビジネスチャットで、中堅中小企業にも人気です。暗号化通信や国際的なセキュリティ規格を取得するなど、高いセキュリティも確保しています。また、国内で開発されているため、表示がわかりやすいことも特徴のひとつです。
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3. Slack
Microsoft TeamsやGoogle Workspaceといったスイート製品に同梱されているのではなく、単独のビジネスチャットとしてはデファクトスタンダードともいえるサービスです。エンジニアや開発者に人気があるビジネスチャットです。数百種類のシステムと連携でき、コラボレーションハブとすることや、利用者ごとにカスタマイズできることが特徴です。在席確認もできるため、働く場所を選ばないハイブリッドワーク時代ではより重宝されます。また、以前のように社内利用限定ではなく、メール同様社外の人と繋がってリアルタイムコミュニケーションができます。ビジネススピードがあがったこともあり、バッチ型のメールからリアルタイム型のビジネスチャットへの移行は、社内外を横断したプロジェクトなどでも増えています。
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Web会議
ビジネスにミーティングはつきものですが、従業員同士または取引先と遠隔で会議を行うにはどうすればよいのか?その答えの一つがWeb会議です。パソコンに搭載されたカメラとマイクを使用し、ビデオ通話で会議を行えるものです。Web会議に特化したシステムの場合は非常にクリアな映像と音声で、複数人での会議を実施できます。Web会議システムによっては自動的に議事録を作成する機能もあります。ミーティングのためにオフィスに行く必要もなく、また電話と違ってファイルといった業務資料を表示や共有しながら説明やディスカッションができるなど、テレワークには必須のツールと言えます。
4. Microsoft Teams
マイクロソフトが提供する統合コミュニケーションツールです。Web会議機能のほか、ビジネスチャットも包含されています。本来はMicrosoft 365(旧Office 365)というスイート製品に組み込まれているので、Microsoft 365を活用する企業との相性が良いのが特徴です。法人向けの有料プランには、会議の参加可能人数やストレージ容量が無料プランから拡大され、24時間サポートが受けられる「Microsoft Teams Essentials」、会議のレコーディングと文字起こしの機能が利用できてOfficeアプリも使える「Microsoft 365 Business Basic」、会議だけではなくオンラインセミナーの「ウェビナー」を開催できるなど、すべての機能が使える「Microsoft 365 Business Standard」の3種類があります。
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5. Zoom
Microsoft 365やGoogle Calendar等の現在使用しているカレンダーシステムとの連携が可能で、カレンダーからの会議招待や会議実施ができるWeb会議システムです。グローバルで高いシェアを持っており、使いやすさに加えて、クリアな映像と音質が人気の高さの理由です。個人向けとビジネス(法人)向けがあり、いずれも無料の「基本」プランと、有料の「プロ」、「ビジネス」があり、法人向けにはさらに「ビジネスプラス」と「企業」が用意されています。
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タスク・プロジェクト管理
テレワークやハイブリッドワークでは従業員個人の管理能力が問われ、また全体でもチームが対面じゃなくオンラインでプロジェクト進行する必要があるなど、タスク管理が難しくなる一方で従来以上に重要となります。そこで活用すべきなのがタスク・プロジェクト管理ツールです。このシステムは個人・チームのタスクを整理し管理、進捗状況を把握するのに最適です。また、ガントチャート等を作成してプロジェクト全体の進捗状況の把握やタスクの管理を行うこともできます。多くのタスク・プロジェクト管理ツールはドラッグ&ドロップの簡単操作で扱えます。
6. Asana
プロジェクトを付箋のように移動させて、スケジュールの変更も簡単にできるワークマネージメントツールです。プロジェクトを遅延させるボトルネックを可視化して、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで確認できます。無料の「Basic」プランでも最大15人のチームメイトとコラボレーションができるので気軽に試せます。
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7. Backlog
