2019年4月より働き方改革関連法案を施行されたのをきっかけに、そして、昨今の新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあり、従来や通常とは異なる働き方に対する注目が一層高まっています。その中心とされているのがテレワークです。ICT(情報通信技術)を使い、在宅勤務含め時間や場所にとらわれないワークスタイルを提供するテレワーク、その導入率は年々拡大しているものの、実際に導入している企業は全体の19.2%と実は2割に達していません。
出典:東京都産業労働局『多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)』
現在はコロナ禍により多くの企業で在宅勤務への対応が必要な状況になったことから、その認知度は上がったものの、この調査でテレワークというワークスタイルへの認知度について尋ねたところ、「知らなかった」「聞いたことはあったが、内容はよく知らない」と回答した企業が合計で31.6%おり、全体の約3割がまだテレワークについて理解していないという結果になっています。そこで、今あらためてテレワークの具体的な内容を知っていただくため、導入目的やその方法などについて分かりやすく解説していきます。
テレワークの種類
テレワークとはICTを使い、場所や時間にとらわれないワークスタイルのことであり、いくつかの種類に分けられます。
在宅勤務
従業員の自宅で勤務するテレワークです。通勤が不要になり人との接触も最低限にできるためパンデミックや自然災害の際にも有効な手段となります。また、時間にゆとりや個人の状況を反映できるため、余裕を持って仕事に取り組むことができ、育児・介護に忙しい従業員の助けにもなります。企業によってはカフェ等での勤務を認める場合もあります。
モバイルワーク
顧客先、訪問先、外回り先、移動中においてモバイル端末(ノートパソコン、スマートフォン、タブレット)を用いて業務を行うスタイルのテレワークです。基本的にはオフィスで勤務し、必要に応じてテレワークに切り替えます。
サテライトオフィス(専用型)
本社勤務とは別に近郊地域や地方にサテライトオフィス(衛星オフィス)を用意するテレワークです。通勤時間を削減したり、自然豊かな地での勤務を実現したり、さまざまな理由で取り組まれています。地方創生の一環でサテライトオフィスを利用するケースも増えています。
サテライトオフィス(共有型)
レンタルオフィスやコワーキングスペースを契約し、そこをサテライトオフィスとするテレワークです。他の企業の従業員やフリーランス等が共有環境の中で仕事をするため、新しいイノベーションを生み出す場としても注目されています。
テレワークの導入目的
既にテレワークを導入している企業はどのような目的を持っているのか?そこには、単に多様なワークスタイルを提案するのではなく、メリットを考慮した目的を持っている企業が多く存在します。そのメリットを東京都産業労働局の資料からご紹介します。
1. 定型的業務の生産性向上
従業員、中でもオフィスワーカーが日々遂行する業務の中には、定期的に発生し効率化の余地が大きい業務があります。定型的業務をこなすために、わざわざオフィスに出社する必要はありません。ICTを通じて自宅でもできる業務が多いため、テレワークを導入して生産性向上を狙うケースが多いでしょう。
2. 従業員の通勤時間、通勤中の移動時間の削減
在宅勤務なら従業員の通勤時間はゼロになりますし、通勤中の移動時間もありません。それにかかわるコストを削減したり、従業員のワークライフバランスやストレスレベルを整えることにもつながります。
3. 育児中の従業員への対応
育児や仕事を両立したくても、オフィスへの通勤が必要な場合はそれが難しくなります。しかしテレワークを導入している環境ならば、育児中だからといって離職する必要はなく、従業員の精神的不安を取り除くことにもなります。企業側からは有能な社員を失うことを防止することにもつながります。
4. 介護中の従業員への対応
育児同様に介護も仕事と両立が難しいと言われることです。ここにテレワークを導入していれば、介護中だからといって離職する必要はなく、こちらも従業員の精神的、経済的安定につながり、かつ企業は戦力ダウンを防止できます。
5. その他通勤に支障がある従業員への対応
障がい者雇用制度を設けている企業では、通勤に支障がある場合のテレワークを認めているところも多いでしょう。また、ケガや持病によって電車や自動車での通勤が難しいという場合も例外的にテレワークを認めるケースがあります。働けるのに疾病休暇を取得する必要がなく、その期間の業務への支障は社員、企業共に防止でき、メリットがあります。
6. 感性業務の生産性の向上
感性が求められるクリエイティブな仕事には、従業員が自由に過ごせる時間や環境を確保することが大切です。テレワークを導入して多様なワークススタイルを実現し、自由な時間や環境を与えることで創造性の高い仕事ができます。
7. 非常時の事業継続に備えて
日本は災害大国であり、なおかつ現在ではサイバー攻撃などの脅威で溢れています。万が一オフィスが被災したり、攻撃を受けたりした場合は素早く事業復旧するためのBCP(事業継続計画)が欠かせません。テレワークを実施することで、物理的なオフィスへの依存度が減り、BCPの一環として有事に備えることができます。
8. 優秀な人材の雇用確保
人材難と言われている現代において、テレワークは魅力的な職場環境を作る必須要素と考えられています。多くの優秀な人材は柔軟な働き方を望み、テレワークを適宜採り入れたいと考えています。また、若年層には当たり前な働き方でもあり、テレワーク制度を導入している企業を選びやすい傾向にあります。企業としても地理的な制約に依存する採用がなくなるため優秀な人材を集めやすくなるでしょう。
9. オフィスコストの削減
オフィスで働く人が少なくなることで、オフィス賃貸費用や光熱費等の削減につながる可能性があります。
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テレワークを導入する方法
では、テレワークを実際に導入するとなるとどのような方法を取るのが最適なのでしょうか?ここでは一般的な導入方法をご紹介します。
1. テレワーク導入の目的を明確にする
テレワーク導入で一定の効果を得ている企業は、必ず導入目的を明確にしています。手当たり次第にテレワークを導入しても、業務課題との実態と乖離してしまい、効果的な取り組みができません。
2. 活用すべきICTを決める
クラウドサービスを中心にテレワーク実現のために提供されているICTは多いものの、そのすべてを導入する必要はありません。どういったテレワークを導入するかにより、活用すべきICTが異なります。明確にした目的を基準に適切なICTを選びましょう。
3. 具体的なテレワーク制度を考える
テレワークを行うためにクラウドといったICT環境が揃ったとしても制度がオフィス勤務以外認めていなかったら、従業員はテレワークに踏み切れません。一口にテレワークといってもその種類はいくつかありますし、具体的な制度も企業ごとに違います。全営業日を通じて完全在宅勤務としている企業もあれば、月数日程度を上限に申告制にしている企業もあります。自社にとってテレワークを推進でき、かつ適切なテレワーク制度は何か?を具体的に考えましょう。
4. 小規模なトライアル(試験的導入)を何度か行う
具体的なテレワーク制度が決まったら、小規模なトライアル(試験的導入)を何度か行います。管理職・一般職と分けてもよいですし、オフィスワーク中心の部署や職種ごとに実施してもよいでしょう。大切なのはテレワーク実施の評価を集めることであり、少しずつノウハウを積み上げて改善していきます。
5. 徐々にテレワーク対象を拡大する
トライアルを繰り返したら、本格的にテレワークを導入するために徐々に拡大していきます。また、その際にはICT環境を見直すなど、継続的な改善を考慮しながら取り組んでいきましょう。
まだテレワークに取り組んでいない、どう進めれば良いか分からないという場合は、上記を参考にぜひ具体的に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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