ハイブリッドワークやテレワークといった新しい働き方が定着しつつある昨今、DXを進めている企業とそうでない企業とでは、企業力、採用力、業績において差が開きつつあります。
本記事では、DXの取り組みにおいて有効なペーパーレス、またペーパーレス施策と同時に導入検討したいコンテンツ管理システムの選定方法などを解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
単にアナログ業務をデジタルツールに置き換え、業務を効率化すればDXできたというわけではありません。DXの推進により、企業とビジネスが発展すること、事業環境の変化に適応するために組織内外の変革を実行すること、デジタル技術で既存のやり方を刷新し、新しい価値を創出していくことが真のDXです。これらを実行するためには、レガシーシステムや従来のやり方から脱却するなど、さまざまな施策、取り組みが必要です。
DXの取り組みを細かく分解すると、「攻め」と「守り」の2種類があり、それぞれ取り組む順番とやるべきことが異なります。
攻めのDX: 顧客や市場など外部とのやり取りを変革
攻めのDXとは、顧客や市場、ステイクホルダーなど外部に向けたビジネスを変革する取り組みです。具体的には、紙や電話での対応をボット対応にするといったデジタル化をし、人的対応を含んだアナログ対応にしばられていた状態から脱し、新たに24x365体制でオンライン販売できるようにするといったことが攻めのDXです。
攻めのDX実現には、組織内でデジタルデータのやり取りができるようになっていることに加え、高度なデータ活用ができる基盤も整っていなければなりません。ITやデータ活用の基盤が整ってない場合は、守りのDXから始める必要があります。
守りのDX: 社内業務を効率化
一方、守りのDXとは、デジタル技術で業務の生産性を上げたり、コストを削減したりすることです。攻めのDXでは外部に提供するビジネスプロセスをどうするかが中心でした。守りのDXの場合は、組織内の業務プロセスをデジタル技術でどう最適化するのかを考えます。
真っ先に行う必要があるのはデジタイゼーション(デジタル化)です。紙などの物理媒体から脱して、情報をデジタル化することで、業務効率化や攻めのDXに向けての準備を整えていきます。ペーパーレス、業務効率化に繋がるITシステムの導入、データによる経営状況の可視化、書類のハンコ業務を電子サインに変更することなどはすべて組織内の変革であり、守りのDXの範囲です。
守りのDXはDXの第一歩! 早めの取り組みがおすすめ
「DX白書2023」のデータによると、大手企業(1,001人以上)でDXに取り組んでいる割合は94.8%と、米国の割合と比べても高く出ています。しかし、小規模企業になるほど取り組んでいる割合は低く、中小企業(100人以下)の割合を見ると約40%です。つまり6割の中小企業は手を付けていないことになり、かなり出遅れています。
早期のDXへの取り組みは、作業の迅速化、生産性向上といったデジタル化の価値を全社員が体感できるメリットがあります。
もしこれからDXを実践するなら、守りのDXから着手すべきです。その具体的な方法としては、コンテンツ管理システムやワークフローを導入して行うペーパーレスがおすすめです。
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ペーパーレスの効果
ペーパーレスの取り組みは、生産性の向上や人的ミスの防止、働き方の多様化などのメリットがあり、成果が目に見えてわかりやすい点もおすすめする理由です。以下に、ペーパーレスによって企業が得られるメリットを解説します。
感染症や自然災害といった非常時対策と事業を両立できる
コロナ禍時点でデジタル化が遅れていた企業に多く見られたのは、出社制限にともない紙を使った事務処理が原因で業務プロセスが滞る、またIT基盤が整っていないため取引先や同僚とのコミュニケーションにも支障が出るなどの課題が発生したケースです。ペーパーレスを推進すると、働く場所の制限を受けにくく、また紙文書管理の代わりに電子ファイルの管理基盤により、コロナ禍のような急な環境変化があっても、必要な業務ファイルにアクセスしやすく業務や事業の継続性を保ちやすいメリットがあります。
経済産業省も、企業は感染防止対策を行い社員や顧客の安全も守りつつ、事業継続も図る必要があるとしています。その対処策の一例として推奨されているのが、コンテンツクラウドを利用したペーパーレスの推進です。
