デジタル化、ペーパーレス化により、紙文書とは異なる考えでの管理が求められています。また、その新しい文書管理の重要性が高まる中、文書情報管理士の資格が注目されています。文書情報管理士は、文書情報の管理におけるプロフェッショナルであり、高い専門性がある資格です。本記事ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進とともに注目度が上がってきた文書情報管理士について解説します。
文書情報管理士とは
文書情報管理士とは、主に企業で扱う紙の文書(帳票類、伝票類、ビジネス文書、技術資料、図面など)を電子機器でデジタル化し、保管・閲覧できるようにする技術や知識が問われる資格です。JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)という団体によって実施される民間の検定試験によって認定される資格で、約20年の歴史があります。累計1万4,000人以上の取得者がおり、その数は年々増加しています。
働き方改革もありペーパーレス化が推進される中、紙媒体資料のデジタル化は企業において重要度が高い取り組みで、推進するにはマイクロフィルムの活用やスキャナ保存、電子ファイルの保管方法の知識が求められます。また、トラブルなくデジタルでの保管に移行するためには文書そのものの知識や、文書の作成から破棄までの過程(文書ライフサイクル)といった文書管理/コンテンツ管理に関する法律的な知識も必要です。文書情報管理士は、こうした文書のデジタル保管に関する一連の知識を備えたエキスパートと言えるでしょう。
文書情報管理士の取得理由
文章情報管理のエキスパートである文書情報管理士ですが、取得理由は人によって異なります。ここでは資格を取得する理由と、取得することで得られるメリットについて紹介します。
文書情報管理についての理解を深めるため
文書情報管理士が注目される背景には、平成17年4月に施行された「e-文書法」の制定と、平成27年度と28年度の2年に分割して実施された「電子帳簿保存法」の要件緩和があります。
まず、e-文書法とは「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2法を総称した呼び名です。
電子帳簿保存法は国税関係帳簿を電子作成、保存する法律で、e-文書法の制定とともに国税関係書類のスキャナ保存が容認されました。要件が厳しく中々普及しなかったデジタル化による保存ですが、要件緩和によって一気に承認件数が拡大しています。ご存知の方も多いと思いますが、この改正電帳法は、2022年1月1日から施行されています。
さらに、近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)によるペーパーレス化の波も後押しし、文書のデジタル化に関する専門的な知見や管理体制の構築や保管方法のルール、法律に対する適切な対応など、文書管理に関わる専門的な知識が必要になりました。こうした文書情報管理についての理解を深めるため、資格の取得を目指す人が増えています。
入札の要件を満たすため
文書のデジタル化やマイクロフィルム化は、民間企業のみならず官公庁・自治体にとっても重要な取り組みです。当該業務には一定水準の知識や技能が求められるため、こうした行政機関の電子化業務の公募には、入札要件として「文書情報管理士の資格保有」の項目が設けられていることがあります。
また、内閣府を始めとした複数の省庁を含む行政機関や、国立国会図書館、国立公文書館など多数の独立行政法人、都道府県庁や市区町村の電子化業務も同様の要件を提示していることがあります。こうした入札要件を満たすために資格を取得する場合や、公的案件に入札している企業への就職を目的とした資格取得も考えられるでしょう。
文書情報管理士の取得方法
検定試験は春と冬の年2回、CBT方式(Computer Based Testing)で開催されています。資格を取得するには、この試験に合格する必要があります。
CBT方式とは、コンピュータ上で行われる試験方式で、40日間の試験期間中であれば、全国約260ヶ所の会場で受験が可能です。また、急用により試験を受けることが難しい場合でも、受付期間内で、かつ予約した試験日の3日前までなら受験日や会場の変更申請もできます。
資格は2級、1級、上級と分かれており、5年ごとの更新が必要です。更新料は有料で、簡易的な課題提出も求められます。
文書情報管理士の試験について
文書情報管理士の試験の基本情報について説明します。ご興味をお持ちの方や実際に受講を検討される方のために、流れを把握しておきましょう。
受験級
文書情報管理士は2級、1級、上級と階級が3段階に分けられています。1級、上級は、前の級を取得してからでないと受験できないため注意が必要です。
2級は文書情報管理に関する基本的な知識がメインです。また、日本における法令や標準規格などが出題されます。1級は2級の内容に加えて、より専門的な知識や実技の応用力が求められます。また、作業者に対する指導力も求められるため、より深い知識が必要となります。
上級は1級に加えて課題分析能力やシステム構築能力など、エキスパートに求められるスキルが求められます。多角的な視点からの分析能力も求められるため、より難易度は高くなっています。
申し込み
申し込み方法は一般個人、団体、学割に分けられています。自身に当てはまるパターンで申し込みをしましょう。
一般受験の場合、受験料は受ける級にかかわらず11,000円(税込)です。団体受験の場合8,800円と団体割引が適用されますが、1事業所20名以上の受験が条件となっています。学割を適応した場合、7,150円と最安値で受験可能です。日本国内の学校・大学・短期大学・大学院・専門学校・予備校に在学中の学生で、受験申込時点で有効な学生証を所持されている方が対象です。いずれもJIIMAのWebサイトから申し込めます。
試験前後を含めた流れ
受験までの流れは一般個人と団体・学割で一部異なる部分があるため注意が必要です。
まず、一般個人の場合、CBT運営会社のWebサイトから受験登録を行います。団体の場合は、責任者が専用サイトから団体登録をして受験料を支払います。学割の場合は、プリントした申込メールに学生証のコピーを貼りつけて送付する一手間が発生するので、忘れないようにしましょう。入金確認後にバウチャーチケット(予約のための整理番号)が発行されます。
その後、受験の予約を行い、受験当日は指定した会場に向かいます。原則、遅刻をすると試験を受けられないため、注意してください。2021年時点の出題数は各級80問、制限時間は90分です。2級は択一選択式、1級と上級は一部が多肢選択式になることがポイントです。試験終了後はスコアレポートを受け取って終了です。合格の場合は、追って認定証明書が送られてきます。団体の場合は責任者に合否通知が届きます。
受験準備
他の資格試験と同様に参考書での学習や、受験対策セミナーの受講などが挙げられます。主催であるJIIMAが発行している参考書やセミナーが用意されています。
参考書は「文書情報マネジメント概論」「デジタル時代のマイクロフィルム入門」「Document Management標準化ガイドブック2017」「効率とコンプライアンスを高めるe-文書法 電子化早わかり(令和版)」の4冊がJIIMAから発刊されています。また、2級と1級はデジタル全般の基礎と応用についてのセミナーが用意されています。上級の場合、より高度なマネジメント向けの内容が含まれます。また、全ての級でマイクロフィルム全般の基礎と応用、関連法規と関連規格について学ぶことが可能です。
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まとめ
DXや働き方改革もあり、今まで以上にペーパーレス化が進む中、デジタル文書の管理やコンテンツ管理に対する重要度はますます高くなっています。社会要請や事業を円滑に進めるため、また情報ガバナンス理解の一端として、文書情報管理士を受験してみるのもよいでしょう。また、官公庁や自治体での電子化業務を入札するには資格を保有していることが要件に含まれているため、入札に参加する場合にも取得が必須です。
文書情報管理士の資格を取得する際はデジタル化された文書の取り扱いに関する基礎知識の取得や応用実技のスキルが求められます。年に2回受けるチャンスがあるため、セミナーや参考書を活用しながら準備を進めることで、資格獲得に近づきます。ぜひ挑戦してみてください。
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