文書管理に正しく取り組めれば、文書を探す時間を大幅に短縮し、業務の生産性を向上できます。昨今では、働き方改革によって残業規制が設けられたり、有給休暇の取得義務があったりと、従来に比べて働く時間が少なくなったという方は多いでしょう。しかし、働く時間が変わっても業務量は減りません。そうであれば、以下に無駄な時間を排除して、少しでも効率化することがポイントとなるでしょう。最近では働き方改革が時短を目標としていて本来の効率化を目指すことと異なった解釈がされていると言う人も出てきています。
一説では、多くのビジネスパーソンが年間150時間も探し物に費やしているといいます。仕事の多くが文書を中心としたものであり、それらを探すこと(検索)に費やす時間も多いことでしょう。文書管理に成功すれば、検索に費やす時間を大幅に削減できるようになります。
本稿では、最適な文書管理を実現するための、文書の分類方法について紹介します。文書管理に取り組む必要性があると思っている経営者・担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
文書分類の基本
文書管理では組織内で管理している紙の書類や電子データファイルを総じて文書と呼び、それらを統合的に管理することが重要だとされています。実現に必要なステップや要素はたくさんありますが、その中でも特に重要なのが文書の分類です。分類方法は大きく分けて①ワリツケ方式、②ツミアゲ方式、③ハイブリッド方式があります。
ワリツケ方式
総務部など、文書の主管部門が全社統一的に作成した分類方法をワリツケ方式と呼びます。文書の主管部門が各部の業務分析を通じて得られた情報をもとに、トップダウン的に分類ルールを作成して運法します。
ワリツケ方式は文書の分類をスピーディに決定でき、普遍的な統制を可能にする理想的な方法だと言えます。しかしその一方、担当者が日々処理している細かい文書まではサポートできない可能性もあります。ワリツケ方式で設定された分類体系と、日常業務の中で担当者が望む分類体系にギャップが生じ、徐々に運用が複雑になっていくリスクがあるということです。
ツミアゲ方式
実務担当者自らが文書分類のルールを作っていくのをツミアゲ方式と呼びます。日常業務をよく理解している実務担当者が、現存する文書を観ながらグループ化を行い、配列していくことからルールと実態の間でギャップが生じにくくなります。
ただし、実務担当者が決めていくといっても同一部署内では一定の同意が必要であり、ルール策定までには時間がかかります。最初から完璧を求めるのではなく、ルールを運用しながら徐々に改善していくというやり方がフィットします。
ハイブリッド方式
ワリツケ方式とツミアゲ方式、両方のメリットを取り入れた文書分類をハイブリッド方式と呼びます。ワリツケ方式とツミアゲ方式とでは、業務実態により即したツミアゲ方式が選択されるケースが多いのですが、実務担当者ごとの感覚への依存度が高くなり、統制が取りにくくなるというデメリットがあります。分類体系が専門的になってしまうと、他のメンバーが目的の文書を探しにくくなってしまうのです。要するに、文書分類が属人化してしまいます。
そこである一定の階層(ディレクトリ)までは分類のルールを固定化するワリツケ方式を採用し、それ以降の階層についてはツミアゲ式を採用するという方法がハイブリッド方式です。業務分析を通じて一定の階層まではワリツケ方式で分類し、業務単位での細かい分類が必要な階層にはツミアゲ方式で分類します。
上位階層では統制が取れているため、下位階層で実務担当者が文書を思うままに分類しても、バラツキが生じにくくなり、他のメンバーが目的の文書を探しやすくなります。
3つのタイプの文書分類方法の中で最適なものを選ぶことで、文書管理を促進できます。まずは文書管理の目的の明確化から初めて、自社の組織体制と指揮系統を整理しつつ、どの分類方法が最適化を知ることが大切です。
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文書分類のポイント
文書分類では、いくつかのポイントを押さえて推進することがとても大切です。ここでは特に重要な3つのポイントについて紹介します。
Point1. 分類基準を明確にする
文書分類とは端的に言えば、まとめ方と並べ方の仕組みを可視化したものとなります。まとめ方とは文書の「グループ化」を指し、並べ方とは文書を配列する「順番」を指します。一番大切なのは、何を基準にグループ化・序列するかを明確にすることです。顧客情報なら案件別やエリア別など、明確な基準を持っていることが文書分類の基盤を作ります。
Point2. MECEを実施する
MECE(ミーシーまたはミッシー)はMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字を並べて言葉で、意味は「モレなく、ダブりなく」です。たとえば、社員の個人情報が記載された文書を管理する階層において、「10~20代」「30~40代」「40代以上」「若手社員」というファイルが並んでいると仮定すると、「10~20代」と「若手社員」がダブっていることになります。
文書分類においてはモレもダブりがあってはいけません。一方の条件が欠けていれば、文書検索の速度はたちまち落ちてしまい、効率化されず生産性は向上できないのです。
Point3. レベル感を統一する
同一階層内においては、文書のレベル感を統一する必要があります。たとえば「家電製品価格表」という階層内に、「テレビ」「冷蔵庫」「電子レンジ」と並んでいて、その中に「iPhone」というファイルがあると、レベル感が異なるため管理が複雑になります。「スマートフォン」というファイル/フォルダを作成し、さらにその階層内に「iPhone」というファイルを作成するのが正しい文書分類です。
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分類基準の種類
文書の分類基準について具体的な種類を紹介します。
手順別
業務プロセスごとに発生する文書においては、手順別にすると必要な文書を検索しやすくなります。営業プロセス、製造プロセス、品質管理プロセス、人事採用プロセスなど業務プロセスごとに固定化した階層を作り、下位階層をツミアゲ方式で管理します。分類の序列はプロセス順にするのがポイントです。
地域別
都道府県や市区町村別に分類し、序列を北から南に配置したり、五十音順で並べかえたりすることで文書を発見しやすくします。
発生日別
管理する文書が発生した年、月、日次ごとに分類することで、取引関係書類等が管理しやすくなります。序列は時系列に並べ、電子データファイルの場合は新しいものを上部に、紙のドキュメントの場合は新しいものを手前に置くと参照するまでの時間を短縮できます。
顧客別
案件の重要度別、五十音順、使用頻度順などの序列で顧客文書を管理することで、文書検索をスピーディに行えます。
書類別
契約書、見積書、領収書、稟議書など書類別という基本的な分類です。発生日順や五十音順にすることで序列を行いやすくします。
いかがでしたでしょうか?文書管理へ取り組むにあたり、文書分類について考えていなかったというケースは意外と多いものです。文書管理を確実に成功させるためにも、重要ポイントである文書分類についてしっかりと検討していきましょう。
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