新型コロナウイルスに係る緊急事態宣言が解除されたことで、徐々に日常に戻っていくのだと安堵した方も多いのではないでしょうか。特に経営者の場合、半ば強制的にテレワークを実施し、従来通りに仕事をこなせないことにもどかしさを感じた一方で、テレワークの有効性を肌で感じた方も多いと聞いています。
政府はかねてより働き方改革を推進しており、ワークスタイルにおいて多様な選択肢を用意することで、老若男女誰もが活躍できる社会を目指しています。そして、企業は社員の生活を守り、仕事に対するさらなるモチベーション向上のために働き方改革に取り組む必要があります。
そこで今回は、テレワークの中でも在宅勤務に焦点を当てて、そのメリットとデメリットを解説します。これまで取り組んだ在宅勤務の有効性を改めて整理するためにも、ぜひ参考にしてください。
在宅勤務のメリット
まず在宅勤務のメリットをご紹介します。
メリット1. 社員の精神的健康を保つ
米国の理論生物学者であるロバート・ローゼン氏は、1980年に「健康経営」という思想を提唱しました。これは、「健康な従業員こそが収益の高い会社を創る」ということを唱えています。つまり、企業の収益性と社員の健康は相関関係にあることを表現しているわけです。
これは科学的にも証明されていて、2013年に健康日本21推進フォーラムが実施した調査によると、健康時の業務遂行能力を100点とした場合、「メンタル面の不調」を抱えている人は56.5点に減少し、「心臓などの不調」を抱える人は63.0点、「偏頭痛・慢性頭痛」を抱える人は67.9点に低下するとレポートしています。
出典:TEN 「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査」
仕事の生産性を下げる最も大きな原因は「メンタル面の不調」です。精神的健康を保てない社員の多くは、仕事が多忙なためにプライベートに十分な時間を費やせなかったり、育児や介護が心配で仕事が手につかないなどの理由が挙げられます。精神的健康を損なうと身体的にも症状が現れることから、精神的健康が社員の健康につながると言っても過言ではありません。
社員の健康を健全に保つことは企業の義務です。在宅勤務を実施してプライベートな時間を増加させ、ワークライフバランスを保つことで、社員の精神的健康を保ち、常にフレッシュな状態で仕事へ取り組める環境を整えられます。そして、それが企業の収益性を高める大きな決め手の1つになるでしょう。
メリット2.離職を防ぐ
次に、在宅勤務は即戦力として働いている社員の離職を防ぐことが可能になります。社員は、それぞれの人生があるため、生きていく中で様々なライフイベントが発生します。子供が生まれた、病気にかかった、事故に遭った、親の介護が必要、子供の学校行事など、従業員はそれらのライフイベントをこなすことが人生において第一優先ですから、ワークライフバランスを整えてあげることが重要と言えるでしょう。
特に注意が必要なのが育児休暇でしょう。最近では男性の育児休暇取得率も増えており、企業としても社員のプライベートを応援する意味で制度を拡充している傾向にあります。しかし極端なことを言ってしまうと、社員の半数が育児休暇を取得してしまったらビジネスは成り立ちませんし、そのしわ寄せは他の社員に重くのしかかります。そして次第に、オフィスで働く社員から不満が出始め、離職率の増加にもつながってしまうでしょう。また育児休暇を取得していた社員が、復帰後に周囲との関係性から働きづらさを感じて離職するケースも少なくありません。こうした事態を回避するためにも、在宅勤務を推奨して「育児や介護をしながら働ける環境」「病気や怪我でも自宅から仕事ができる環境」を整えることが重要になります。
メリット3.人材戦略として組み込む
労働人口の減少が課題となっている日本経済全体において、優秀な人材を確保しやすい環境を整えることが企業の競争力強化に直結します。人材不足問題を解消するにはいくつかの方法があります。より多くのコストをかけて人材を確保することも一つの方法かもしれません。中には残業時間を増やして対処する企業もあるかもしれません。
そのような中で企業が優先的に取り組みたいのは「在宅勤務を取り入れた魅力的な職場づくり」です。目先の対策ではなく、中長期的な取り組みになりますが、在宅勤務を中長期的な人材戦略として組み込むことで、優秀な人材が集まりやすい働き方を用意ことが可能になります。場所にとらわれない人材採用を実践できるため世界中から優秀な人材を採用できる可能性も秘めています。今ではITの発展により、リモートでも十分なコミュニケーションを取りつつ仕事を進めることができます。
メリット4. オフィスコストや交通費を削減する
リモートワークサポートの総合事業を手がける株式会社キャスターは、自身がリモートワーク推進企業として数多くのノウハウを積み上げています。同社は業務委託も含めて700名以上の人が常に在宅勤務を実施しており、世界的に見ても大規模なリモートワーク環境を構築しています。一方で、それほどの規模で事業展開しているにもかかわらず、同社オフィスはわずか15名程度しか入室できない広さだと言います。在宅勤務ならびにリモートワークを極めると、大規模なビジネスを展開しながらもオフィスコストや交通費を大幅に削減し、収益率の高い企業体質を作りあげることができる例です。もちろん、それと引き換えに在宅勤務手当なども考慮する必要があることを忘れてはいけません。
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在宅勤務のデメリット
非常に魅力的なメリットが多数ある在宅勤務ですが、デメリットとなるのがやはり「コミュニケーションやコラボレーションの問題」です。オフィスで仕事をしていると対面でのコミュニケーションで自然と情報交換が活発になりますが、在宅勤務ではツールを通じてのコミュニケーションになることから、その文化に慣れていない社員にとってはコミュニケーション不足を感じることになるでしょう。それが効率低下にならないようにしなくてはなりません。
ただし、このデメリットは在宅勤務を支えるITと、新しい企業文化および制度を生み出すことで軽減させることができるでしょう。このため在宅勤務へ取り組む際は、今まで通り・今まで以上のコミュニケーションを促進し、コラボレーションできるようにするためには何が必要か?を常に考えながら施策を展開していく必要があります。
すでに在宅勤務へ取り組んでいる方も、これから取り組む方も、この機会に在宅勤務のメリットとデメリットをあらためて整理し、より良い職場環境づくりに努めていただければと思います。
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