建設業が抱える問題を解決する手段として国が主体的に取り組んでいることもあり、建設業でのDXを推進や検討している方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、建設業におけるDXの必要性やメリット、押さえておきたい技術、関連する国の取り組みをご紹介します。自社のDX推進を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
建設業におけるDXの必要性
建設業においては、深刻な人手不足や高齢化による技術継承の遅れ、後継者問題、また長時間労働が大きな問題となっており、これらを解決するにはDXの推進が不可欠です。DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」のことで、デジタル技術の活用により業務プロセスや業務のあり方を変革することを指します。
建設業におけるDXでは、AIや機械学習といったデジタル技術、またICTの活用により業務負担を軽減し、資料のデジタル化によって業務プロセスや働き方を効率化することが可能です。
建設業界でDXを推進するメリット
建設業でDXを推進するメリットとしては、主に以下の3つが挙げられます。
- 業務の効率化による人手不足や長時間労働の解消
- 安全性の向上
- 技術継承の促進
デジタル技術の活用により、情報共有や業務の自動化といった効率化が図れます。遠隔操作技術などを利用することで、安全性の向上につなげることも可能です。さらに電子マニュアルを作成すれば、技術継承もスムーズに行えるようになります。
業務の効率化
DXによってデジタル技術やICTの活用で、業務の効率化が期待できます。社内外にわたる建設シンジケーションや関係者との情報共有をスムーズに行ったり、業務プロセスの自動化や機械によるオペレーションなどを実現したりすることが可能です。
また、自動化や無駄な移動時間の削減、手戻り排除による業務効率が向上することで、労働時間の短縮や重労働の負担軽減、働き方の多様化などが見込めるため、労働環境が改善され、人材が定着しやすくなる点もメリットです。労働時間が短縮されれば、「建設業の2024年問題」への対策や人件費などのコスト削減効果も期待できるでしょう。
*「建設業の2024年問題」とは、2024年4月に猶予期限が来る「労働時間の上限規制」を指します。なかなか改善されない長時間労働の常態化解消を目指す働き方改革関連法のひとつです。2019年4月から全産業を対象に段階的に改正された「労働関係法令」中の労働基準法による「時間外労働の上限規制」が適用となるため、こう呼ばれます。
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安全性の向上
建設業の作業では危険がつきものであるため、事故や災害への対策が必須です。転落や感電、巻き込み、接触などによるトラブルが発生するおそれのある危険箇所での作業において、ドローンでの観察や遠隔操作を活用するなど、ITを活用した機器や機械の導入といったDX施策によって作業中に発生する災害リスクを低減させられます。
また、物理的な安全性だけでなく、昨今現場で活用の進むタブレットといったモバイルデバイスのセキュリティも強化できます。具体的には、モバイルデバイスは紛失や盗難のリスクをゼロにすることは難しいため、モバイルデバイスには写真やデータを保存せず、クラウドに保存することで、万が一の紛失や盗難の際にも情報漏えいといった事故につながらないようにできるのです。
技術継承の促進
昨今の建設業界は、就業者の高齢化による属人化が顕著であり、技術継承が進まないという問題を抱えています。DXではデジタルツールを活用したマニュアルの作成が可能で、体系的に技術をまとめられます。写真や動画を盛り込むことで、細かい技術の継承も可能です。
それらを従来の紙ではなく、デジタルファイルで保管、それもクラウドで管理をすればいつでも、どこでも閲覧でき、資料を見るためだけに現場とオフィス、本社と現場といった行き来をするような無駄もなくせ、働き方も変わり、後継者も採用しやすくなります。
またAI技術を用いれば、作業支援も行えます。技術継承がスムーズにいかないことも人手不足の一因であるため、マニュアルの整備を進めることで、技術継承と同時に人手不足の問題も解決できるでしょう。
建設業のDXで押さえたい技術
情報共有やコミュニケーションを円滑にするICTやクラウドといった技術は、DXの基礎となる技術です。IoTやAIの活用によって、遠隔操作や情報収集、自動化、診断など、あらゆる業務を効率化できます。
ICT
PCやタブレットなどの端末を用いてインターネットを活用するICTは、図面や仕様といった情報を共有する際に欠かせない技術です。ICTを利用すれば、業務文書も紙ではなく電子ファイルを共同で編集することができます。また、物理的なオフィスに加え、デジタル空間(クラウド)でのオフィス「デジタルワークプレイス」を整備すれば、誰がどこにいてもコミュニケーションやコラボレーションができ、現場も本社も業務が効率化します。機械と通信を行うことで遠隔操作したりできます。建設業のDX推進において、ICTは必須の技術です。
