「リモートワーク」は今や、国をあげて取り組まれている働き方改革実現の手段の1つであり、政府や自治体はリモートワークを導入する一部の企業を対象にした助成金/補助金制度を拡充しています。
ここでご紹介するのは、その「リモートワーク」という基本となる考え方です。加えて、成功のための導入ステップと注意すべきポイントもご紹介します。「リモートワークを導入してみたいけれど、成功するか心配…」という方は、リモートワークの基本を整理しながら成功への道順を確認しておきましょう。
リモートワークとは?
「遠隔でする仕事」。それがリモートワークです。遠隔とはオフィスからの物理的な距離を示しており、要するにオフィス外で働く環境を整えるのがリモートワーク導入の使命となります。ただし、一口に「オフィス外で働く」といってもその様態はさまざまです。
<リモートワークの一例>
- 一部の社員はオフィスで働き、一部の社員は在宅で働く
- カフェなど好きな場所で働く
- 会社が契約したシェアオフィスで働く
- 地方に設置されたサテライトオフィスで働く
- エンジニアや営業が客先に常駐して仕事をする
- 場所を問わず、移動時間を有効活用して仕事をする
- 子育てや介護などの合間の時間を使って自宅等から仕事をする
このように、リモートワークのスタイルは多岐にわたり、企業が持っている事業や業務内容、職務などによって使い分けることが大切です。ちなみに「在宅勤務型」「モバイルワーク型」「サテライトオフィス型」などの分類もされています。
リモートワークのメリット
最大のメリットとして「通勤時間や移動時間の削減」と「生産性の向上」に期待する企業が多いですが、後者の効果に関しては環境によるところも大きいので注意してください。
「通勤時間や移動時間の削減」に関しては確実に恩恵を受けることができます。特に、都心にオフィスを構えており、社員の多くがベッドタウンなどに居住している場合は、通勤時間を大幅に削減できることから、時間に余裕を持って仕事に取り組むことができます。さらに、台風や地震といった際にも物理的にオフィスに出向く必要がなくなるため、BCPの一環にもなります。
時間に余裕ができると心にも余裕が持てるので、業務上の成果物の質の向上も期待できるでしょう。ただし、「生産性の向上」に関しては話が別です。生産性というのは、「投資に対して得られた成果物の数」で表されるので、単純に通勤時間や移動時間が削減できたからといって生産性が向上するわけではありません。むしろ、在宅勤務ワーカーの中にはビジネスとプライベートの切り替えが上手くいかずに、生産性が下がってしまった例もあります。リモートワークの導入成功を目指すのならば、この点ともしっかり向き合っていくことも重要になってきます。
リモートワークは他に目を向けるべき魅力的なメリットがあります。たとえば、社員は自分のライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を選択できるので、企業としての価値が上がり、離職率の上昇を防げます。さらに、魅力的な企業は国や地域を問わずに優秀な人材を採用できるため、人材不足問題の解消にも役立ちます。
リモートワークは、視野を常に広く保ち、特定のメリットに縛られない導入を心掛けることが大切です。
リモートワークに絶対欠かせないもの
リモートワーク導入を目指す上で欠かせないものとは、「ICT(情報通信技術)」です。つまり、遠隔地にいてもチームがコミュニケーションを取るためのITツールが必要になります。どういったものがICTに含まれるかというと、メール/電話/ビジネスチャット/Web会議/クラウドストレージなどがあります。また、それ以外でも職種や職務によって多様なICTが存在します。
多くの場合、上記5つのICTを駆使して社員同士のコミュニケーションを支援することになるでしょう。メールと電話の説明は不要として、その他3つのICTの特徴は以下の通りです。
1. ビジネスチャット
チャット形式でメッセージのやり取りができるICTです。ビジネス向けのチャットツールは、チャットスペースからWeb会議をスタートし、様々なICTとの連携によって業務効率を高められるメリットがあります。コミュニケーションの迅速性から、最近ではメールに代わって情報交換の中心としている企業も少なくありません。
2. Web会議
遠隔地にいながら、対面でのコミュニケーションを実現するICTです。パソコンの画面を通じて相手の表情や資料を実際に見ながらコミュニケーションが取れるので、遠隔地にいたとしてもオフィス内にいるかのように情報交換が行えます。また、顧客とコミュニケーションを取る際にも利用できるので、完全なリモートワークを実現するには欠かせないものです。
3. クラウドストレージ
インターネット上に社員同士がファイル共有を行うためのスペースを用意するICTです。ネット接続が可能な場所ならどこからでもアクセスできるので、その利便性からリモートワークを導入していない企業でも広く利用されています。コミュニケーションにはコンテンツが必須なので、ビジネスチャットやWeb会議と連携利用するとさらに効率的な働き方ができます。
以上3つのICTに関してはまだ利用していないという場合は、新しく導入する必要があります。これらは、リモートワークには欠かせないICTです。
リモートワークの導入ステップと注意ポイント
まずは、大まかな導入ステップをご紹介します。
- リモートワーク導入をプロジェクトとして立ち上げて、上層部や事業部門責任者等に宣言する
- 導入推進チームを発足し、その中で役割や責任を明確に決める(経営者や上層部の支援があると取り組みやすい)
- なぜリモートワークを導入するのか?その意義や、リモートワークに期待する効果などを整理する
- さまざまな様態の中から自社が目指すリモートワーク像を明確にして、ロードマップを作る
- 試験的にリモートワークを実施する部署や社員を選定して、限定的に導入計画をスタートさせる
- 新しいICTを導入する必要があれば、リモートワークの目的と目標から最適な製品を選ぶ
- 試験的に実施したリモートワークを評価して、改善点などを踏まえながら取り組みを徐々に拡大していく
以上の導入ステップの中で、最も注意していただきたいポイントは「評価と改善を繰り返す」ことです。リモートワークは一朝一夕で成るものではありません。長いプロジェクト期間を経て、評価と改善を繰り返しながらリモートワークのための環境や制度を整えながら、実用段階まで運んでいきます。
一部の部署や社員を対象にリモートワークを導入してみたからといって成功とはなりません。大企業でも、手探りでリモートワークに取り組んでいるところはあります。そのため必ずPDCAサイクルを意識し、「遠隔地で仕事をすることの難しさ」を理解した上で、持続的な取り組みを行う必要があります。その流れで企業内でリモートワークをする文化が醸成されれば、リモートワークは威力を発揮し、必ず成功するはずです。
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