データ爆発時代と呼ばれる現代において、社内ファイルサーバーに問題を抱えている企業は少なくありません。そこには容量不足、コストと運用負担の肥大化、情報が整理できない、モバイル対応、セキュリティの担保が不安など、さまざまな悩みがあります。
本稿では、社内にファイルサーバーを設置すると発生する問題点を整理し、解決策について紹介します。
社内にファイルサーバーを設置する3つの問題点
それではさっそく、ファイルサーバーの問題点について整理していきます。
1. データ容量が増え続け、保存期間が長期化している
あらゆる業務にICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)が導入されたことで、従来、紙文書でのやり取りが中心だった業務においても電子データ化が進んでいます。このような背景から業務過程で発生するデータは増加の一途をたどり、「データ容量の肥大化」が発生し、多くの企業でファイルサーバーの容量不足の問題が発生しています。
容量不足により、「不要なファイルを削除するように」と組織に通達しても、この問題は解消されません。従業員自身、必要なファイルと不要なファイルの区別がつかず、ファイルの削減は一向に進みません。むしろ、重要なファイルを誤って削除してしまいトラブルに発展するリスクが高いため、多くの企業はこの問題に対してファイルの削除ではなく「ストレージの増設」で対応しています。
ストレージを増設すれば容量不足問題を簡単に解決できますが、ファイルサーバーの管理にかかる手間とコストは逆に増加させてしまいます。また、機器導入や設置にかかるコストももちろん、バックアップなどシステムの管理維持のためのコストや手間も増えるため、容量不足に対してファイルサーバー増設で対応することは最適解とは言えないでしょう。
2. 部門ごとに分散しているファイルサーバーを統合しなければいけない
ファイルサーバーの容量不足と並んで深刻な問題が、部門や拠点ごとにファイルサーバーが分散し、運用ルールもバラバラになっていることです。この問題を放置すると、以下の別の問題へと派生していきます。
- ファイルサーバーごとに管理が必要で、管理工数が増える
- 複数の共有ディレクトリが割り当てられシステムが使いづらくなる
- 利用頻度の低いファイルサーバーができ、資源が無駄になる
- サーバー増設や構成変更が大規模になり、ユーザーへの影響が大きくシステム停止作業が頻発する
- フォルダ体系やファイル名の付け方が統一されない
- 必要なファイルがどこにあるのか探しづらくなる
- 不要なフォルダや重複ファイルが大量発生して容量不足を加速させる
- 支社・部署ごとに外付けHDDを購入して使い始め、セキュリティや管理ガバナンスが効かなくなる
- 情報システム部の許可を得ずにクラウドサービスを使い始め、シャドーITが横行する
- 情報漏洩がいつ起きても不思議ではない状態になる
いずれの問題も深刻なものばかりであり、特に情報システム部の許可なしで設置、使用する“シャドーIT”の利用が横行すると、情報漏えいや情報消失のリスクが増加し、企業にとって危機的な状況と言えます。状況が悪化する前に情報システム担当者はファイルサーバーの抜本的な見直しが必要とされます。
3. 大容量化によりバックアップとBCP対策が追い付かない
電子データ化やオンライン化が進み、あらゆる業務でICTの活用が進んだことでデータ量が劇的に増加しています。昨今ではAIの普及もあり、画像や動画、音声といったリッチコンテンツの重要性も増しており、管理要件が増加しているだけでなく複雑化もしています。もはやデータの増加を止めることは誰にもできません。
データの大容量化によって起こる問題が「バックアップとBCP対策」です。企業が日常的に蓄積するデータをあらゆるリスクから保護するにはバックアップが欠かせません。しかし、データ量が多いほどバックアップに時間がかかりますし、より多くのコストがかかります。
それと同時にBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)にも対応しづらくなるリスクがあります。BCPは災害やテロ、大規模なインフラ障害等が発生しても事業継続を可能にするためのプランであり、データのバックアップもBCPの一環です。BCPが遅れることで、万が一の事態に発展した際に事業継続性が低下し、最悪の場合は事業運営にも大きな影響を与えかねません。
このように従来、ファイルサーバーは当たり前のように社内に設置するものでしたが、時代の変化と共に様々な問題が浮き彫りになってきています。企業や運用担当者は、これらの問題に対して真剣に向き合い、迅速かつ適切な対策を取る必要があります。
ファイルサーバーの問題点を解決する方法とは?
では、企業と運用担当者は上記のようなファイルサーバーの問題点に対して、どのような解決策を取れば良いのでしょうか?
オンプレミスによる対応
まず考えられるのは、現用のデータとアーカイブデータを分類し、運用することです。企業が日常的に蓄積するデータの中には、即座に使用するものと使用しないものがあります。ただし、使用しないからといって削除してしまうとコンプライアンス問題へ発展する可能性があるため、長期保存が欠かせません。
そこで現用データはメインのファイルサーバーに保存し、アーカイブデータはアーカイブ専用のストレージに保管することでメインファイルサーバーの保存容量増加を抑えることができます。アーカイブ専用ストレージは安価な製品を使用すれば、ストレージにかかるコストを大幅に削減できるでしょう。
アーカイブデータの分類方法は複雑に設定せずに、データが作成・変更されてから経過した期間で抽出するのがよいでしょう。日常業務で使用するデータの大半は、作成・変更されてから1年以内のものであると言われています。作成・変更されてからの期間だけで分類しても、問題無くアーカイブデータを抽出できるでしょう。
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クラウドストレージの導入
次に検討する問題解決方法が「クラウドストレージ(オンラインストレージ)の導入」です。部門や支店ごとに分散しているファイルサーバーを独自に統合するのは難しく、さまざまな要件が求められます。要件をヒアリングするだけでも膨大な時間と手間が掛かります。それらの要件を気にせず統合的なファイルサーバー環境を構築できるのがクラウドストレージです。
クラウドストレージはインターネット上に用意されたファイルサーバーとも言え、企業はそれをサービスとして利用できます。容量は必要に応じて増減でき、端末やネットワークを問わず同じシステム環境にアクセスできることから、クラウドストレージを利用することで支店や部門ごとの分散されたファイルサーバーによる問題を解決できます。また、どこからでもあらゆる手段でアクセスができるため、テレワークによる生産性向上や働き方改革といったことにも貢献できます。
さらに、Boxのようなクラウドストレージであれば、データの大容量化に伴うサーバー管理などは全てベンダーが行い、更には格納できるデータ容量も無制限でサービスを提供しているため、情報システム部門の運用管理者の負担を大幅に解消できるでしょう。
ファイルサーバーを社内にオンプレで設置する問題点はたくさんあります。時代の変化に追随する意味でもこの機会に、既存ファイルサーバー環境の見直しを行った上で、問題解決に向けた対策、およびクラウド化の一端としてクラウドストレージの導入を検討してはいかがでしょうか。
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