多くの企業がクラウドファーストのもと社内の情報システムをクラウド化しています。現在、クラウドを一部でも利用している企業の割合は56.9%に達しており、そのうち51.2%の企業はオンラインストレージ等のファイル保管やデータ共有のサービスを導入していると総務省が発表しています。
出典:『平成30年版情報通信白書 第2部 基本データと政策動向』
年々導入範囲が拡大しているオンラインストレージ。それに比例するかのように、ファイルサーバー廃止も進んでいます。いつでも、どこにいてもファイル共有が可能なオンラインストレージは今やビジネスに欠かせない存在であり、「オンラインストレージ無くしてビジネスは成り立たない」という企業やビジネスパーソンも大多数存在します。
今回は、ファイルサーバーを導入している企業向けに、なぜファイルサーバーを廃止してオンラインストレージへ移行するのがよいのか?その理由を紹介します。
オンラインストレージとはどんなサービスなのか?
オンラインストレージは、端末内や社内のファイルサーバーに保存していたデータやコンテンツを、外部のクラウド上に保存するためのサービスです。ユーザーはインターネット経由でサービスにアクセスして、IDとパスワードを入力することで自分(自社)専用のストレージ領域を利用することができます。
数GBのストレージ容量であれば無料で提供しているサービスも多いので、個人的に利用している方も多いでしょう。ただし、この個人用のアカウントを企業内で使うとシャドーITとなりかねなく、会社から見ると大きなリスクとなります。
オンラインストレージは大きく分けると個人向けと法人向けに分かれており、個人向けでは大量のファイルを保存するためのストレージ領域や、他のユーザーとファイル共有するための機能が一般的に備わっています。一方、法人向けでは個人向けに提供されるオンラインストレージと同様の機能を備えていることはもちろん、チームと個人に分けて共有フォルダを作成したり、サービス上でワークフローを回したり、共同編集といったコラボレーションができたりと、よりビジネス利用に特化した機能を提供しているのが特徴です。また、法人向けではより高度なセキュリティやガバナンス機能が備わっているサービスや容量無制限でストレージを利用できるサービスもあり、要件の厳しい大企業でも問題なく利用できる機能性を有します。
ファイルサーバーはなぜ廃止されるのか?
ファイルサーバーとは、主にストレージ専用サーバーにソフトウェアをインストールして、ファイル共有スペースとして活用するシステムです。企業によっては汎用サーバーをファイルサーバー代わりに利用しているケースもあります。
ファイルサーバーの接続方式にはいろいろと種類がありますが、総じて言えることは社内ネットワーク、つまりイントラネットからのアクセスを前提としており、「外部、つまりインターネットからのアクセスは難しい」ことが挙げられます。
ファイルサーバーは社内利用を目的にしているので、社外ネットワークからファイルサーバーへアクセスすることはできません。要するに、テレワークや外出先にいながら社内に保存されているファイルを参照したり、サーバーへ保存したりはできないということです。厳密に言えばVPN(仮想プライベート回線)を構築すれば外出先からもファイルサーバーにアクセスできますが、構築費用と運用費用がかかりますし、管理メンテナンスの手間もあります。プロジェクトの関係者とはいえ、社外の人がアクセスすることはできないので、社外とのファイルやコンテンツ共有も困難です。企業によってはファイルサーバーとしてNAS(ネットワーク接続ストレージ)を設置する場合もありますが、ファイルサーバーとしての最低限の機能しかないという点では、本質的には今までのファイルサーバーと変わりないことになります。
オンラインストレージへ移行すべき理由とは
既存のファイルサーバーからオンラインストレージへ移行するメリットは多く、多数の企業がファイルサーバーを廃止する動きがあります。では、そのメリットとは何でしょうか?
