生産性向上などのために、既存の業務プロセスを見直す活動はとても大切です。しかし、業務プロセスの最適化をどのように進めるべきなのか、効果を最大化するためにはどうしたらよいのかと頭を悩ませている方は少なくないでしょう。
ここでは業務プロセス最適化の概要と、その実践方法、成功させるためのポイントと考えた方、メリットなどをご説明します。
業務プロセス最適化とは?
業務はほぼ全てプロセスになっています。また、そのプロセスは時代や働き方によって変革が必要となります。企業が業務を改善する際に実施される「業務プロセス最適化」は、重要な経営プロセスの1つです。ここでは業務プロセス最適化が具体的に意味するところを丁寧に見ていきます。
そもそも業務プロセスとは?
「業務プロセス」とは、業務を進める際の各ステップ、もしくは業務のステップをまとめた「業務プロセス図」を指します。それぞれの業務をフローチャートなどで可視化した「業務プロセス図」を指す場合は、各業務の内容はもちろん、各業務がどのように別の業務に関連しているのかも一目でわかります。
業務プロセスと似ている言葉として「業務フロー」が挙げられますが、業務プロセスとは少し意味合いが異なります。業務フローの「フロー」は英語の「flow(流れ)」で、業務に関する一連の流れを指します。それに対して、業務プロセスの「プロセス」は、英語の「process(手順、過程)」ですから、業務フローよりも各業務の内容を分割することに重点が置かれているため、若干のニュアンスの違いがある言葉だと言えるでしょう。
業務プロセス最適化の目的
業務プロセス最適化の目的は、既存の業務プロセスを見直して、生産性の向上などにつなげる取り組みです。一連の業務を完遂させるために各プロセスを見直すので、プロセスを追加したり、削除したり、入れ替えたりします。
例えば、業務上で「過去のデータが整理されておらず、探すのに時間がかかる」「申請書の『ハンコ待ち』の時間が発生している」「〇〇さんにしか詳細がわからない顧客がいる」「Excelの書式が統一されていない」など、何らかの「ムリ・ムダ・ムラ」が常態化しているケースは少なくありません。そこで、業務プロセス最適化では、これらの非効率な作業を取り除いて効率的な作業や作業順に置き換えていきます。
最適化できれば、コスト削減や生産性の向上、この頃だとワークライフバランス最適化にもつながるため、採算性の改善や社員満足度向上も期待できます。ほかにも、業務完遂までのプロセスがシンプルになることで、意思決定や業務の遂行がスピーディになり、長時間労働も改善していきます。
また、業務の標準化を図るのも業務プロセス最適化の目的の1つです。対応する社員によって業務の質が違うと製品やサービスの質が下がる可能性があります。例えば、社員によって各作業の所要時間が異なると特定の人に負担がかかってしまったり、適切な経営判断の妨げになってしまったりするケースが考えられます。こうした問題を抱えているのであれば、顧客満足度の低下を避けるためにも、マニュアルを整備するなど業務の標準化を目指しましょう。
特定の社員に属人化している作業も、異動・離職などの際にトラブルに発展する可能性があります。「〇〇さんは休めているのに、自分は定時退社もできない」など、社員同士の分断にもつながる恐れもありますし、長期労働の是正が必要となっている昨今の社会背景を鑑みても好ましくありません。業務プロセスの最適化は、企業戦略としても有効であると言えます。
業務改善と業務プロセス最適化の違い
ここまでご覧になって、「業務プロセス最適化は業務改善と何が違うの?」と疑問に感じた方もいらっしゃるでしょう。「業務改善」と「業務プロセス最適化」に明確な違いがあるわけではありません。
しかし、一般的な認識として、業務改善は「業務のある課題をターゲットとして解決していく取り組み」という部分的な最適化であるのに対して、業務プロセス最適化は「業務全体をターゲットとして、ムリ・ムダ・ムラのない最適なプロセスを設計し直す取り組み」とする全体の最適化を指します。より広い視野でプロセスの見直しによって抜本的な改善につなげる取り組みが、業務プロセス最適化だと言えるでしょう。
業務プロセス最適化の進め方
続いて、業務プロセス最適化の進め方についてご説明します。
課題の洗い出し
業務プロセスの最適化では、はじめに業務の各プロセスを可視化します。既存の業務プロセス全体を客観的に把握できるようにしましょう。誰が見てもわかるレベルで可視化できれば完璧です。それが終わったら、各プロセスを分析して最適化すべきポイントを洗い出します。
目標の設定
最適化においては「誰(何)にとって最適にするのか?」という意識を念頭に置かなければなりません。そこで、各プロセスにおける課題と優先順位が明確になったら、業務プロセス最適化をやり遂げるための目標「KGI(Key Goal Indicator)」を設定します。このとき同時に「KPI(Key Performance Indicator)」、つまりKGIを達成するための具体的な行動目標も定めましょう。
