IT技術の向上や働き方改革の流れに伴い、業務プロセスを改善して、効率化や自動化を目指す企業が増えてきました。
そんな中、効率化を実現するソリューションとして注目を集めているのが、「プロセスマイニング」と呼ばれる手法です。最近よく耳にするようになった手法ですが、実際業務プロセスの改善にどのように役立ち、組織にどんな価値をもたらすのでしょうか。この記事では、プロセスマイニングの基本やメリットについて解説していきます。
プロセスマイニングとは
プロセスマイニングとは、組織のさまざまな業務プロセスで蓄積されるデータを解析して、業務の改善するべきポイントを洗い出す手法のことです。
具体的には、従業員の行動データやコールセンターの問合せ内容、申請・承認業務などのあらゆるイベントログを、ツールを用いて分析を行い、処理のパターンを可視化。スキルや経験の差から生まれる業務効率の違いや、業務上のボトルネックといった問題を発見して、業務改善のポイントを明確にします。この考え方は、2010年代にドイツで広がりを始め、現在ではグローバル企業を中心に積極的に活用事例が報告されています。
国内ではまだあまり浸透していませんが、グローバル化や働き方改革の実現が求められる現代において注目度は日々増しており、これから日本でも認知されていくことは間違いないでしょう。
プロセスマイニングとタスクマイニングの違い
プロセスマイニングとよく混同されがちなものに「タスクマイニング」と呼ばれる手法がありますが、両者には一体どんな違いがあるのでしょうか。
タスクマイニングとは、オフィスソフトの立ち上げやメールの送受信といったPCの操作ログデータを、タスク単位で可視化・分析する手法のことです。PC操作のログを分析することで、タスクレベルでの無駄な業務やボトルネックを洗い出し、業務改善につなげていきます。最終目標が業務を効率化するという点では、プロセスマイニングと変わらないものの、タスクマイニングは分析対象の範囲が狭く、現場で働く社員一人ひとりのタスクに特化した手法となっています。
プロセスマイニングとタスクマイニング、どちらも業務改善に不可欠な要素であり、この2つの手法を組み合わせてこそ、真の業務効率化につながるといえるでしょう。
プロセスマイニングに注目が集まる理由・背景
ここまでプロセスマイニングの概要について解説してきましたが、なぜ今注目を集めているのでしょうか。
少子高齢化社会と呼ばれて久しい現在の日本は、深刻な労働人口の減少が社会問題となっており、デジタル技術やテクノロジーを活用した業務改革が求められるようになりました。実際、すでに各企業で業務の効率化に向けた動きは始まっており、単純作業を自動化するRPA(Robotic Process Automation)の導入はご存知の方も多いと思います。
もう一つの大きな要因として挙げられるのが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大です。これまでにない感染症のパンデミックが起こったことで、テレワーク、リモートワークなど、あらゆる企業で働き方を変えることが待ったなしの状況になりました。迅速に変化の波に対応するDXの推進により一層拍車がかかりました。
こういった背景により、ITを活用して各業務の工程を可視化し、最適化を図るプロセスマイニングに対する注目度が一気に高まったのです。
プロセスマイニングに期待できる効果・メリット
ここまでプロセスマイニングの基本や背景を解説してきましたが、導入することで企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。活用領域が幅広いプロセスマイニングは、多くのメリットを享受できますので、順番にみていきましょう。
生産性向上・業務効率改善
大きなメリットとしてあげられるのは、業務効率が改善されることによる生産性の向上です。
プロセスマイニングでは、あらゆる処理パターンが可視化されるため、現在の業務で改善したいポイントを具体的に特定して、より最適な対策を講じられるようになります。業務のムダをなくし、生産性が向上するということは、利益の向上やコスト削減にもつながります。
属人化の解消やヒューマンエラーの抑制にも貢献し、社員は業務時間内により多くの仕事を効率よく行えるようになります。もしくは、非効率な作業が原因で起きていた残業を減らすことも可能となります。
顧客満足度の向上
プロセスマイニングは、企業のみならず顧客満足の向上にも役立ちます。
例えば、受注から納品までのプロセスが改善することで、注文した商品が以前より早く届くようになりますし、歩留まりの改善やクレームにつながるようなミスも削減できます。スピードとサービスの質、双方を効率化できれば顧客満足度の向上につながり、利益の向上やリピーターの獲得も期待できるでしょう。
働き方改革推進の追い風になる
プロセスマイニングの導入は、現代に求められる働き方改革の促進にも効果的です。
そもそも働き方改革とは、労働人口の減少やOECD加盟37カ国中21位という低い労働生産性の改善を目的とした施策で、日本全体の大きな課題となっています。プロセスマイニングを取り入れることで、これまで説明してきたようにボトルネックや業務フローの可視化が可能になります。
ムダな業務が削減されることで、時間外労働の抑制や高齢者のジョブ型雇用などの対策だけでなく、良好なワークライフバランスといった従業員満足度の向上にもつながります。
プロセスマイニング導入・運用におけるポイント
最後に、実際にプロセスマイニングを導入・運用するにあたって、これだけは抑えておきたいポイントをご紹介します。
分析すべき領域・課題範囲を洗い出す
どんなツールにも言えることですが、成功させるためには何よりしっかりとした準備が非常に大切です。まずは、プロセスマイニングツール導入前に何が課題でどんな分析が必要なのか、対象を洗い出して整理しておきましょう。
目的とゴールを明確にしてからツールの選定を行い、いきなりすべてを可視化するのではなく、身近な業務から少しずつ活用を始めていきましょう。
ログデータの一元化
ツールを利用して分析を行う際、基幹システムや業務システムに蓄積されているデータのログ情報が必要になります。さまざまなデータを一元化してイベントログを作成し、現状プロセスを可視化していきましょう。
可視化される主な課題・問題点としては、非効率な業務の検出やボトルネックの探知、スタッフのスキルなどが挙げられます。原因を特定できたら、必要のない作業の除去、人員の再配置、自動化といった業務改善のベストプラクティスを実施していきます。
また、往々にしてあるのが、業務関係コンテンツに関する非効率性です。同じファイルがあちこちに作成されていたり、それゆえにどれが最新か、正しいものか分からなくなっているため、プロセスやタスクの進行の妨げになっていることです。ログだけでなく、業務ファイルや業務コンテンツも一元化しましょう。
中長期的なスパンで進め、継続的な改善を図ること
企業が何年もかけて培ってきた業務プロセスを見直すのは、決して簡単なことではありません。プロセスマイニングは中長期的なスパンで進めていき、一度実施したら終わりではなく、継続的な改善を図ることが成功に導く重要なポイントになります。
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まとめ
業務プロセスの改善を実施することは相当な覚悟が必要で、コストが増大したり、かえって運用パフォーマンスを悪化させたりと大きなリスクも伴います。しかし、全ての業務はプロセスで成り立っていると言っても過言ではないため、プロセスマイニングの手法を取り入れれば、より問題点を明確化してスムーズに業務改善へつなげていくことができます。
コンテンツの一元管理もプロセスマイニングにおいての重要なチェックポイントです。現状の把握と改善点や目的の設定を行い、働き方改革や生産性向上、DXの推進にお役立てください。
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