近年、働き方の多様化や情報ガバナンスや情報セキュリティ強化が必要になったこともあり、文書管理をよりしっかり行い、業務効率化を図る企業が増えています。文書管理を進める上で文書管理システム(コンテンツ管理システム)は欠かせませんが、さまざまなタイプがあり、管理したい文書の種類や目的によって最適のものは異なります。そこで本記事では、文書管理システムの概要と代表的な5つのタイプ、メリットについて説明し、システムの選び方を解説します。
文書管理システムとは?
文書管理システムとは、電子化した文書を登録して保管する機能を持ち、リアルタイムな検索、最新の状態への更新、保管期間が過ぎた文書の破棄までを一元管理するシステムです。システムによっては契約書作成やマニュアル作成をシステム内に包括し、作成から管理まで一貫して行えるものもあります。また、文書管理に伴う機能として同時閲覧や共有、メッセージングなどのコラボレーション機能や、更新通知機能、申請から承認までを行えるワークフローシステムを搭載しているものや電子サイン機能を持つものもあります。契約書や社内規約、稟議書など機密性の高い文書を扱うため、閲覧権限や編集権限、操作ログ取得といったセキュリティやガバナンスを高められることも特徴の1つです。
さらに、「Microsoft 365」や「Microsoft Teams」「Salesforce」のような業務で良く使うクラウドサービスと連携可能なものなら、それらのアプリと連携しそのまま使用できます。
文書管理の重要性とは?
文書管理には、企業が法令順守や社会的な責任を果たすために適切に文書を保管する目的と、業務の質向上につながる情報やナレッジやコンテンツを有効活用する目的があります。これらを達成できるシステムは、企業経営を強力にサポートしてくれるでしょう。
まず、文書管理システムを導入すると、効率的な文書作成や社内外で文書共有ができるので、企業全体で業務の改善が進みます。特定の資料を探す時間や、いつも一から資料を作成している、最新バージョンが分からない、責任者の帰社を待たなければならないといった良くある状況と比較すると、いかに重要なポイントであるかがわかるでしょう。
また、文書管理システムを用いない従来の情報漏えい対策には限界がありました。例えば、「紙文書はコピーされて持ち出されても分からない」「内部不正対策が取れない」「アクセスログがないため不正操作ができてしまう」「部門管理のファイルサーバーにはセキュリティ対策ができない」といった問題です。文書管理システムのセキュリティレベルは高く、多くの製品やサービスでこれらの問題に対応しています。
さらに、セキュリティにかける費用を削減できるだけではなく、ペーパーレスによるコスト削減も重要なポイントです。紙媒体で文書を管理するとキャビネットなどのスペースに対するコストに加え、書面を探す時間的コストなどもかかっていました。電子ファイルで管理することにより、こうした点で大幅なコスト削減が達成されます。今年改正された電子帳簿保存法も電子ファイルでの管理が求められますが、必要なことの基本は文書管理です。
また、文書管理システムによっては、社外と取引履歴やデータなどを安全にかつシームレスにやり取りできるため、コラボレーションの質向上も望めます。結果的に顧客満足度につながるでしょう。このように現代社会の要請に応えられ、かつSDGsや働き方改革にも関連する文書管理システムの重要性は高まっています。
文書管理システム導入のメリットとは
次に文書管理システムの具体的な5つのメリットについて紹介します。「検索の容易化・コスト削減・セキュリティ向上」など、現在自社で散見する課題を照らし合わせながら参考にしてみてください。
検索機能によって文書を探す手間を省ける
紙媒体での文書管理では、「文書がどこにあるのかわからない」「複数人が同時に参照できない」「保管期限が切れていても気づかない」「社外から参照できない」といったデメリットがありました。一方、文書管理システムでは「全文検索・あいまい検索・メタデータ検索」などによる検索で、求めている文書に容易にたどり着けます。また、契約書や請求書といった取引証憑書類は7年間の保存が法人税法によって義務付けられていますが、保管期限の設定(リテンション管理)や、「更新が必要な文書の通知機能」によって適切に管理可能です。
ペーパーレス化が進み、コストを削減できる
紙で保管するには多くのコストがかかります。具体的には用紙代はもちろんのこと、「印刷するためのインク・複合機の電気代・文書を置くスペース・シュレッダーやその廃棄の手間・機密文書処理費」などが挙げられます。しかし、文書管理システムならシステムの運用費だけで済むので、これらのコストを削減可能です。もちろん、紙が従業員を物理的なオフィスに縛るため、紙文書のために何があってもオフィスに行くという必要はなくなり、このコスト削減もニューノーマルでは非常に大きい削減と言われています。
文書の共有や承認がしやすくなる
紙媒体で社内に保管された文書はテレワーク中に参照できませんでしたが、クラウド型の文書管理システムを利用すれば、どこにいても文書の共有が容易になります。
また、製品によってはワークフロー機能が搭載されているので、システム上で上長の電子決裁が得られるため、承認までの業務負担は大幅に軽減されます。これは総務省も推進しており、承認忘れや停滞、承認のための出社など非効率だった働き方を改善できます。
旧版を参照してしまうなどのミスが減る
従来の管理手法では、多くの場合で版管理がされていません。そのため、最新版の文書や最終更新日・更新した人・保管期限など各種情報を確認するのに手間がかかりました。文書管理システムのバージョン管理機能によって、「新旧版を混同してしまう」という問題も解決可能です。版管理はこうやって紹介する以上に便利で、このためだけに導入する企業があるほどです。