コロナ禍でも業績が伸びた企業というのは、これまでの習慣ややり方を乗り越えて、柔軟にデジタル技術を活用する道を選んだ企業です。コロナ禍以前よりBoxを採用していた企業は出社制限下でも、業務遂行に大きな影響なく業務を継続できたと言います。
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つまり、単なる一時的な対処ではなく、いつ起きてもおかしくない地震や台風といった自然災害、今後の環境変化に適応するためにも、これまでのやり方に固執しない企業が競争の優位性を確立している現状は知っておきましょう。
国内におけるDXの現在地点やコロナ禍で見えた課題などについては、経済産業省の「DXレポート2」が参考になります。
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BCP対策になる
BCP対策(事業継続計画)とは、地震やパンデミックなど、何らかの災害が発生したとき、事業に及ぶ被害を最小限に抑えるために計画を立てることです。
BCP対策により、競合他社への取引流出、市場におけるシェアの低下、企業評価の低下などを防止できます。社員の安否確認やバックアップオフィス、代替設備の準備もBCP対策の一環です。
ペーパーレスがBCP対策になる理由は、事業の早期復旧と継続に役立つからです。ペーパーレス環境下では業務文書はデジタルデータで保存するため、書類の紛失・破損の防止になります。電子ファイルの管理基盤となるコンテンツクラウドを活用すれば、紙が手元にある必要がないため、どこにいても業務を継続できます。
「2025年の崖」克服の一歩となる
2025年の崖とは、長年使い続けた既存のシステムが老朽化し、継続利用するのが困難になる、レガシーシステムが業務変革の足かせになるという問題です。解決には、ブラックボックス化している既存システムの見直しが必要です。
紙に出力することを前提としているような時代に合わず老朽化しているシステムを刷新し、デジタル時代に合う効率的な形にするには、ペーパーレスの考えが重要なのです。
働き方改革を実現できる
ペーパーレスの推進は働き方改革の実現にも有効です。紙書類は物理的に人をオフィスに縛ります。ペーパーレス化で働く場所や時間の自由度が高まります。
書類がデジタル化されるとテレワークがしやすくなるため、オフィスに縛られて仕事をする理由もなくなり、社員が求めるさまざまな働き方のニーズを満たすことが可能です。企業にとっても、従業員満足度の向上や人材を集めやすくなるなどのメリットがあります。
業務コストを削減できる
高い効果があるのは紙代の削減です。加えて、ホチキス代やインク代、コピー機の買い替えなどが不要になります。郵送代や廃棄代、印紙代もかかりません。
紙書類の配布や保管に必要だったコストの削減もできます。例えば、資料をデジタル化すれば、一瞬で共有できるため、配布の手間が一切かかりません。会議資料を用意して印刷して参加者に配布、間違いやアップデート情報があり、修正して再印刷して配布...とバタバタした記憶のある方も多いのではないでしょうか。紙ではなく電子ファイルで行えば、用意も管理も楽で、資料整理などに人手や時間といったコストが割かれることも削減できます。
紙を保管するスペース、倉庫のコスト削減は大きなインパクトがあります。
DXとペーパーレス推進の注意点
社内でDXを上手に進めるには、社員の理解を得ることが重要です。
なぜDXを進める必要があるのか、初期の取り組みとしてペーパーレスで得られるメリットは何かを社内に周知してからDXやペーパーレスを推進したほうが、スムーズに進みます。上層部がDX、ペーパーレスの必要性を理解していない場合は、データや成功事例などを用いて説得してみましょう。
コスト面の注意点としては、ペーパーレスが進んで電子ファイルの管理や共有、さらに新しい働き方に必要な設備やシステムを導入するには、まとまった投資資金が必要となることです。よく導入されるものとして、業務用のモバイル端末、ネットワーク環境の構築、各種クラウドサービスなどがあります。何が必要になるか、費用はいくらになるかは企業ごと、目指す姿ごとに異なります。
なお、DXの推進が決まったあとは、社内制度をペーパーレスに合わせて見直したり、新しいツールの使い方の周知が必要になったりするため、普段よりも業務負担が重くなる可能性も考えておきましょう。
ペーパーレス実現! コンテンツ管理システムの選定ポイント