国内では、さまざまな業種で使われているシェアも高いプロジェクト管理ツールです。わかりやすい操作性の高さや日本人受けするわかりやすさが大きな特徴です。トヨタ生産方式のジャストインタイム生産から名付けられたタスク管理機能「カンバンボード」も実装されています。無料プランはありませんが、「スタータープラン」、「スタンダードプラン」、「プレミアムプラン」、「プラチナプラン」という4種類の有料プランがあります。
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勤怠管理
テレワークでは、プロジェクトやタスク管理同様、労務管理も従来方式では難しくなります。労務DXとも言うべきデジタルシフトやクラウドシフトし、効率化。それにより業務生産性をあげるだけでなく、働く人の生活を豊かにしたり、新しいアイデアを生む時間を確保したりすることが必要です。クラウド型の勤怠管理サービスはシステム上で打刻作業をするだけなので、始業時や終業時の手間にはなりませんし、自宅、出先といった場所にかかわらずちょっとした作業でテレワーク時の労務管理を徹底できます。もちろん、管理する側もオフィスにいる必要はありません。
8. freee
本来はクラウド型の会計システムですが、「freee人事労務」というサービスで勤労管理機能を利用できます。さまざまなシステムと連携して使えることが大きな利点です。無料プランと有料プランがあり、有料プランの料金体系は、「ミニマム」、「ベーシック」、「プロフェッショナル」、「エンタープライズ」の4種類からなり、基本料金と従業員3名分の従業員料金が最低料金としてセットでかかる仕組みです。4名以上の従業員が利用する場合には、追加人数分の従業員追加料金がかかります(追加料金はプランによって異なります)。
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9. ジョブカン
LINEやSlackなどを通じて簡単に打刻でき、わざわざ勤怠管理システムにアクセスする必要のないシステムです。データ自動バックアップやスマホ承認といった機能も備えています。初期費用やサポート費用は無料で、無料プランと有料プランがあります。有料プランは出勤管理、シフト管理、休暇・申請管理、工数管理の4機能のうち、利用する機能の数とユーザー数に応じて、利用料金が計算される仕組みです。
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クラウドPBX
通常、電話応対はオフィスにいなければ行えない業務ですが、近年ではPCやスマートフォンを使って代表番号の受発信を可能にするクラウドPBXが広まっています。テレワークでも会社の電話番号を利用できるほか、社用か私用かを問わずスマートフォンを内線化できるので、通話料の削減にもつながります。個人の携帯やスマホによるBYODも浸透しましたが、仕事と個人の番号は分けたいという声も大きくなってきており、そういった声にも応えられます。また、テレワーク中心でオフィスの常駐社員が少ない場合には特に有効です。
10. Arcstar Smart PBX
クラウド上のIP電話サーバーでPBX機能と内線機能を提供します。NTT回線を使用しているので安定した使用感があります。無料プランはありませんが、申し込めば10営業日の無料トライアルが可能です。新設工事費としての初期費用や、そのほか利用するサービスによって追加費用がかかります。
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11. モバビジ
初期費用無料で利用できるクラウドPBXです。総務省判定基準クラスAで固定電話相当の音声品質を実現しています。電話に高額な投資ができない、ITやネットワークに詳しい人がほとんどいない小規模事業者でも使える使いやすさが特徴です。また、FAXの併用もできます。
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リモートアクセス
テレワークを安全に行うためにインターネットVPNといった仮想プライベートネットワークを使う方法もありますが、リモートアクセスという方法もあります。リモートアクセスとは、外出先や自宅などの離れた場所にある端末から、社内の端末や社内ネットワークなどに接続して遠隔操作することです。データやファイルのやりとりをサーバーとPC間でしない、またそれらをPCに保存しないため、セキュリティをあげることができます。ここではリモートアクセスシステムとして、仮想デスクトップ(VDI)方式とリモートデスクトップ(RDS)方式を採用したツールを紹介します。VPNとリモートアクセスの両方を使い、さらにセキュリティをあげることも可能です。
12. Azure Virtual Desktop