1. ファイルのやり取りが非常にスムーズ
社内外で密にコミュニケーションを取り、資料や成果物などを頻繁に共有することが多い昨今では、ファイルサーバーならではのアクセス制限が生産性を阻害する壁になっています。オンラインストレージなら接続する回線や端末を選ばないので、いつでもどこにいても同じストレージ環境にアクセスして、ファイルの共有・閲覧・編集・保存が行えます。ファイルのやり取りがスムーズになるということは、個人や組織の生産性を向上させる直接的な要因になります。
2. ストレージコストを削減できる
ファイルサーバーを設置するためにはサーバーやソフトウェアライセンスの購入、あるはNASの購入などの調達を含めた初期費用がかかります。それに加えて定期的な管理メンテナンスも実施しなければいけないので、そこにランニングコストとなる人件費や運用管理費も加算されます。オンラインストレージは初期の構築費用がかからず、使用したストレージの分もしくは利用者数分だけ料金が発生します。管理メンテナンスが不要なので人件費や運用管理費もありませんので、ストレージコストを削減できるケースがあります。
3. 専門のシステム担当者が不要になる
オンラインストレージの管理メンテナンスは、サービス提供事業者が実施しています。ユーザーは常に最新のシステムを利用できますし、ハードウェアやソフトウェアの管理メンテナンスのための担当者も不要です。そのため大企業はもとより、IT人材がいないような中小企業でも高度な専用のストレージ環境を確保できます。
4. データ量を気にしない。ストレージの拡張も簡単に行える
ファイルサーバーを運用する上で大きな課題の一つがストレージの拡張です。企業が保存するデータ量は年々増加していくものの、ファイルサーバーがそれに追いついていないケースが少なくありません。実際、古いファイルを消してくれ、と情報システム部門から通達が出る企業も珍しくないのです。保存するデータ量に合わせてストレージを拡張するには、サーバーを刷新するか増設するかの対応が必要です。これには多くの労力と費用がかかります。一方、オンラインストレージなら契約内容次第で実質無制限に扱えますし増設という意識もファイルを消す必要もなくなります。
5. 物理的なデータ損失のリスクを低減できる
ファイルサーバーでデータを管理している場合、サーバーに障害が発生したり、災害などで物理的な損傷を受けたりするとHDD・SSDに保存されているデータが損失する可能性があります。オンラインストレージなら多くの事業者において対策が講じられており、そういった物理的なデータ損失リスクを最小化することができます。
6. 大企業並みのセキュリティが適用される
実績のあるオンラインストレージやコンテンツ管理のサービスでは、データセンターのセキュリティに加えて、サービスに保存されているユーザーデータを確実に保護するためのセキュリティ対策が講じられています。つまり、サービスを利用するだけで大企業並み以上のセキュリティが適用され、それを踏まえて考えるとオンラインストレージの費用はかなり割安といえるでしょう。
7. 利用するだけで災害対策になる
2019年10月12日に日本へ上陸した台風19号は、各地で甚大な被害をもたらしました。その中には、サーバールームが浸水してファイルサーバーが故障し、内部のデータが損失したという企業もあります。災害の多い日本において、災害対策は欠かせません。オンラインストレージなら多くの場合、高いレベルでサービスの可用性を担保しているので、利用するだけで災害対策を実施したのと同じこととなり、対応費用をも削減できます。
8. 働き方改革やテレワークに貢献できる
災害対策や効率化への取り組みとしても、多くの企業がリモートワークやテレワークを推進することで働き方改革を実現しようとしています。オンラインストレージであればインターネット回線さえあれば、セキュリティを担保しながら、いつでもどこからでも業務で利用するファイルにアクセスすることが可能になるため、働き方改革に貢献できます。ビデオ会議のシステムがあっても、ファイルにアクセスできなければ効率は上がりません。
今回はオンラインストレージのメリットを一部お伝えしました。多くの企業がファイルサーバーを廃止して、オンラインストレージへ移行している理由も頷けるのではないでしょうか。皆さんもこの機会に、ファイルサーバーの課題を洗い出した上で、オンラインストレージの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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