「VDI」とは、デスクトップ環境をサーバー上に集約し、サーバー上で稼働させる仕組みです。VDIを活用することで、多くの企業がテレワークを積極的に推進できるといわれています。しかし、どのような仕組みなのか、メリットなどを知らない方も多いことでしょう。そのような方々に向けて、VDIの概要や種類、導入メリットなどについて解説します。
VDI(仮想デスクトップ)とは
「VDI」とは「Virtual Desktop Infrastructure」を略したもので、日本語で「仮想デスクトップ」と呼ばれます。OSやアプリケーションを手元の物理パソコン内ではなく、これらをサーバー上で全てのユーザー分一元的にホストし、ネットワークを通して仮想的なデスクトップ環境を提供するシステムです。
リモート操作となる点や、セキュリティ向上が期待できる点、管理コストの削減や利用する場所・端末を選ばないなどの特徴があるため、テレワークを行ううえで有効なソリューションとしても注目を集めています。
なお、VDIは仮想化の方式や構成の違いから、いくつかの種類に分けられます。それぞれの種類とその特徴については後述します。
シンクライアントとの違い
シンクライアントは、「薄い」「少ない」などの意味を持つ「Thin」と、「クライアント端末」の「Client」を掛け合わせて作られた用語です。反対語は「ファットクライアント」です。SSDやHDD など記憶媒体を省き最小限の機能を持つ端末を用いて、ネットワークを介してサーバー側にある端末環境をリモート操作して利用するシステム構成を指します。古くは大型汎用機と接続するダム端末などもこれにあたります。また、最小構成のクライアント端末自体をそのように呼ぶこともあります。
シンクライアントが使用され始めた1990年代は、パソコンが現代に比べて大型かつ高価なものであったため、できるだけコストを下げるためにも機能の少ないシンプルな端末を利用する発想が注目されました。そうした背景により、このような形態が普及した歴史もあります。
現代では、セキュリティ対策のためにシンクライアントが再び注目を集めていますが、その種類は大きく分けると「ネットワークブート型」と「画面転送型」の2つになります。後者はさらに3つの型に分けられ、その中の1つが今回ご紹介するVDIに当たります。
VDI(仮想デスクトップ)の種類
VDIは方式の違いによって、いくつかの種類に分けられます。ここからは、VDIの4つの種類について、それぞれの特徴をご紹介します。
VDI方式
「仮想PC方式」とも呼ばれ、サーバー上に複数の仮想デスクトップを作成し、ユーザーはOSとアプリケーションを占有してネットワーク経由で利用します。サーバー上にあっても、物理パソコンと同じ環境を使うので自由度の高い実行環境になる点が特徴です。また、接続するローカル端末ごとにVDAライセンスの契約が必要になりますが、Windows OSの利用も可能です。
SBC方式
「サーバー共有方式」とも呼ばれ、端末側で動作するアプリケーションをサーバー上に集めて、画面のみユーザーに転送する方式です。複数の利用者で共有するため、サーバーOSやマルチユーザーアクセス下で動作するアプリケーションを使用しなくてはいけません。そのため、VDI型よりも使用可能なソフトウェアが少なく、自由度も低くなります。
一方で、ユーザー端末のOSバージョンとアプリケーションの互換性を気にする必要がない点や、サーバーのCPUやメモリなどの利用効率が高い点、Windowsも安価なRDSライセンスが利用可能なため、コスト削減が期待できるなどのメリットが挙げられます。
HDI方式
「ホスト型デスクトップインフラ方式」とも呼ばれ、サーバー上に展開される独立したハードウェア環境を、ユーザごとに占有してネットワーク経由で利用する方式です。物理サーバー上に複数の仮想マシンを作成したり、複数人でOSやアプリケーションを共有したりすることはありません。そのため、ネットワーク経由であっても高性能のデスクトップ環境を利用可能です。
DaaS方式
「DaaS」とは「Desktop as a Service」を略したもので、「パブリッククラウド方式」とも呼ばれます。クラウド上にあるデスクトップを、インターネットを介したパブリッククラウドに置き、クライアント端末から利用できます。
VDI方式では物理サーバーを自社で所有するのに対し、こちらの方式ではクラウドサービスを利用するため、VDI方式のクラウド版サービスともいわれています。OSやデータはクラウド上にあり、利用者はクライアント端末を使ってクラウド上にある画面を見たり、入力操作を行います。最近ではマイクロソフト社が提供する「Windows Virtual Desktop(WVD)」の影響もありDaaS方式が注目を集めています。
なお、この方式は配置されるクラウド環境によって、以下の3つの形態に分けることが可能です。
