社員主導のDX活動!
Boxを活用した業務アプリケーションの開発
- 業種:製造
- 企業規模:2,001名〜5,000名
- 課題:業務システムの連携、効率化
- 課題:DX、働き方改革を推進したい
- 製品名:Box Platform (API)
- 製品名:Box AI
Box Japanの中部・関西エリアでSE(ソリューションエンジニア)を担当している辰己です。
今回はSEとしてプロジェクトに携わらせていただいた、ヤンマーパワーテクノロジー株式会社様のBoxを活用した業務アプリケーションの開発事例をご紹介します。
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「市民開発」とは?
昨今注目を集めているIT潮流のひとつに「市民開発」があります。「市民開発」は、非IT人材の業務部門の社員や職員が、業務やビジネスのニーズ、個人のニーズを満たすシステム開発やアプリケーション開発を行うことを指しています。これはシステムの内製化とともに日本のデジタル競争力を上げる方策として、NHKの「時論公論」でも取り上げられるなどますます浸透を見せています。
ヤンマーグループ様の「市民開発」の取り組み
発動機ならびに農機、建機、小型船舶製造販売の大手企業ヤンマーグループ様は、草の根DX活動で市民開発を推進されている企業の一社です。
2022年に策定されたデジタル中期計画(2022年〜2025年)において、4つの重点取り組みの1つとして「草の根DX施策組織化・グループ展開」を策定されました。その中でビジネス側のニーズとデータサイエンス技術の両方を理解し橋渡し出来る人材を「トランスレーター人材」と定義して育成を図り、着実に草の根DXを推進されています。
ヤンマーグループ様の1社、クリーンディーゼルエンジン製造販売を手掛けるヤンマーパワーテクノロジー株式会社様は、小形事業部において社内ドキュメントの不正アクセス・改竄防止を始めとする全社統合コンテンツ基盤の実現にBoxを導入いただきました。
Box導入するにあたり、着目されたポイントは3点です。
- 既存のオンプレミスファイルサーバーを移行するBoxの検討過程において、アプリケーションやシステムからBox内のコンテンツにアクセスするためのRESTful APIや各種SDKが充実していること
- BoxのブラウザUIを自社開発Webアプリケーションに組み込むことのできるUI Elementsがあること
- Box AIにもRESTful APIでのアクセスが用意されていること
PoC段階(概念実証)からBox内のコンテンツを活用する業務アプリケーション開発の検討を進められました。これは先に触れましたヤンマー様のデジタル中期計画の草の根DX活動施策の波及と、それ以上に小形事業部様は従前から部門内でビジネスニーズに応じたIT環境を検討、導入される組織文化であったところが大きいのではないかと思います。
開発アプリケーション:汎用BoxアクセスWebアプリケーション
ヤンマーパワーテクノロジー様が開発されたアプリケーションをご紹介しましょう。
1つはUI Elementsを活用した汎用BoxアクセスWebアプリケーション。共有端末や利用頻度の低い社員用に、Boxのアプリケーションユーザーというユーザー体系を利用して、低コストでBoxにアクセスするためのPythonベースのWebアプリケーションです。複数社員で共有できるアプリケーションユーザーを用いつつ、Flask-Adminを活用してアプリケーション側でのユーザー認証を実装しています。
開発アプリケーション:改正電帳法対応アプリケーション
もう1つはBox AI APIを活用した、改正電帳法対応アプリケーションです。指定フォルダに保存された証憑類をスキャンして、改正電帳法の検索3要件である「取引年月日」「取引先」「取引金額」を取得し、Boxのメタデータに格納します。Box AI APIを用いることで、証憑類のフォーマットを問わず、プロンプトを渡す要領で3要件を抽出することができ、経理担当者の業務負荷を大きく軽減することができます。
会計システムとの連動などの要件にも依存しますが、証憑類の電帳法の検索要件対応は、Box Enterprise Plusプランなら月2,000通まで追加コストなく対応することができます。これにより専用ソリューション導入と比較しても低コストで実現できます。
特筆すべきはこれらの取組が事業部門内の社員主導で行われているということです。まさに冒頭に述べました「市民開発」を実践されている先進事例ということができるのではないでしょうか。
ヤンマーパワーテクノロジー様担当者の声
(左から上里様、田中様、杉本様)
小形事業部 開発部 開発マネジメント部 技術管理グループ 杉本 由美子様:
電子帳簿保存法に対応するため、社内で決められた所定のサイトにデータ保存していましたが、毎回、「取引年月日」「取引先」「取引金額」等を手入力しており、多大な工数がかかっておりました。今回のアプリケーションはこれから本格運用開始するところですが、指定のフォルダに格納するだけで自動的にBox AIが読み込んで、メタデータに格納してくれるため、大変助かり、担当メンバーも喜んでおります。Boxでは他にも様々なユースケースに対応できそうですので、さらに活用していきたいと思います。
小形事業部 開発部 開発マネジメント部 技術管理グループ 田中 真紀様:
Box AI APIを使ったアプリケーション開発は、とても革新的で効率的でした。特に、改正電帳法対応アプリでは、証憑類のスキャンとメタデータへの格納がスムーズにでき、業務負担が大幅に軽減されました。また、Box AI APIを使うことで、さまざまなフォーマットから必要な情報を簡単に抽出できるのも魅力です。これからもこのツールを活用して、さらに効率的に業務を進めていきたいです。
小形事業部 開発部 開発マネジメント部 技術管理グループ 主幹 上里 晃一様:
UI Elementsの利用検討を開始した際、開発/運用環境がなかったため、既存VDIの一部リソースを流用しLinuxサーバをたてミドルウェアの準備から始めなければなりませんでした。この段階から辰己様からアドバイスをいただきOSSでの環境を構築することができました。実際のアプリ開発時もサンプルソースの提供、手厚いサポートをいただいたおかげで、短期間でリリース可能となりました。
また、電子帳簿保存法対応については、Box AI APIの正式リリースの案内と同時にメタデータとの連携サンプルを提示いただき、このサンプルをもとに改修しアプリを完成することができました。しかし様々な様式の書類に対応するにはまだAIの正解率が100%とは言えないため、Box Relayを活用し担当者が介在しチェック/修正/保管するフローとしました。
辰己様のサポート、他のメンバーの活躍により短期間で有用な環境/アプリを構築できたことに感謝いたします。
さいごに
Boxはこれからも、Box AI APIで使用できる大規模言語モデル(LLM)の拡充を筆頭に、文書自動生成機能やノーコード開発ツールを提供し、「市民開発」を更に容易にする環境を推進していきます。組織内のあらゆる情報・コンテンツが集められたコンテンツ基盤を自在に業務部門が活用できることで、事業環境や市場の変化にいち早く追随する情報活用が実現でき、顧客満足度向上やビジネス拡大に繋がります。
これらBoxの新しい機能群は近日リリースされる予定です。ぜひご期待ください。