クラウド
インターネットによって、必要なときに必要なものを利用できる技術をクラウドと呼びます。クラウドにファイルを保存するコンテンツクラウドへファイルを保存しておくと、インターネットを通じてファイルへアクセスできるため、離れた場所にいる人も閲覧や編集を行うことが可能です。前述のモバイルデバイスのセキュリティ対策もこういった技術をあわせて使います。
コンテンツクラウドは従来のPCへの保存に代わり、クラウド上へ保存するだけです。使い方は非常に簡単で、ユーザーがクラウドを意識することはほとんどありません。ファイルに権限を設定しておけば、アクセスできる人を関係者に絞ることも可能です。また、クラウドにはMicrosoft TeamsやZoom、Slackといったお馴染みのコミュニケーションツールも多数あり、例えばコンテンツクラウドのBoxとあわせて利用することで、資料を映しながら現場同士または現場と事務所、本社などのコミュニケーションがリアルタイムかつ、効果的に行えます。
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IoT
IoTとはモノをインターネットへつなぐ技術のことで、あらゆるものを通信によって操作・管理できます。センサーをインターネットへつなぐことで、情報の収集や監視を行うことも可能です。モノ同士の通信による連携も行えるため、センサーで感知した情報を別の機械へ伝えて、対応する動作を行うようにできるなど、IoTは応用範囲の広い技術です。
AI
AIは人間の頭脳を人工的に再現したもので、人工知能とも呼ばれる技術です。AIは、あらかじめプログラムされた内容だけでなく、自ら得た情報から判断することが可能です。特に画像解析の技術は進んでおり、これまで人の目で行っていた診断業務を、高い精度で代替します。見落としやすい細かな欠陥を検出したり、建物や設備の劣化などを知らせたりと、予防保全にも活用できます。
また、職人の動作の解析もできるため、技術継承にも役立てることが可能です。AIを利用した無人施工を目指す動きもあり、今後も活用範囲が広がる見込みです。
建設業のDXに関連する国の取り組み
国土交通省は、建設業で用いられている平面図を3次元モデルに代替し関係者で共有する「BIM/CIM」の適用や、ICT活用の推進などを進める「i-Construction」に取り組んでいます。以下では、国が主体となって進めているこれらの取り組みについて解説します。
BIM / CIMの適用
BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling/Management)は、計画・調査および設計のプロセスにおいて、3次元モデルを適用するものであり、国土交通省が推進する技術です。平面図ではなく3次元モデルとすることで、関係者が実際の施工をイメージしながら計画を進められます。
必要な資材の自動算出も可能になるなど、業務の効率化やミスの低減にもつながります。3次元モデルはICT技術により関係者へ共有され、各自が情報を書き加えていくことで、情報伝達や意思決定を迅速に行えるようになり、業務効率化や工事の進捗状況の共有も可能です。
体制・施策の強化
国土交通省は建設業のDXへの取り組みとして、i-Constructionを進めています。i-Constructionとは、ICTの全面的な活用などの施策によって、建設生産システム全体の生産性向上を目指す取り組みです。
国土交通省は2021年4月にインフラDX 総合推進室を発足し、建設業のDX推進を加速させています。このように、建設業のDXはスピード感を持って進められており、労働状況の改善や生産性の向上が期待されます。
まとめ
建設DXによって、情報共有や業務プロセスの自動化、最適化が可能となり、生産性の向上や労働時間の適正化が期待できます。遠隔操作技術を利用すれば、転落や巻き込まれといった事故を防止することも可能です。
生産性および安全性の向上によって、労働時間の短縮や労働環境の改善が可能となり、人材が定着しやすくなることで、人手不足問題の解消につながります。さらに、動画や写真を盛り込んだ電子マニュアルの作成や、解析技術の利用などにより、技術継承も捗ります。
このように建設業のDXはメリットが大きく、国も積極的に推進していることから、今後も取り組む企業は増えていくことでしょう。しかしDXにおいてはインターネットを通じて文書など機密情報を保管する都合、セキュリティ対策がより重要となります。
コンテンツクラウドは、シンジケーションが社外に拡がる建設業において、日々のコラボレーションや業務効率の向上、セキュアな文書管理に有用であると定評があり、活用もデファクト化しています。もしまだ活用していない方がいれば、建設DXのはじめの一歩として、日々使っている業務コンテンツに注目したDX推進を検討してはいかがでしょうか。
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