・特定企業専用のクラウド上に配置する「プライベートクラウドDaaS」
・サービス提供者の仮想環境上に配置する「バーチャルプライベートクラウドDaaS」
・共有環境のクラウド上に配置する「パブリッククラウドDaaS」
VDI(仮想デスクトップ)導入のメリット
ここからは、VDIを導入する導入メリットについて解説します。
クライアント端末にデータを残さない
クライアント端末には記憶装置を搭載しなくてよいため、作業データや機密データなど、あらゆるデータが端末に残る心配がありません。顧客情報や企業の重要なデータなどが端末に保存されている場合、紛失や盗難の被害に遭った際に、外部に情報が流出してしまう恐れがあります。
VDIの場合、そのような重要な情報をデータセンターで管理できるため、紛失や盗難など情報流出の危険が迫ったときも、セキュリティ事故に発展する心配がありません。VDIでは、画面情報やマウス、キーボードの情報のみがネットワーク経由でやりとりされ、実態はサーバー上で動作するため、クラウイアント端末には一切データが残さない運用が可能です。情報漏洩リスクを少なくできるため、セキュリティ対策としても期待できるのです。
デスクトップOSやアプリケーションを一元管理できる
クライアント環境を一元管理できるため、OSやアプリケーションのアップデートなどを一括して行えます。不正アクセスの監視など、セキュリティ強化にも効果が見込めるでしょう。
このような管理が行えることで、メンテナンスに要する人員を削減でき、結果それに伴う人件費を抑えられます。またコスト面だけでなく、一元管理をすることで外部からの不正侵入や情報漏洩などのリスクを減らし、セキュリティ向上も期待できます。
テレワークにも有効
VDI環境にアクセスすれば、自宅のパソコンを使って作業しても、データ自体のやり取りがないため、自宅の端末にはデータが残りません。また、前述のような物理的なデータのやり取りだけでなく、仮想デスクトップと共有した画面の情報やマウスなどの動作情報も暗号化されるため、使用していたデータや操作内容などが外部に漏れる心配もなく、高いセキュリティ性を保てるのです。
セキュリティ対策が不安になりやすいテレワーク業務においても、情報漏洩の心配がないため、社員は安心して業務に臨めます。もちろん企業としても、情報流出や情報漏えいのリスクを減らせるでしょう。
VDI(仮想デスクトップ)の注意点
このようにVDIには様々な利点がある一方で、いくつか注意点もあります。導入前に以下の注意点を確認しておくことが大切です。
サーバー側に多くのリソースが必要となる
VDI方式はその性質上、導入後にスケールアップやダウンなどの柔軟な変更が難しいケースがあります。サーバー側に多くのリソースが必要となる場合があるため、導入する際は最適なコンピューティングリソースのサイジングを行いましょう。一方、WVDなどのDaaS方式を採用した場合には容易にスケールさせることが可能になります。
ネットワーク品質がネック
仮想デスクトップは、画像をユーザーが使用しているパソコンやタブレット端末などに転送する仕組みであるため、画面遷移が多ければ通信量が多くなります。ネットワーク帯域や品質の良し悪しに左右される可能性や、適切な環境構築ができていない場合、スムーズなやり取りや操作ができなくなる恐れもあります。
また、ネットワーク環境に依存する性質上、万が一ネットワークトラブルが起きると接続不良になり、作業ができず業務停止にもなりかねません。何も問題が起きなければストレスなく使用できますが、このようなトラブルが起こると復旧するまで作業が滞ってしまい、全体の効率ダウンにつながる恐れもあります。
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まとめ
VDIを導入すれば、手元のクライアント端末にデータが残る心配がなく、OSやアプリケーションの更新も一括で行え、常に最新状態を保つこともできるでしょう。このように、各自の作業環境のセキュリティ課題を解決した、効果的な作業環境を構築できる仕組みであるVDIを取り入れることで、情報漏洩などを恐れることなく、テレワークを積極的に進める一手ともなります。
なお、テレワークをする際は、ファイル共有などに便利な「Box」の導入も併せて検討してみてはいかがでしょうか。残業時間の削減や在宅勤務を可能にするなど、働き方改革を推進する中で、業務遂行には欠かせない、コンテンツ・情報を軸としたコミュニケーション&コラボレーション促進を最大化する機能が含まれています。また、資料管理や機密情報の紛失・盗難のリスクを減らす効果も期待できます。リモートワークを実施したり、作業効率化を目指したりしたい企業は、ぜひこれらのサービスを活用してみるとよいでしょう。
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