今やクラウドサービスはビジネスだけではなく、我々の私生活においても深く根付いたサービスであり、利用してない人はいないほど一般的で身近になっています。
総務省が発表した情報によると、一部でもクラウドサービス利用している企業は全体の68.7%であり、そのうち59.4%の企業が「ファイル保管・データ共有」を目的としてサービスを利用しています。
引用:「令和3年版情報通信白書」ß
しかし中には、「クラウドストレージとは?どんなサービスなの?」という方もいるでしょう。本記事ではあらためて、クラウドストレージについて基礎から解説していきます。
クラウドストレージを分かりやすく解説
クラウドストレージは「クラウドサービスとして提供されるストレージ」のことです。また、「クラウドサービス」とは「インターネット経由で提供されるサービス」のことで、皆さんが普段パソコンで使用しているインターネットサービスは、すべてクラウドサービスと言えます。
従来は社内ネットワーク上に設置したサーバーにファイル管理・共有のためのソフトウェアをインストールして、ストレージ環境を構築していました。しかし、この方法だと運用や管理を含め多くの費用や時間がかかるため、この問題を解決するために登場したサービスがクラウドストレージです。
クラウドストレージについては、下記でも解説していますのでぜひご覧ください。
クラウドストレージとは?企業が利用するメリット
https://www.boxsquare.jp/blog/online-storage#toc-0
ファイルサーバーとクラウドストレージの違い
https://www.boxsquare.jp/blog/difference-between-fileserver-and-cloudstorage.html#toc-3
クラウドストレージの活用
クラウドストレージは一般的にファイルなどの管理のためのツールとして使われることが多いのですが、そのほかにも以下のような活用方法があります。
- サーバーログ解析結果の送受信
- 製品カタログやマニュアルの転送
- 機密情報のやりとり
- メール送信ができない環境からのファイル転送
- 災害対策(DR)やBCP対策
- テレワークやハイブリッドワーク対策
上記以外でも、クラウドストレージは社内にある全ファイルを一元管理できるため業務効率化に役立ちます。場所・デバイスを問わずに利用できる利便性、自動バックアップやサービスによってはより高度な機能を持ち、バージョン管理やアクセス権限管理などの管理性の面でも評価されています。
クラウドストレージが注目される背景
クラウドストレージが注目されている代表的な理由は次の2点です。
- 働き方の多様化
- 企業の急速なデジタル化
それぞれについて解説していきます。
働き方の多様化
クラウドストレージが注目されている最大の理由は、新型コロナの影響による働き方の急速な多様化です。テレワークの普及による遠隔勤務の浸透に対して、時間や場所を問わずコンテンツにアクセスできるクラウドストレージの必要性が大きく増しています。
在宅勤務やハイブリッドワークを推奨している企業にとっても、クラウドストレージの導入は有用です。インターネットの環境が整っていれば導入できる手軽さも、クラウドストレージが注目されている理由のひとつでしょう。
クラウドストレージは情報漏えいなどのセキュリティが懸念されていましたが、アクセス権限を制限すれば、不正アクセスのリスク対策が可能になります。また、マルウェアやランサムウェア全盛の昨今、1企業で完璧に対策を施すことは非常に難しく、かえってクラウドの方が安全と評価が変わってきています。
企業のデジタル化が進んでいる
近年では企業のDX推進にも注目が集まっていますが、クラウドストレージはデジタルテクノロジーに積極的ではなかった企業がスタートラインに立つために最適なサービスです。
既存システムが残った場合に想定される国際競争への遅れや、我が国の経済の停滞を示唆する「2025年の崖」という話題があります。システムの老朽化や肥大化は時代の流れに即した柔軟な対応を困難にさせ、DX推進を妨げます。老朽化したシステムは働き方やニーズの多様化、スタートアップ企業との協業や提携にも対応できません。クラウドはこのような問題を解消し、ハードウェアライフサイクルとの決別をも実現させます。
また、自社運用のシステムにおいてはノウハウの属人化を引き起こしているケースもあります。一方でクラウドストレージは外部ベンダーに支払う利用料だけで保守に関わるコストや容量増への対応といった管理を削減できるため、IT人材をより生産性の高い業務に集中させられます。情シス人材不足に悩む中小企業にはライフセーバーとなるでしょう。
クラウドストレージのメリット
場所や端末を問わず、同じファイルにアクセスできる
クラウドストレージはインターネット回線を利用するため、端末内部や社内に個々のストレージ環境を構築するものではありません。そのため、ユーザーはアカウントIDとパスワードを使用してサービスにログインすることで、いつでもどこでも同じストレージ空間にアクセスできます。これはつまり、ファイルを持ち歩かなくても好きな場所で利用できるメリットなのです。
外出先からも情報のやり取りが促進する
外出先にいてもインターネットに接続できる環境さえ整っていれば、社内の人とスピーディにそして正確にファイル共有やコラボレーションが行えます。これによって情報のやり取りが促進し、業務効率も向上します。ただし、外出先からアクセスする際は必ず信頼性の高い回線を使用するよう心がける必要があります。
初期投資を抑えて大規模なストレージを構築できる
クラウドストレージを使用するにあたって必要な準備は、インターネット回線とサービス契約だけです。物理的なサーバーやストレージを購入・設置する必要はありませんし、社内ネットワークの整備も不要です。そのためストレージ構築にかかっていた初期投資を抑えて、組織全体で利用可能なストレージ環境を構築できます。
コストを固定化して財務計画が立てやすくなる
クラウドストレージは基本的に、契約するプランとサービスを使用するユーザー数に応じて月々の料金が決まります。そのため、ストレージにかかるコストを固定化・視覚化できることで、財務計画が立てやすくなり、より戦略的な経営を実践できます。
情報システム担当者の管理負担が軽減される
