ビジネスを円滑に進めるにあたって、組織内外のコミュニケーション強化は外せない課題の1つです。「日本人は外国人に比べてコミュニケーションが苦手」という意見も耳にしますが、外国人よりもシャイな性格が多い日本人のことを考えると、これは間違いではないのかも知れません。
しかし、その一方でコミュニケーションが作業効率に与える影響度は、海外よりも日本の方が高いという結果も見られるようです。2010年に発表された『ワークライフバランス社会の実現と生産性の関係に関する研究報告書』の研究論文集「働き方と生産性(獨協大学経済学部 教授 阿部 正浩 著)」によると、日本の職場では相関関係があるが、ドイツやイギリスではコミュニケーションと作業効率の相関関係はないという結果が出ています。このことから日本企業であれば、コミュニケーションの円滑化を意識する必要があるとも解釈できます。
そこで本稿では、企業コミュニケーションの起点を「ファイル共有」に絞って、各種方法とそれぞれのメリット・デメリットを紹介していきます。コミュニケーションの円滑化を検討するにあたって、「ファイル共有」の効果を判断材料としていただければ幸いです。
ファイル共有の方法
日々、業務をしていると他の人とファイルを共有することは多々あることです。皆さんはどのように同僚や上司、または社外の方々とファイルを共有していますか?
現実的な共有方法として考えられるのは、「ファイルサーバーの構築」、「不要になったパソコンを利用する」、「NASを導入する」、「クラウドストレージを利用する」の4つのケースが多いのではないでしょうか。もしかしたらメールに添付して送ったり、シャドーITとなるフリーのクラウドサービスで送ったりといったケースもあるかも知れませんが、いずれもセキュリティ上の問題が発生します。
今回は上記4つに絞り、その概要を説明します。
1. ファイルサーバーの構築
ファイル共有の方法として最も多く採用されているのが、ファイルサーバーです。社内ネットワーク上にファイル共有専用のサーバーを設置し、ファイル管理ソフトウェアをインストールしてファイル共有のためのスペースを用意します。広く普及しているWindows Serverにはファイルサーバー機能が標準搭載されているので、比較的簡単にファイルサーバーを構築できます。最近では分散されたファイルサーバーの問題を解消するためにクラウドサービスを利用し統合するケースが増えています。
2. 不要になったパソコンを利用する
サーバーを設置しなくても、不要になったパソコンをネットワーク上に設置してファイル共有スペースとして活用する方法があります。たとえばWindows 10を搭載しているパソコンならば、ファイルエクスプローラーを起動して共有したいファイルで右クリックをします。表示されたメニューの中からプロパティを選択して、共有タブから「ネットワークのファイルとフォルダの共有」欄にある共有をクリックします。そこで共有したいユーザー名を入力することで、パソコンを活用したファイル共有スペースの完成です。
3. NASを導入する
NASは「Network Attached Storage(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)」といって、ネットワーク上に設置するストレージ専用機器です。従来のNASは単なるファイル保存スペースでしたが、近年ではストレージ機能を備えた製品も登場し、バックアップや重複排除、暗号化といった豊富な機能を利用できるものもあります。
4. クラウドストレージを利用する
クラウドストレージはインターネット上に用意されたファイル共有スペースであり、サービスとして利用できます。特徴は製品を購入するのではなくサービスとして利用する点であり、利用料金を支払うことで必要なストレージを永続的に自社でシステム管理をすることなく利用し続けられます。
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それぞれのメリット・デメリット
ファイルを共有するための各種方法の概要を説明したところで、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。企業は既存業務や組織形態、ビジネスで目指す目標などを考慮しつつ、自社にとって最適な方法を選択することが大切です。
ファイルサーバー
メリット