例えば、「業務プロセス最適化を通して、営業の資料作成を担当するバックオフィスの生産性を現状から20%向上させる」というKGIを設定したら、それを達成するために、KPIとして「1件あたりの作業時間を平均120分から平均100分に短縮させる」「現状2名しか対応できない〇〇のプロセスを、研修を通して対応可能人数を5名まで増やす」などの行動目標を設定して、最終的なゴールまでの具体的な道筋をつくります。課題が多く、全てを解決できないようであれば、優先度と改善効果が高い課題に絞るのもよいでしょう。
手段の策定と実施
KGI、KPIが定まったら、それらを達成するための具体的な手法を決めていきます。
その際は、ECRSというフレームワークを用いると効率的です。ECRSは、Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入れ替えと代替)、Simplify(簡素化)の頭文字を取ったもので、簡単に言うと「ムダな作業を省く」「似たような作業は統合する」「作業の順番や担当者の変更などを行う」「作業をシンプルにする」という順番で業務改善を進めることの重要性を表しています。業務の簡素化などを行う場合、ITツール・システムなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションを用いて、全体の最適化も検討してみてください。
結果の検証
業務プロセス最適化は、実行に移して終わりではありません。設定したKPI・KGIの達成度合いをデータで検証し、必要であれば導入したプロセスの再見直し、必要に応じてさらなる施策を打ち出しましょう。一度最適化を実施したからといって、完璧な業務プロセスが手に入るわけではありません。要件は変化し続けるため、PDCAサイクルを回していくことで、常に最適なプロセスにしていく取り組みが大切です。
業務プロセス最適化を成功させるポイント
ここでは業務プロセス最適化を成功させるポイントについて解説していきます。
業務プロセスを可視化する
小規模な業務改善にとどまらないためには、プロセスの全体像が見えていなければなりません。そのため、業務の一連の流れと各プロセスについて、しっかりと把握しておくことが大切です。オーソドックスな方法ではありますが、フローチャートで業務の全貌を可視化しておきましょう。継続的なプロセス改善をサポートするITツールを用いることも有効です。
最適化のコストも考慮する
既存の業務プロセスやフローを変更するためには、ITツールの導入費用などコストも伴います。業務プロセスを刷新すると、社員が新しいプロセスに慣れるまで、一時的に作業効率が低下する可能性があることも見えないコストとしてあらかじめ考慮しておいてください。
また、業務プロセスの最適化を推進する際には、経営陣だけではなく、現場リーダーや現場担当者からの意見もしっかりと取り入れるようにしましょう。いくら目標や手段が画期的であっても、現場の実態からかけ離れた取り組みは最適化とは言えません。全体の生産効率を落とさないように注意しながら慎重かつ強力に進めていきましょう。
データドリブンによる意思決定にもつなげる
業務プロセス最適化は、課題の洗い出しから検証まで具体的かつ客観的な数値・データに基づいて実施すべきです。直感や経験に基づく判断も大切ですが、データを分析した結果によって意思決定・行動する「データドリブン」が、今後の情報化社会では大切になってきます。
従来はプロセスやフローごとに保持していたデータやコンテンツを一元的な基盤で管理することで、各業務プロセスやフローが参照できるようにする「データハブ」や「コンテンツハブ」の構築は効率面でもセキュリティ面でも効果を発揮し、コスト面では不要なストレージコストも削減でき、様々な点で最適化が進みます。また、プロセスが回った後にもデータやコンテンツは意思決定に役立てられるため、集積・管理・活用したことが、データドリブン経営や意思決定にも活かせるのです。
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まとめ
範囲が限定的である業務改善よりも、さらに広い視野を持って業務全体のプロセスを見直す取り組みが業務プロセス最適化です。業務プロセス最適化を成功させるには、各業務プロセスの可視化とデータ、コンテンツの効率良い管理が望まれます。しかし、データやコンテンツ管理に人的コストをかけてしまう状況は、多くの業務プロセス最適化において好ましくありません。
そこで、膨大でさまざまなコンテンツを一元管理できるプラットフォームの活用が必要となります。プロセスから見れば「コンテンツハブ」と呼ばれます。また、データドリブン経営に特化させれば「コンテンツレイク」と呼ばれます。DX時代の新しい統合情報基盤として活用し、業務プロセス最適化を成功させましょう。
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