クラウドストレージの管理・運用はすべてサービス提供事業者が行います。従って、ユーザー企業は安定性の高いストレージ環境を使用するだけであり、前述もしましたが、情報システム担当者の管理負担が軽減され、今まで以上に戦略的なことに注力できるでしょう。
常に最新状態のシステムを使用できる
クラウドストレージの環境は常に最新の状態が保たれているため、ユーザー企業が個別にサーバーOSやストレージOSなどのアップデートに対応する必要はありません。モバイル端末からのアクセスも必須な昨今、モバイルOSの頻繁なアップデートに追従することは容易ではありませんが、そういった問題も解決されます。
社内ストレージ環境よりもセキュリティを強化できる
インターネット回線を利用するということでセキュリティ面に不安を感じる企業も少なくないでしょう。しかし実際は、クラウドストレージを利用することでセキュリティが強化されるケースが大半です。ただし、サービス提供事業者がどういったセキュリティ対策をとっているか、セキュリティ機能を提供しているかの事前確認を怠らないようにしましょう。
アクセス権限を独自に設定できる
ほとんどのクラウドストレージは管理者が独自にアクセス権限を設定できるため、ファイルの重要度に応じてユーザーアクセスを制限できます。重要なファイルへのアクセスを制限することでセキュリティを強化できます。この機能を応用すれば、社内だけではなく社外、つまりプロジェクト等の関係者やパートナーとの情報共有も容易となり、より業務効率が上がります。
ファイルの共同編集ができる
クラウドストレージの中にはストレージ上でファイルの共同編集が行えるサービスがあります。一般的な社内ストレージでは共同編集ができないため、クラウドストレージを利用することで業務効率がアップします。
BCP(事業継続計画)の一環として使用できる
自然災害やテロなどによってオフィスがダメージを受けると、ストレージに保管されているファイルの一部または全部が損害を受ける可能性があります。そうすると事業継続が難しくなり、経営が傾く可能性があります。クラウドストレージを使用している環境では自然災害やテロなどに向けたBCP(事業継続計画)が確立できるため、何かしらの損害を受けても事業がストップすることはありません。
クラウドストレージを選ぶ際のポイント
クラウドストレージを選ぶ際に確認すべきポイントは次の3つです。
- 自社に必要な機能が備わっているか
- サポート体制は充実しているか
- セキュリティ対策が十分か
それぞれ詳しく解説していきます。
自社に必要な機能が備わっているか
機能で特に注目すべきは次の2点です。
- ブラウザとアプリの両方で利用できるか
- スマートフォンやタブレットなどのデバイスにも対応しているか
近年では時間と場所を選ばない働き方が浸透しているため、アクセス性に優れたサービスを選択する必要があります。
また、必要なデータ容量は企業によって異なるため、現状で使用している容量と各サービスのプランを確認しながら選ぶ必要があります。契約後に変更したいという場合も出てくることを考慮し、容量無制限か最低でも容量を増やせるタイプがおすすめです。
価格とサービスのバランスも重要です。価格が低いクラウドサービスは必須機能がオプションになっていることもあるため、追加費用が発生する場合があります。条件によっては割高になることもあるので、注意が必要です。
サポート体制は充実しているか
導入するサービスのサポート体制も導入前に必ず確認しておきましょう。導入前の相談だけではなく、構築から運用までを通じて親身にサポートしてくれるかどうかという点が重要なポイントです。
運用と保守はすべて事業者に任せることとなるため、サービス体制が整っていないクラウドストレージを利用すると思わぬトラブルに発展する可能性があります。そのため、突然のエラーやトラブルが発生したときの応対や対応時間も事前にチェックしておきましょう。
セキュリティ対策が十分か
企業の保有する情報やデータをネットワーク上で保存するクラウドストレージのサービスは、暗号化通信やIPアドレス制限などのセキュリティ対策がなされていることは必須となります。
セキュリティ対策が十分なサービスを選び、マルウェアやランサムウェアによる不正アクセスや情報漏えいの脅威から企業を守りましょう。
また、外部対策だけではなく、不正持ち出しといった内部対策の有無も必ず確認しておきましょう。併せて、災害発生によるデータ消失時の対応についても忘れずに事前対応しておきたい項目です。
セキュリティについては100%安全というものは存在しません。常に新しい脅威が発生し、それに対して防衛できるかどうかという攻防になります。よって、現時点でどうかという視点だけでなく、今後に向けてどういった対策がなされているかという点もチェックしておきたいポイントです。
クラウドストレージを利用する際の注意点
クラウドストレージを利用する際には、必ず運用開始後の注意点についても把握しておきましょう。以下では事前に知っておきたい項目を紹介します。
インターネット上でしか利用できない
クラウドストレージは、オンライン環境での使用が前提になります。サービスによってはオフライン環境下でも使用できますが、基本的にはインターネットとの接続が必要です。
インターネットのつながっていない環境で会議などを行う場合には、事前に手元のパソコンにデータをダウンロードする必要があるかもしれませんので注意しておきましょう。
クラウドストレージについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
オンラインストレージとは?基礎から解説
https://www.boxsquare.jp/blog/online-storage.html#toc-2
まとめ
働き方や消費者ニーズの多様化によって、今後もクラウドストレージの利用率は高まっていくでしょう。企業にとっては業務効率化の実現やコスト削減といったメリットも期待できます。
ただし、クラウドストレージを選ぶ際には、自社に適した機能やサポート体制を確認することが大切です。情報漏えいや不正アクセスなどに対するセキュリティ対策が万全な事業者を選ぶ必要もあります。
クラウドストレージ選びで迷っている方は、個人向けより、より一層高度なセキュリティ対策と利便性の高さを兼ね備えた企業向けのサービスの利用検討がおすすめです。
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