セキュリティが強化され、内部統制にも効果がある
文書管理システムでは、閲覧権限や編集権限をユーザーごとに設定できます。また、アクセスログや更新ログが残るため、誰がどのような操作を行ったのかもトレース可能です。人や部署によってダウンロードや印刷の可否も柔軟に設定できるため、不正な持ち出しも防げます。結果として、文書管理システムはセキュリティレベルの向上と内部統制(ガバナンス)に貢献します。
文書管理システムにおける5つのタイプと選び方
次に文書管理システムの5つのタイプについて紹介します。それぞれが何に特化しているのかを把握し、自社に適した文書管理システムを選ぶ際の参考にしてみてください。
(1)社内文書全般×保管型
業務マニュアルや社内規定、契約書、報告書、稟議書、ISO関連文書などの文書全般を厳重に保管し、適宜閲覧したいといった場合に適したタイプです。フォルダやメタデータ(タグ)で文書のタイプごとに分類し、全文検索や属性検索などの高い検索性能によって瞬時に必要な文書を閲覧可能です。出張先やテレワークなどにも対応し、PCだけではなくスマートフォンやタブレット端末でも閲覧できるシステム環境は柔軟な働き方をサポートしてくれます。
(2)社内文書全般×作成・共有型
社内文書全般を保管し、かつ「業務マニュアル作成や社内ナレッジといった特定の文書に関する共有を、効率的に行いたい」という目的のある企業に有用なタイプです。このタイプの文書管理システムには「ナレッジ共有ツール」や「マニュアル作成ツール」などが搭載されています。
ナレッジ共有ツールでは、ドキュメント単位でのリアルタイムチャットが可能なので、特定の文書に対して従業員間で理解を深めながらコミュニケーションの最適化を図れます。マニュアル作成ツールは、テンプレートに沿って入力するだけで「誰でも」「わかりやすい」マニュアルを作成できる機能です。アクセスログや単語検索率によって作成したマニュアルの効果性を検証可能な製品もあります。
(3)契約書×保管型
文書管理システムの中でも契約書の管理に特化したタイプです。契約書は取引に関する取り決めを記しているだけではなく、企業が社会的な責任や信用を担保する役割もあります。
このタイプに搭載されているシステム具体例を挙げると、AI契約審査プラットフォームが代表的です。PDFの契約書を取り込む際に文章をテキスト化し、全文検索を可能にしてくれます。さらに契約書の作成や承認プロセスも効率化してくれるといったメリットもあります。
(4)契約書×作成・共有型
このタイプはシステムの中で作成から管理まで一貫して行うため、契約書作成を効率化します。Word・PDF・HTMLの形式でテンプレート化できたり、すでに社内で使用しているWordのテンプレートを流用できたりします。
また、企業や部署などを指定して承認フローを設定可能なため、必要な承認なく締結されるリスクもありません。メールやURLリンクなどの通知等、取引先の要望に合わせて締結できます。
(5)社内外保管型(クラウドタイプ)
社内外のメンバー、取引先との共有が多い場合におすすめするタイプがクラウド型の文書管理システムです。クラウド型は用途が広く、クラウドストレージを機能として持つこともあり、画像・動画だけでなくあらゆる電子文書が共有可能です。また、様々な業務に応じ、多種多様なクラウドサービスと連携させ、社内の各種業務を効率化することができます。オンプレ型や専門の文書管理システムと違い、応用が広い割に導入コストも低く抑えられるという大きなメリットも持っています。
文書管理システムの比較のポイント
先述した5つのタイプを考慮し、文書管理システムの選び方について解説していきましょう。
まず、文書管理システムで管理する対象は「社内文書全般」なのか「契約書のみ」なのかを明確にします。次に目的が「保管」に加えて、「検索・共有」や「作成・編集」などを含め、どんなタスクに重きを置いたものなのかも考えます。
その上で「検索のしやすさ」「法令や各種制度への対応」「セキュリティ権限・アクセス管理」「ワークフロー管理」を指標にします。全文検索・メタデータ検索といった機能がどの程度そろっているのかという点は、管理した文書を参照する頻度が高い企業ほど重視する指標です。
一方、電子文書には法的効果を付与するにはタイムスタンプや、国税関係書類であれば「電子帳簿保存法」の要件を満たしている必要があります。また、閲覧制御や編集制御はもちろん、セキュリティ権限やアクセス管理は必須です。契約書、稟議書に必須の承認プロセスは他の文書でも使えるとメールでの回覧より効率が上がります。ワークフローに限らず、文書管理システムは、管理者とユーザー双方の業務負荷や効率を考えると、どこまでを管理者が行い、どこまではユーザーがセルフサービスで行えるのかも確認が必要です。
まとめ
文書管理システムは、文書の作成・保管・閲覧・更新、保存、破棄を一元管理する有用なツールです。業務効率化、コスト削減、セキュリティ向上などのメリットに加え、企業が法令順守して社会的責任を果たすことにもつながる、ガバナンス上重要な役割もあります。
まずは管理する文書の対象に加えて、文書管理システムを「文書の保管に使用するのか」「作業も視野に入れるのか」「コラボレーションや共有もするのか」検討してみてください。そして、目的や必要な機能を洗い出すなどして、自社に合うシステムを選びましょう。
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