最大のメリットは、組織内のユーザー管理や権限管理、セキュリティポリシーの適用など細かい設定を行える点です。ファイルサーバーは企業の機密情報が集約する場所なので、適切な管理のもと運用しなければ情報漏えいリスクが増大します。その点、ファイルサーバーによる細かい管理でセキュリティ強度を上げられるので、安心・安全なファイル共有スペースを構築できます。
デメリット
近年類を見ないデータ量の増加によって、企業のストレージは日々圧迫されています。しかしながら、ファイルサーバーはストレージの増設を得意としていないため、増加するデータ量へ対処するには時間とコストがかかります。規模の縮小も苦手なので、リソースを最大限に利用できないというデメリットもあります。また、簡単に設置できることから勝手に部門で構築され、分散されて管理される傾向にあります。そのため企業統一のポリシーの下で管理されず、セキュリティリスクであったり、ガバナンスやコンプライアンスがおろそかになったり、しっかりと運用できていなかったりと、問題を抱えるケースが散見されます。また、社外のユーザーとの共有は、セキュリティの観点から運用上の工夫が必要となり、実際にはかなり難しいでしょう。
パソコン
メリット
ファイルサーバーよりも低コストに、そして簡単にファイル共有スペースを作れるのがメリットです。不用になったパソコンを使用すれば追加コストはかかりませんし、HDDを外部接続すればストレージの増量も可能です。
デメリット
パソコンをファイル共有スペースにした場合、細かいユーザー管理や権限管理が行えないため、セキュリティリスクがあります。ごく小規模な事業者で運営すれば大きな問題とはならないかも知れませんが、従業員が5人以上いるようなら他のファイル共有方法を検討しましょう。ファイルサーバのデメリットと同様に、やはりまた社外のユーザーとの共有は、セキュリティの観点から運用上の工夫が必要となります。
NAS
メリット
NASには1TBのストレージを有した製品なら1万円未満の安価なものから、オールフラッシュストレージを搭載した高機能かつ高価なものまで多数存在します。後者はWindows ファイルサーバーにはないようなパフォーマンスであったり、運用管理性であったり、データ損失を防ぐ高度なRAID構成を保有していたりと、エンタープライズシステムに必要とされるような要件を兼ね備えています。
デメリット
ファイルサーバーのように機能させられるNASですが、それなりに大掛かりになる傾向があります。そのため高価になりがちです。またこちらもやはり、基本社内に構築するオンプレミスのシステムですので、社外のユーザーとの共有は前述のファイルサーバーやパソコンを利用する場合と同様の課題があります。
クラウドストレージ
メリット
最大のメリットはその手軽さ、拡張性の高さ、セキュリティの高さにあります。サービスとして利用するクラウドストレージは、必要な容量やユーザー数を指定するだけで即座にファイル共有スペースを用意でき、かつ必要に応じてリソースの増減が簡単に行えます。さらに、ビジネス向けサービスなら、数段階によるアクセス権管理やその他の付加価値のあるセキュリティ機能(多くの場合はオプションとなっています)により、堅固なセキュリティや情報漏えい対策、さらにはガバナンスやコンプライアンスにも対応する機能が備わっているため、実戦的、かつ実用的なファイル共有スペースとして機能します。またクラウドゆえ、社外のユーザーとのファイル共有でも、社内でファイルを共有するのと同じように、柔軟なファイル共有が可能です。
デメリット
インターネット経由で利用するサービスなので、常にインターネット回線を切らさないことが前提です。
貴社におすすめのファイル共有方法とは?
それぞれメリットやデメリットがあるファイル共有の方法ですが、最近ではクラウドストレージがおすすめです。なぜならセキュリティを担保しながら、いつでも、どこからでもファイルにアクセスできるだけでなく、社内外のユーザーともファイル共有を簡単に行えるからです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)や効率的な働き方を目指す働き方改革の一端ともなります。そして、本来自社で実施しなければならないファイルサーバーの管理もクラウドベンダーが全て行うため、IT部門の有無や繁忙にも左右されません。よって、まずはクラウドストレージの活用方法から検討してみることをおすすめします。
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