稟議書や請求書など、ビジネスでは社内回覧を必要とする決裁文書が多数存在します。それらを効率的に回覧することが、企業の生産性向上効果を生むことは皆さんがよく知るところでしょう。しかし実情は、非効率的な社内回覧によって生産性を下げ、スムーズな業務プロセスの進行を妨げています。なぜ、多くの企業は社内回覧を滞りなく回すことが難しいのでしょうか?
本稿では決裁文書の社内回覧が非効率的になってしまう原因と、社内回覧を効率的に行うためのポイントについてご紹介します。
決裁文書の社内回覧が非効率的になる原因
まずは、決裁文書を社内回覧する際に、非効率的になってしまう原因についてご紹介します。
原因1. 決裁者が不在になることが多い
紙の決裁文書を作成し、手作業で回覧していきながら決裁者の捺印をもらうようなプロセスでは、手作業による手間が多い上に、決裁者が1人でも不在なら社内回覧の流れが滞ってしまい、決裁完了まで多くの時間を費やすことになります。日常的にこうした状況が発生していると、それが当たり前になり非効率性に気づかなくなる可能性があります。
原因2. 決裁申請のプロセスが複雑になっている
2つめの原因は、決裁申請のプロセスが複雑で、社内回覧を完了させるまでに多くのプロセスと時間を費やしていることです。決裁文書ごとに書類フォーマットが異なっていたり、申請方法が異なっていたりすると、従業員は決裁文書が発生するごとに社内回覧の方法や流れを確認しなければならず、そこに多くの手間と時間が発生します。つまり、ルールやプロセスが複雑なことで無駄な作業時間が多くなるのです。
原因3. 社内回覧の進捗状況が分からない
社内回覧が非効率的になるさらに大きな原因は、社内回覧の進捗状況が把握できないことです。つまり、決裁がどこで滞っているか分からず、決裁完了までの道筋が見えない状態です。進捗状況を確認できないと決済完了後の準備ができないことに加えて、誰がどのような原因でプロセスを止めているのかなども知る由がなく、進ませることもできません。逆に社内回覧プロセスの途中経過が明確になっていると、決裁が滞っている管理者や部署に催促を行ったりと、決済完了後のプロセスの準備を並行して開始したりと効率化に向けたアクションが取れます。
以上が決済文書の社内回覧が非効率になる主な原因です。会社によっては他にも細かい原因はあるでしょうが、自社の社内回覧が非効率的だと感じたらまずは上記3つの原因に該当していないかを調べてみましょう。
決裁文書の社内回覧が非効率的になると起こる問題とは?
決裁文書の社内回覧が非効率なことが常態化している会社のほとんどは、現在、選択している方法が実は非効率的であることに気づいていません。しかし、実際には多くの問題が発生しているのです。一番深刻な問題は市場やビジネスに求められるスピードについて行けず「優位性を失っている」という点です。
たとえば競合他社数社を含めたコンペに参加した際に、顧客企業からの要望を踏まえた見積書や仕様書を提出するケースを想定してみてください。顧客企業の立場になって考えれば、一番早く見積書や仕様書を提出した会社の印象が良くなるというのは容易に想像できるでしょう。それだけで「担当の営業がしっかりしている」という印象になりますし、「社内の決裁フローがしっかりしているのだな」と判断できます。反対に書類提出が遅い会社に対しては、あまり良い印象は持たないかと思います。
決裁文書の社内回覧がスピーディということは、顧客に対しては信用力の向上、そして満足度向上に繋がります。つまり、社内回覧の早さがそのまま競争優位に繋がるのです。
この優位性を手に入れるためには、会社全体が一丸となって社内回覧を素早く効率良く回すという姿勢が大切なのですが、そもそも会社で採用している社内回覧の仕組みの問題で不可能であったり、ルール化されておらず従業員の意識が低かったりすることで社内回覧が遅いままになっていることも多く見受けられます。
決裁文書の社内回覧を効率良くするポイント
では、どうすれば決裁文書の社内回覧を効率良くできるのでしょうか?
まずは非システム領域の観点で効率化のポイントについて考えてみましょう。
ポイント1. 社内回覧の重要性を会社全体で認識する
まず大切なことは、会社全体が決裁文書の社内回覧の重要性について理解することです。前述のように、社内回覧の早さは競争優位性に直結するので、会社全体がそれを重要と認識することが大切です。そのためには社員教育等を実施し、社内回覧の現状把握、課題の解決策、解決後の効果などを会社全体で共有することが大切です。
ポイント2. 決裁文書のフォーマット合わせる
稟議書や見積書など、決裁文書の種類は多岐にわたりますが出来る限り書類のフォーマットを合わせることが大切です。まずは汎用的なフォーマットを作成し、稟議書や見積書、請求書など必要に応じた書類が作成できるようにすると、作成だけでなく確認なども均一化されるためスピードが向上します。ちょっとした効率化ですが、塵も積もれば大きな効率化につながります。
ポイント3. 社内回覧プロセスを統一する
稟議書や決裁書など決裁文書に種類によって社内回覧プロセスが異なっていると、環境が複雑になり効率が下がります。従業員は1回1回プロセスを確認することになり、そこに時間を費やすことになります。社内回覧プロセスが統一されていれば、従業員は迷うことなくプロセスを進められるため、初動を早めて社内回覧の効率性を向上することができるでしょう。
ポイント4. 常に決裁者を明確にする
会社によっては決裁文書の社内回覧を回す際に、決裁者が不明確な場合が多々あります。特に異動が多いような会社では決裁文書ごとの決裁者が常に変化するので、決裁者を確認するだけ多くの時間を費やします。社内回覧プロセスを管理する担当者を設けて、決裁文書ごとに誰が決裁者なのかをリアルタイムに更新する体制を取ることで、こうした問題が解消されます。
ポイント5. 決裁者不在時の対応策を考える
決裁者が外出や出張、休暇などによって不在になり、社内回覧が滞るケースは多いことでしょう。このケースでは決裁者が会社に戻るまで待つしかなく、非効率性を排除できない原因になっています。そこで、決裁者不在のシナリオを想定し、不在時の対応策を考えましょう。代理決裁者を決めておいたりすることで、社内回覧を滞りなく進めることができます。
ポイント6. 進捗状況を把握できるようにする
決裁文書の社内回覧では進捗状況を常に把握することが大切です。方法としては、紙の決裁文書を使用するのではなく電子データとして保存した決裁文書を使用し、各決裁者・各部署に配布して承認済みのものを返送してもらうなどがあります。
ポイント7. 決裁文書作成の規定を作る
決裁文書は種類ごとに規定を作ると、決裁者にとって読みやすい文書になり社内回覧がスピーディになる傾向があります。決裁文書ごとの要点を押さえて規定を作りましょう。
いかがでしょうか?
上記のようなポイントを徹底するだけでも決裁文書の社内回覧を効率化することはできます。ただし、IT無しでの効率化には限界があるため、より効率化を目指す際はやはりITツールの活用が必要です。例えばBoxを活用すれば、インターネット上に設置したストレージ空間を活用でき会社全体でのファイル共有が可能です。また、いつでもどこでも決済文書にアクセスできるだけでなくワークフローの機能を使い状態を把握しながら効率的に回覧を行うことも可能になります。
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