業務で日常的に取り扱うビジネス文書には、「文書ライフサイクル」という概念が存在し、それを意識していくことでより合理的な文書管理が可能となります。本記事では、DXの一環として欠かせない、文書管理の合理化を検討している担当者に向けて、文書ライフサイクルの概念や必要性、そのライフサイクルをステージ別に解説します。
文書ライフサイクルとは
文書ライフサイクルとは、ビジネス文書の作成から破棄されるまでの一連のサイクルのことです。ビジネス文書は作成されて終わりではなく、活用や保管といったプロセスを経て最終的に破棄されます。破棄までのプロセスや期間は文書の特徴や活用頻度によって異なるため、文書のライフサイクルに合わせた管理・活用を意識することがとても重要です。
知らない方も多いかも知れませんが、文書ライフサイクルの概念は、経済産業大臣を主務大臣とする日本産業規格において、公的な概念として細かく規定されています。具体的には「規格番号JIS Z 6016」で定義されているのです。
文書のライフサイクル管理が必要な理由
文書のライフサイクル管理が必要な理由は大きく3つあります。
- 法的な要請への対応
ビジネス文書の中でもっとも取り扱いに注意する必要があるのは、税務関係や労働関連の法定保存文書です。適切に管理することで企業コンプライアンスも遵守でき、第三者などに開示を求められた際にも速やかに対応できるのです。 - ビジネスの継続性の確保
都度、情報やデータを記録・保存しておけば、PL法によって消費者から訴えられてしまった場合にも、開発者の立場から製品の品質を証明できます。また、事業継続計画を作成・保存しておけば、災害時にも事業を継続、または早期再開できる可能性が高まります。 - 情報漏えいの予防
統一されたルールに基づき全文書を適切に管理していくことで、企業情報や個人情報を含む資料の紛失・流出といったリスクを防げます。
あるビジネス文書の一生
ビジネス文書のライフサイクルを人の一生になぞらえて考えていくと、より理解しやすいでしょう。ここからは、ビジネス文書のライフサイクルを4つのステージに分けて解説します。
文書の誕生(作成)
ビジネスシーンにおいては、日々さまざまな文書が作成されています。この発生を機に文書のライフサイクルがスタートします。文書の発生方法には、社内で新規「作成」するパターンと顧客や他社などの社外から「授受」するパターンの2つがあります。文章が発生した段階では、文書の管理を各担当者や各部署に委ねているケースが多いでしょう。
文書の現役時代(共有・活用)
文書が当初の目的に沿って使用される段階です。具体的には、決裁や契約書締結、全社通達といった目的に沿って処理されたり、共有されたりします。
たとえば、稟議書であれば社内の承認プロセスを経て決裁されますし、企業のニュースリリースであれば社外に向けて、発信・配布され、与えられた役割を果たします。詳しくは後述しますが、一つ前の誕生の段階で文書を電子化しておくと、システム上での公開・検索も容易になるなど、共有・活用段階での処理を効率良く進められるでしょう。
文書の老年期(保管・保存)
伝達や活用が済んだからといって、すぐに文書の利用価値が消えてなくなるわけではありません。作成されたばかりの文書や重要性の高い文書など、中にはその後も度々必要とされるものがあります。
そこで、こうした文書を必要に応じて参照できるように、ルールに則って整理・保管します。法定保存文書については、定められた保存期間が満了するまでは社内に保存しておく義務があります。なお、デジタルデータであれば、法定保存文書を含め、より探しやすくするようにメタデータを付け検索し易くする管理手法もあります。
文書の最期(破棄)
文書がそのライフサイクルを終える段階です。用途がなくなった、保存期間が満了した文書には破棄します。その際、情報漏えいなどのリスクにも配慮して、安全な方法での破棄が望まれます。
紙の書類であればシュレッダーにかけ、電子書類であれば消去します。CSR(Corporate Social Responsibility)の観点を含めるのであれば、環境負荷の低減にも配慮し、情報漏えいなどのリスクのない紙の書類についてはリサイクルの道も検討してもよいしょう。いずれのプロセスにおいても、企業の文書は適切に破棄されることではじめてライフサイクル完成となります。
文書ライフサイクルの合理的な管理方法
文書ライフサイクルの合理的な管理方法について解説します。次の2点を導入して、より効率的な管理を行いましょう。
文書管理ルールの確立
文書ライフサイクルの合理的な管理には、文書管理ルールが不可欠です。情報ガバナンスとは、企業が保有する文書を管理するための体制やプロセスを整備する取り組みです。この情報ガバナンスの考えに沿って、文書ライフサイクルの要件を定めていきましょう。
具体的には、書式や形態、共有方法、保管・保存方法と期間などを決めていきます。社内にしっかり浸透させるには、全ライフサイクルにおける取り扱いルールを盛り込んだマニュアルを作成することも大切です。また、コンテンツ管理システム(文書管理システム)や書庫といった管理に必要なITや設備の準備も必要です。
文書管理システムの導入
紛失しやすい紙の資料を人の手で管理するには、膨大な手間とコストがかかりますし、保管スペースも必要です。また、ペーパーレスや電子化で保管スペースの問題は解決できても、管理そのものがなくなるわけではありません。しかし、ペーパーレス化かつシステマチックな文書管理を簡単に実装できる文書管理システムであれば、これらの課題を解決できます。
文書管理システムは、ファイルサーバーでは難しいライフサイクル全般の管理を可能にしてくれます。どこからでも書類を検索・閲覧できるだけでなく、スキャン機能やセキュリティ機能、ワークフロー機能、リテンション機能なども搭載されているため、導入によってライフサイクル全般の管理を一気に進められるはずです。
また、クラウド型を選べば、初期投資や担当者の運用負担を減らしつつ、文書のライフサイクル管理を合理化できますし、どこからでも必要なファイルにアクセスできるため、働き方改革にも貢献します。サービスを探している場合は、クラウドストレージの機能も文書管理全体をサポートした機能も持つクラウドサービスであることがポイントとなります。ライフサイクルのステージごとに違うサービスを使うのでは効率的な管理にはならないため、注意が必要です。
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まとめ
年月が経てば経つほど、社内に保管されるビジネス文書の量は膨大になります。しかし、コンプライアンスが叫ばれ、企業の不正や不祥事に向けられる社会の目がより厳しくなっている昨今においては、文書ライフサイクルを意識して資料を適切に管理していかなければなりません。
そこで、クラウドコンテンツマネジメントで、文書ライフサイクルを負担なくかつ安全に管理してみてはいかがでしょうか。ビジネス文書の全ライフサイクルを一元的に管理できる基盤として導入すれば、守りだけではなく攻めのDXを見据えた高次元なコラボレーションも叶えてくれるでしょう。
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