DX推進にともない、企業が管理するデータファイルは以前よりも膨大になりました。オンプレミスでファイルサーバーを運営している企業の場合、複数のファイルサーバーを分散し、保有することが多く、管理や生産性、セキュリティの問題を抱えています。ここでは、分散するファイルサーバーの問題点に触れつつ、クラウドストレージ導入が各問題点を改善する理由について解説します。
オンプレ型ファイルサーバーの問題点
IT技術の進歩によって、多くの情報がデジタル化され、事業活動における生産性や業務効率が飛躍的に向上しました。そして多くの企業では、人事・会計・生産・物流・販売といった業務データはERPや会計ソフトなどの専用アプリケーションに保存し、事業戦略に活用しています。
その一方で、ファイルサーバーには業務ファイルが日々蓄積されていくため、情報量の増加とともに、より大きな容量が必要となります。動画や音声を利用したリッチコンテンツや、提案書や企画書、見積書や契約書といった非構造化データの増加も、サーバーの容量を圧迫する原因のひとつです。
ファイルサーバーが1台に保存できる容量には限界があります。サーバーを増設すればファイルの保存容量は増加しますが、それに比例してファイル管理が困難になります。例えば、サーバーの増設によって、各部署におけるファイルサーバーの点在を許してしまい、共有ドライブが分散される「ファイルサーバーのアイランド化」などの問題があげられます。また、サーバーの保守・管理業務の負担も増えます。さらには、分散されたファイルサーバーは情報システム部門のガバナンスが行き届かない場合が多くセキュリティ上の大きな問題にも発展しかねません。こうした問題を多くの企業が現実的に抱えているのです。
管理の複雑化
オンプレ型のファイルサーバーの場合、容量不足を補うにはディスクストレージやサーバー、ネットワーク機器の増設が一般的な方法です。このような機器の増設にはコストがかかるだけでなく、設置スペースの確保も必要です。
サーバー機器が増えるということは、保守・管理業務も増加するため、エンジニアの業務負担も大きくなります。そして、それに対応するため多くの人件費や光熱費といったリソースを必要とします。オンプレ型のファイルサーバーは事業規模が大きくなるほど、システムの保守・管理にかかるコストの増大と業務の複雑化を招きます。
さらに、ファイルサーバーのアイランド化によって共有ドライブが分散されると、ユーザーがドライブにアクセスしづらいなど、情報へのアクセスや検索性が低下します。また、特定のファイルサーバーへアクセスが集中することによるレスポンスの低下も招きます。結果として、システム管理者の工数が取られるだけでなく、ユーザビリティが下がり、生産性の低下にも繋がるでしょう。
余剰資源の発生
ファイルサーバーのアイランド化によってサーバー機器が各部署などに分散設置されると、前述とは逆に、使用頻度の低いファイルサーバーもできます。これは、企業の持つ限られたリソースの無駄使いとなります。各ファイルサーバーのファイルを一元管理できれば、こうした余剰資源の発生を抑えられます。また、保守・管理に必要な人的リソースの削減にも繋がるため、経費削減も期待できるでしょう。このような観点から、ファイルサーバー管理の最適化は、あらゆる企業において重要な課題といえます。
セキュリティ
分散されたファイルサーバーは、セキュリティ上の問題を抱える可能性があります。一般的に複数存在するファイルサーバーに対しても、企業が定めるセキュリティ基準を全てに適用させる必要があります。しかし、部門予算などで簡単に購入できてしまうファイルサーバーは情報システム部門のガバナンスが行き届かないことが多く、管理されていないシャドーIT化という問題が発生します。つまり、情報漏洩がいつ起きてもおかしくない状態なのです。
また、たとえ情報システム部門の統制下にあるとしても、複数のファイルサーバーを管理すること自体が情報システム部門にセキュリティ管理上でも大きな負担となることは明白です。
テレワークに向かない
一般的に社内に存在するファイルサーバーにアクセスするためには、安全な社内からのアクセスが基本です。この不便さを補うためにVPNアクセスを認める企業も以前は存在しましたが、コロナ渦においては、在宅勤務の社員からVPNへのアクセス集中によるパフォーマンス劣化のため、従業員の生産性を大きく損なう問題が多発しています。企業はこの問題を解決するために真のデジタルワークプレイスを構築する必要があり、そのためにはオンプレ型のファイルサーバーでは限界になってきています。
さらに、外部からのアクセスという点では、在宅勤務やテレワークだけではなく、外部の業務関係者との情報共有にも向きません。昨今、社内だけで閉じるプロジェクトは減ってきており、そういう点からもファイルサーバーの限界が見えてきています。
