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デジタル化されたコラボレーティブワークスペースへのアプローチ

 公開日:2020.04.14  更新日:2023.04.18

  Box製品セミナー

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2019年4月に大企業に対して順次施行(中堅中小企業:2020年4月1日~)された働き方改革関連法は、残業時間の制限や年次有給休暇の取得などへの対応を求めているが、そもそも、すべての企業は従業員生産性を向上させるための具体的取り組みが必要な状況にある。企業が生産性向上を図るためには、業務を遂行する上で、時間と場所の制約を緩和し、業務に関わる複数の従業員がコラボレーションを行いながら、正しく最適な情報を共有し、スケジュール、コンテンツ制作や進捗状況の相互理解/協働を行う必要がある。このためには情報/コンテンツの共有、議論などのコミュニケーションの場所、進捗状況や問題点などを、セキュアかつリアルタイムに把握することが必要である。

上記の対応は、主に企業内部の生産性向上のための施策であるが、企業の外部に目を向けると、現在では顧客となる取引先企業やビジネスパートナーにおいてもデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進行している。これらのステークホルダーに対してデジタル技術を利用して「顧客エクスペリエンス」を提供することは、サプライチェーンをまたいだプロジェクトを効率化し、その結果として顧客ロイヤルティを維持し、さらに顧客基盤が拡大することで、企業競争力の強化につながる。企業は従業員/取引先企業/ビジネスパートナーなどのステークホルダーと向き合う際に、企業内部と社外の両プロセスを同時に変革する必要があり、コラボレーションの変革も、社内外を問わないすべてのステークホルダーに対して必要と考えられる。これを可能とするITによるデジタル上の作業空間が「コラボレーティブワークスペース」である。

デジタル技術を活用したステークホルダーとのコラボレーションは、近年のIT市場では電子メール、ソーシャルネットワークサービス、ファイル共有などの手段を用いて行われることが多いが、コラボレーション手段以上に重要なことは、いかに正しく最適なコンテンツをタイムリーに用意し管理するかということである。コンテンツとは、社内外を問わず交わされる情報の中身のことを指すが、一定のフォーマットに記載されている情報もあれば、ソーシャルネットワークサービスの書き込みなどのフォーマット化されていない情報もコンテンツである。このようなコンテンツの伝達/交換で重要なことは、従業員やビジネスパートナー、顧客に最適なタイミングで正しいコンテンツを自在に共有、交換することであり、コンテンツの社内外のサプライチェーンへの拡張が必要である。このように、デジタル化されたコラボレーティブワークスペースは、今や企業にとって必要不可欠な基盤となっている。

IDCでは、コラボレーティブワークスペースを「コラボレーティブアプリケーション」と「コンテンツワークフロー/管理アプリケーション」の一部を結合した市場として定義しており、主に従業員/ビジネスパートナー/顧客のコラボレーション手段の提供と、コラボレーションのためのコンテンツを管理、共有することを目的とするITシステムである。

コラボレーティブワークスペースを導入するメリットは、従業員間、従業員とビジネスパートナー、従業員と顧客などのすべてのサプライチェーンでのコラボレーションと、コラボレーションのためのコンテンツを管理、共有することであり、コンテンツサプライチェーンの拡張となる。

しかし、導入に当たっては留意点もある。一つは働き方改革に即したクラウド型統合デジタルワークスペースの導入である。この理由は、コンテンツ交換の場所や働く場所、デバイスへの依存性を低くできるからである。もう一つの留意点は、顧客とビジネスパートナーのエクスペリエンスおよび従業員生産性を導入のポイントにした、新たなデジタルワークスペースの整備を目標とすることが必要である点である。ワークスペースの改革はとかく会社内部のコミュニケーション方法に終始することが多い。コラボレーティブワークスペースの導入の効果は、社内ばかりでなく、社外にも波及する。

また、コンテンツに対するセキュリティの確保をコラボレーティブワークスペースの導入/構築と同時に実現することが重要である。したがって、コンテンツの漏洩やサイバー攻撃への耐性、コンテンツガバナンスを確保することが必要である。

IDCでは、国内コラボレーティブワークスペース関連IT市場は2018年~2023年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)4.5%で成長し、2023年には2,352億9,800万円になると予測している。さらに同市場をCloudとNon-Cloudに分けて予測した場合、Cloudでは8.0%の成長率を見込んでいる。今後のコラボレーティブワークスペースへのIT投資はクラウドベースに焦点が合わせられると考えられる。

企業内のコラボレーション変革や、取引先企業や消費者に対する新たな顧客とビジネスパートナーのエクスペリエンスを提供するためには、正しく最適な情報を社内外にセキュアかつ自在に流通させるコンテンツサプライチェーンの拡張が必要である。このため、デジタル化されたコラボレーティブワークスペースは、従業員コラボレーション、従業員と社外のコラボレーションを向上させる「デジタル空間上の働く場所/コンテンツ交換を行う場所」として、企業が従業員に提供すべき物理的なワークスペースへの依存から脱却するITシステムである。

FIGURE:国内コラボレーティブワークスペース関連IT市場予測、2017年~2023年

国内コラボレーティブワークスペース関連IT市場予測、2017年~2023年

•『国内コラボレーティブワークスペース市場予測、2019年~2023年(IDC #JPJ44582519、2019年7月発行)』を基に作成

Source: IDC Japan, March 2020

アナリストについて

眞鍋 敬(まなべ たかし) 氏

IDC Japan株式会社
ソフトウェア&セキュリティ/ITスペンディング
グループディレクター

グループディレクターとして、ソフトウェア/ITセキュリティ/OTセキュリティ市場とIT支出に関する調査を統括。また、専門分野としてコミュニケーションをベースとしたソーシャルビジネス市場やユニファイドコミュニケーション(UC)/コラボレーション市場などの通信とソフトウェアの融合分野、CRM/デジタルマーケティング/デジタルコンテンツ市場などのフロントエンドアプリケーション市場、およびビッグデータ、AIシステム/RPA/顧客エクスペリエンス市場などのデジタルトランスフォーメーションにも跨った調査を実施している。

眞鍋 敬

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