DXの一環としてペーパーレスを推進する際におすすめなのが、コンテンツ管理システムの導入検討です。数ある製品の中から、自社に適したものを選ぶためのポイントを紹介します。
外部との連携がしやすいか
バックオフィス系のソフトウェアを使っている場合は、コンテンツ管理システムと連携可能かを確認しておきましょう。例えば、電子サインを含む契約管理、人事管理、会計システム、ワークフロー、生産性向上ツールやコミュニケーションツールなどは、連携したほうがファイルの閲覧や共有、管理が容易になるうえ、セキュリティも向上するメリットがあります。
コンテンツ管理システムの対応デバイスも確認しましょう。PCのみだと、社外からの業務ファイルへのアクセスが困難です。モバイル端末にも対応していれば、社外から資料を閲覧したり、出先から社内に資料を共有したり、ワークフローの承認をしたりなど、仕事が効率化します。
ワークフロー機能があるか
コンテンツ管理システムの導入によって、組織全体のペーパーレスとデジタル化ができるほか、内部統制の強化にも役立ちます。内部統制とは、企業活動において経営者・従業員が守るべき社内ルールであり、また違法行為・情報漏えいなどを防ぐための体制です。
内部統制に関わるコンテンツ管理システムの機能として、ワークフロー機能があると便利です。業務プロセスを自動化するプログラムを構築でき、上長の確認が必要な文書フローを迅速化しその他文書処理の効率化が可能です。もちろん、内部統制上必要な、誰が何を承認したのかといった証跡も残ります。
検索性能が高いか
コンテンツ管理システムの検索機能は高機能なものを選ぶようにしましょう。検索機能の種類として、見出し検索、文書内まで検索できる全文検索、完全一致検索、スペルミスや短縮表現までカバーできるあいまい検索などがあります。
タグやカテゴリ分けなど、文書を分類する機能もあると整理整頓に便利です。自社で管理したい文書を見て、どの機能があれば効率的に検索できるか考えてシステムを選ぶようにしましょう。
容量制限はあるのか
自社のコンテンツ管理に必要な容量とかかるコスト、データ転送時の回線速度を確認しておきましょう。文書データを保存する場合、サーバーやHDDなどの物理保存装置とオンラインストレージのどちらかを選ぶ必要があります。オンラインストレージにすると、HDDなどを買う必要はありません。契約後、すぐにサービスのプランに応じた容量を利用できて便利です。
ただ、容量制限があるプランを利用する場合は、上限に達したときに上位のプランに変更する必要があります。プラン替えの手間を避けたいのであれば、初めから容量無制限で利用できるプランを利用するのがおすすめです。
ペーパーレスの成功事例
「味の素株式会社」では、Boxを活用してペーパーレスや働き方改革を成功させています。同時に行われた取り組みは、労働時間短縮と社員の意識改革、働く場所の制限をなくす「どこでもオフィス」の展開、IT基盤の整備などです。各取り組みはペーパーレスの推進とも連動しており、デジタル技術を利用した新しい業務環境を作り出すために実施されました。
このペーパーレスの結果として、同社では紙書類の9割削減に成功しています。書類削減のほかには、1フロアに設置されていた書類整理用のキャビネットの段数を4分の1近くまで削減しました。紙やキャビネットの縛りがなくなったことで、働く場所を選ばないフリーアドレスや「どこでもオフィス」の効果も上がっています。
紙で保存しなくなった業務データは、PC内にも保存するのを禁止し、Boxに保存して管理するなどのルールも同社では定められました。
「味の素グループ」のペーパーレス成功事例の全文は、リンク先でもご覧いただけます。
まとめ
DXには攻めと守りの2種類があります。これからDXに着手する企業は、順序として「守りのDX」から取り組むことが一案です。
守りのDXですることは、デジタル技術を活用した組織内の業務効率化です。そのはじめの取り組みにおすすめなのがペーパーレスであり、書類のデジタル化やITによる管理を進めることで、そのほかのDX活動にも勢いをつけられます。
ペーパーレスで働く環境を整えるときは、コンテンツ管理システムも導入するとコンテンツ管理が楽になり、仕事の効率もあがります。例えば、クラウドベースのコンテンツ管理「コンテンツクラウド」を活用すれば、セキュアな環境で業務用の文書やコンテンツの集約と管理が可能です。そのほかにも多数の便利機能を利用できますので、ぜひお試しください。
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