クラウドストレージでファイルサーバーの課題を解決
オンプレ型のファイルサーバーは、自社にサーバー機器やネットワーク機器を導入して自社でシステム管理をする手法です。従来は、こうした自社でのシステム管理が一般的でしたが、近年ではクラウド型のファイルサーバー(クラウドストレージ)を導入する企業が増えています。
クラウドストレージは、クラウドベンダーがインターネット上に構築したシステムを利用するSaaSモデルです。
ファイルサーバーを1つのクラウドストレージに統合して管理効率向上
クラウドストレージでは自社によるサーバー機器の設置が必要ないため、ファイルサーバーの管理という問題を根本から解決します。従来のオンプレ型のサーバー管理では、システム運用管理部門が、安定稼働のチェックやセキュリティ管理、データのバックアップといった保守・管理業務を行っていました。システム運用管理は、ITを利用する企業にとって生命線ともいえる業務であり、ITインフラを整備するために莫大なリソースを消費していたのです。
クラウドストレージであれば、ストレージやサーバー、ネットワーク機器の導入、それらの管理などはサービス事業者が全て行うため、管理業務が必要なくなります。このことから人的リソースを最適化するとともにシステムの運用管理コストを大幅に削減できます。
自社にあった最適なサイジングが可能になる
クラウドストレージの最大メリットは、システムの導入・保守・管理にかかる費用を安価に抑えられる点と言えます。オンプレ型の場合、容量を増加する度に新たなディスクストレージやサーバー機器を設置しなければならず、それに伴う時間と経費がかかります。しかしクラウドストレージなら、契約に応じて好きな分だけ利用可能となるため容量などを気にする必要はありません。例えばBoxの企業向けのプランを見ると、容量を無制限で利用可能なものがほとんどです。
コンテンツセキュリティの確保
Boxのような堅固なセキュリティを提供するクラウドストレージを活用すれば、セキュリティを高めることが可能になります。企業はBoxを活用することで、Boxが備える高度なセキュリティ機能やきめ細やかなアクセス権限や共有方法を活用したセキュアなファイル・コンテンツの共有スペースの準備が可能です。また、単なるファイル共有にとどまらず、テレワークに必須のコラボレーション面では、1,500以上の他社アプリケーションと連携し、あらゆるアプリケーションやデバイスを介し、必要な人とコミュニケーション・コラボレーションでき、使うほどに自然と業務がセキュアに効率化します。
デジタルワークプレイスの実践
企業は働き方改革やテレワークを実践するために、デジタルワークプレイスを構築する必要があります。デジタルワークプレイスとは、物理的な職場(ワークプレイス)だけに依存するのではなく、業務に必要なアプリやツールをデジタル空間上に集約し、いつでもどこでも働ける環境を作ることで、生産性や効率化を高める考えのことです。そのためVPNに依存しないファイルへのアクセスができるファイルサーバーの構築が必須であり、クラウドストレージがそれを担います。
関連記事:
デジタルワークプレイスとは?(前編)~変化した「働き方改革」への適応~
デジタルワークプレイスとは?(後編)~新しいセキュリティのポイント~
まとめ
オンプレ型のファイルサーバーはカスタマイズ性に優れ、自社の事業形態に合ったシステム環境を自由に構築できるのがメリットです。しかし、システムの導入や保守・管理業務に莫大なコストを必要とします。容量を増加するには、サーバー機器を増設するしかありませんし、分散されたファイルサーバーは業務効率の妨げとなるばかりでなく、セキュリティ上のリスクを伴うことも大きなデメリットです。
クラウドストレージなら自社サーバーを用意する必要がないため、ファイルサーバーと比較すると導入コストを安価に抑えられます。サーバーの保守・管理業務が不要になるため、運用管理部門の運用コストの削減にも繋がるでしょう。また、業務で使うファイルやコンテンツへのアクセス性があがるため、社内外の業務効率が上がり、DX推進の礎になります。
特にBoxは、企業向けにデザインされたセキュアなクラウドコンテンツ管理で、その単なるファイルサーバーをクラウド化しただけではないサービスが企業から高い支持を得ています。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひファイルサーバー統合の際にはクラウドストレージの導入を検討してみてください。
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