マイクロソフトが提供するDaaS(デスクトップ・アズ・ア・サービス)です。VDI方式のリモートアクセスツールで、ライセンスコストを削減できる利点があります。VDIとは、パソコン内部のデスクトップ環境をサーバー側で一括管理するシステムのことです。社内でVDIを構築するには、新しい技術の習得や継続的な運用、管理が必要ですが、VDIをクラウドで提供するDaaSを導入すれば、そうした問題を解消できます。月額費用はユーザーのアクセス権限とAzureインフラストラクチャのコストの2つの要素で決定されます。お客様によって導入に必要な費用が異なるので、詳細は下記のURLからお問い合わせください。
Microsoft 365 E3/E5など対象商品のライセンスを保有していれば、追加料金なしでデスクトップにアクセス可能なので、お得に利用できます。Virtual Machines、ストレージ、ネットワークの利用料は、従量課金制または予約インスタンスで使用した分の料金を支払います。無料プランはありませんが、$200分のクレジットを利用した無料でのお試しが可能です。
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13. シン・テレワークシステム
NTT東日本と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が提供している、RDS方式による無料のテレワークシステムです。インターネットに接続された特定のパソコンに対して、遠隔地にあるインターネット接続されたパソコンで接続することが可能です。すべての通信がSSLで暗号化されるためセキュリティが確保され、安全、安心に利用できます。2023年2月1日時点で約31万人のユーザーがいます。
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適切なシステムを導入しましょう
テレワークやハイブリッドワークを支えるクラウドサービスの代表的な製品やサービスをご紹介しました。テレワークを安全、安心に進めるためのツールは多数存在し、ジャンルもサービスも多岐にわたることがご理解いただけたと思います。テレワークを実践するためのシステム・ツール選びのポイントは、以下の3点です。
- 使い勝手の良さ
- セキュリティ
- 他ツールとの連携性
使い勝手の良さは非常に重要なポイントです、テレワークだと社内でちょっと聞くという今までのやり方ができないこともあり、また、現在の業務のほとんどは何かしらのITツールで行うため、業務の効率に直接関わってきます。
セキュリティはいつの時代も重要ですが、対策を考え直す必要があります。ランサムウェア全盛の昨今、狙われているものはシステムそのものというより、データやファイルstrong>です。また、テレワークというスタイルでは、境界型からゼロトラストへセキュリティ対策も変革させる必要があります。対策が旧態依然のままで、その隙をつかれて情報漏えいなどが起きると社会的な信用を失うばかりか、会社の財務面にも大きな影響を及ぼす場合があります。よって、現状の働き方にあったセキュリティ対策は欠かせません。最初からセキュリティの仕組みが整ったものや、導入することでセキュリティが強化されるものを選ぶ必要があります。
他システムやツールとの連携も見逃せないポイントです。例えばもっとも基礎的な部分として、クラウドであろうとも各種ツールが林立、サイロ化し、データやコンテンツがサイロ化するとセキュリティの管理ポイントが増え、情報ガバナンスを徹底できないといったことが起きてしまいます。もちろん、業務ごとにシステムを変え、データやファイルを探し...といったことも起きるため、効率もあがりません。こういったことを防ぐためにも、他ツールとの連携性が高いものを選び、どのツールを使おうともデータやコンテンツは一カ所に集約し管理していくといったデザインが重要なのです。つまり、セキュリティも業務効率も上げるためには、前述のテレワークを支える各システムとコンテンツを連携させる必要があるのです。
参考資料はこちらからダウンロードできます。
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まとめ
テレワークの実施には、クラウドストレージ、Web会議システム、タスク・プロジェクト管理ツール、勤怠管理システム、クラウドPBX、リモートアクセスシステムといったシステムやツールが欠かせません。なかでも、同僚や関係者と仕事をする上で欠かせないコミュニケーションやコラボレーションに関わるツールはより重要となります。
具体的には、どこにいてもコミュニケーションができるWeb会議システム。さらに、業務に必要なファイルやコンテンツを安全に共有でき、セキュリティも業務効率もあがるクラウドストレージ機能を持ったクラウド・コンテンツ管理は、他のシステムとの連携性も高くテレワークを支える環境を整えるうえで優先度の高いシステムではないでしょうか。
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