「男女共同参画社会」。1999年(平成11年)に男女共同参画社会基本法が施行され、話題になったこの制度は「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」を実現するためのものです。
施行から20年が経過した今、男女共同参画社会への関心が再び高まっています。日本では海外諸国に比べて女性管理職が少ないことが社会問題として指摘されており、かつ「働き方改革」の推進により、老若男女誰もが活躍できる社会に向けた取り組みも進んでいます。2019年4月より施行された働き方改革関連法案も、その流れの1つです。
ここでは、なぜ今、あらためて男女共同参画社会が注目されているのか?男女共同参画社会の基本から紹介します。ダイバーシティへの理解を深めていただくことにも役立つはずです。
男女共同参画社会とは?
1999年に施行され、今年で22年目を迎える男女共同参画社会は、基本法に沿って「男女共同参画社会基本計画」がいくつか決定されてきました。まずは第2次から第4次までの基本計画を確認し、男女共同参画社会がどのような流れで取り組まれてきたかを整理します。
第2次男女共同参画社会
- 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
- 女性のチャレンジ支援
- 男女雇用機会均等の推進
- 仕事の過程・地域生活の両立支援と働き方の見直し
- 新たな分野への取り組み
- 男女の性差に応じた的確な医療の推進
- 男性にとっての男女共同参画社会
- 男女平等を推進する教育・学習の充実
- 助成に対するあらゆる暴力の根絶
あらゆる分野において男女共同参画社会の視点に立って関連施策を立案・実施し、男女共同参画社会の実現を目指す
第3次男女共同参画社会
- 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
- 男女共同参画社会の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革
- 男性、子供にとっての男女共同参画社会
- 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保
- 男女の仕事と生活の調和
- 活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画社会の推進
- 貧困など生活上の困難に直面する男女への支援
- 高齢者、障がい者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備
- 女性に対するあらゆる暴力の根絶
- 障害を通じた女性の健康支援
- 男女共同参画社会を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
- 科学技術・学術分野における男女共同参画社会
- メディアにおける男女共同参画社会の推進
- 地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画社会の推進
第4次男女共同参画社会
- 男女中心型労働慣行等の変革と女性の活躍
- 制作・方針決定過程への女性の参画拡大
- 雇用等における男女共同参画社会の推進と仕事と生活の調和
- 地域、農山漁村、環境分野における男女共同参画社会の推進
- 科学技術・学術における男女共同参画社会の推進
- 障害を通じた女性の健康支援
- 女性に対するあらゆる暴力の根絶
- 貧困、高齢、障がい等により困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備
- 男女共同参画社会の視点に立った各種制度等の整備
- 教育・メディア等を通じた意識改革、理解の促進
- 男女共同参画社会の視点に立った防災・復興体制の確率
- 男女共同参画社会に関する国際的な協調及び貢献
参考資料:
『第3次男女共同参画基本計画(平成22年12月17日決定)』
『第4次男女共同参画基本計画(平成27年12月25日決定)』
以上のように、男女共同参画社会は時代と共に少しずつ変化・進化しています。
「男女中心型労働慣行等の変革と女性の活躍」に対する政府の取り組み
第4次男女共同参画社会基本計画の中で、第一に取り上げられているのが「男女中心型労働慣行等の変革と女性の活躍」です。これは、男性が中心となってビジネスを遂行している現代社会の慣行を変革すると共に、女性の活躍を促進するために様々な施策に取り組むというものです。今の男女共同参画社会の中でも、最も重視されているテーマだと言えます。基本的な考え方を以下に抜粋します。
“全ての女性がその生き方に自信と誇りを持ち、自らの意思によりその個性と能力を十分に発揮することにより、職場・家庭・地域等あらゆる場面において活躍できることが重要である。女性の就業率が年々増加してきているなど、多くの分野において女性の活躍が進んできているが、政策・方針決定過程への女性の参画を含め、まだ十分とは言えない。女性の活躍が進むことは、女性だけではなく、男女が共に仕事と生活を両立できる暮らしやすい社会の実現にもつながるものであり、男女共同参画社会の実現のため、引き続き、あらゆる分野における女性の活躍を強力に推進していかなければならない。”
これを実現するために日本政府が掲げている施策が「長時間労働の削減等の働き方改革」であり、昨今話題になっている働き方改革関連法案へと繋がっています。さらに、「家事・育児・介護等に男性が参画可能となるための環境整備」や「男女共同参画に関する男性の理解の促進」といった施策により、男性が家事・育児により多くの時間をかけられるようにすると共に、女性の社会活躍を推進するための取り組みがなされています。
男性にとっての男女共同参画社会
女性の視点で語られることの多い男女共同参画社会ですが、男性視点で考えると男女共同参画社会にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
少子高齢化が進む中、男性中心型のビジネスに依存すると、ビジネスパーソンの残業時間は次第に増えていきます。これは2019年4月より施行された働き方改革関連法案に反することになり、規定を超えた残業時間は罰則の対象になります。また、残業時間が多くなると生活と仕事のバランスが取りにくくなることから、ストレスが溜まり心身共に不健康な状態になる可能性もあるでしょう。
最近では育児に積極的な男性も多いものの、職場の雰囲気として男性の育児休業は、まだまだ取得しにくい傾向にあります。こうした実状も日本企業の生産性を下げている原因になっていると考えられ、男女共同参画社会は女性だけでなく男性にとっても良い職場環境づくりになると言えます。
また、興味深いポイントとしては、男女共働きかつ男性も女性も正社員として雇用されている家庭においては、男性の小遣いが高いという統計もあるのです。男女共同参画社会が促進し、女性の社会活躍が目立つようになれば、男性の小遣いが上がるだけでなく国力を維持しながら社会全体が豊かなるのではないでしょうか。
現代では、男女問わずさまざまな環境や条件下で活躍するには、求められる様々な働き方ができる制度、そしてそれを認め、実施できる文化、さらにそういった働き方を支えるITが必須となっています。企業はその3大要素のどこに課題があって、どう解決していくかをあらためて検討、実施することが求められています。
- トピックス:
- 働き方改革
- 関連トピックス:
- 働き方改革