数年前に“ビッグデータ”という言葉が話題になり、現代ビジネスでは洪水のように情報が押し寄せ、それらを如何に管理するかがビジネスの成功を左右する、ということを予見していました。実際のところ、大きな成功を収めた企業の多くは、企業内外に散財する情報を統合して情報活用を最大化する取り組みをしています。
企業が保有する情報を記録する媒体として最も多いのが「紙のドキュメント」です。ペーパーレス化の重要性は誰もが理解しつつも、それを実現している企業は意外と少なく、デスクの中やデスクの上、オフィスのキャビネットにはいつでも紙のドキュメントが散乱しています。そうしたドキュメントを正しく整理整頓し、いつでも素早く引き出せるようにすれば、企業の情報活用は今よりも大きく推進することでしょう。
本稿では、情報活用をより良くするための文書管理システムについてご紹介します。
文書管理システムとは?
文書管理システムは、組織内にあるドキュメントをまとめて管理するためのシステムです。いつでも好きな時に目的のドキュメントを引き出せる特徴を持ちます。「それってファイルサーバーシステムと同じなのでは?」と思った方も多いでしょうが、文書管理システムは単にディレクトリ構造でドキュメントを管理するものではありません。主に、次のような機能を有します。
文書の管理
電子化したドキュメントをPDF、Word、ExcelやPowerPointなど適切なファイル形式で登録および管理します。システムに登録したドキュメントのファイル形式を、後から変換することも可能です。
文書の検索
紙のドキュメントをスキャンしたり、ファイルを保存したりした際にメタデータを付与したり、自動的にインデックスを作成し、多様な検索方法によって目的の情報へ素早くアクセスすることができます。
バージョン管理
システム上で管理しているファイルの変更履歴を管理して、いつでも過去のバージョンに戻せる機能が備わっています。ファイルを誤って削除したり、間違って更新したりしたとしても安心です。
セキュリティ管理
一般的なファイルサーバーシステムと異なり、文書管理システムはセキュリティに優れています。多様な方法で設定できるアクセス権限に加えて、ドキュメントの重要度やユーザー権限に応じたセキュリティ設定も可能です。
ライフサイクル
ドキュメントは作成・活用・共有・保存・廃棄というライフサイクルを辿るものです。これを適切に管理することで、必要以上にドキュメントを保有せずアーカイブし、重要なドキュメントはいつでも確認できる状態にします。
ワークフロー
スキャンしたドキュメントの確認および承認といったワークフローをシステム上で行えるようにして、ドキュメント承認までのプロセスを素早く回します。
文書のスキャン
専用機器や複合機を使用し、文書管理システムと連携することでスキャンしたドキュメントを電子化して正しく保管します。システムによっては、電子化したドキュメントのテキストを読み取り、全文検索にも対応することが可能です。
システムのカスタマズ
自社の管理規定に基づいたカスタマイズを施すことが可能です。例えば文書ごとに採番を自動で行うなどがこれにあたります。また、特定の文書の変更が発生した場合に通知するなど設定で簡単に行えるものをあります。
様々なデバイスからのアクセス
近年はパソコンだけではなく、スマートフォンやタブレットなど様々なデバイスから文書にアクセスすることが求められています。クラウド型の文書管理システムは、パソコン以外の様々なデバイスからのアクセスを可能します。種類も多く、頻繁にバージョンアップされるモバイルデバイスに追随するコストを削減することが可能です。
これらの機能の中にはファイルサーバーシステムが同じように備えている機能もあります。ただし、高度な文書検索やセキュリティ管理、ライフサイクルやワークフローといった機能は文書管理システムならではのものなので、ファイルサーバーシステムには無い高度な管理が可能であるという特徴があります。
オンプレミスとクラウドの違い
文書管理システムを導入する際には、オンプレミスで導入するか?それともクラウドとして利用するか?という選択も必要です。
オンプレミス(On-premises)とは社内インフラ上に構築するシステムのことで、サーバーを用意してソフトウェアをインストールし、社内ネットワークを介してパソコンからシステムを利用します。
一方、クラウド(Cloud)とはインターネット上で提供されるサービスの総称であり、WebブラウザからサービスURLにアクセスして、アカウントIDとパスワードを入力することでシステムをサービスとして利用できます。
オンプレミスとクラウドの特徴を、下記にまとめてみましょう
オンプレミスの文書管理システム
- システムを動かすためにサーバー、OS、ミドルウェアを調達する必要がある
- 社内ネットワークを整備して各パソコンからシステムを利用できる状態にする
- ソフトウェアライセンス費用と年間保守費用が発生する
- システムの運用はすべて内製化するか、外部にアウトソーシングする
- 追加のストレージが必要になった場合は新たにサーバーやストレージを調達する必要がある
- システム運用にかかる費用のほとんどが人件費なのでコストがブラックボックス化しやすい
- 汎用性が高く、多様なカスタマイズができるため自社要件を満たしやすい
- イントラネットを使用するため、インターネットよりネットワーク速度が速くアクセスパフォーマンスが高いことがある
クラウドの文書管理システム
- システムはWebブラウザを経由もしくはWebプロトコルで利用するため、サーバーなどの調達は不要である
- システムにアクセスするデバイスの種類は関係なく、すべてアカウントIDとパスワードで管理される
- サービスを利用するためにサブスクリプション(定期ライセンス)を契約して、月額使用料を支払う
- システム運用は提供事業者が行うため、運用負担を軽減することができる
- 追加のストレージ容量が必要になってもサービス提供者に連絡し、追加コストを払うことで拡張できる。また、自動で拡張することも可能である。容量無制限のサービスもある。
- システム費用のうちほとんどが月額使用料なのでコストが明確化する
- 一般的に汎用性は高く、カスタマイズはできないケースが多い。しかし、十分な機能を有するものが多い。
- インターネット回線を使用するためネットワークの状況によりパフォーマンスが左右する。
現代ビジネスではシステム導入を検討する際に、“クラウドファースト”と呼ぶクラウドの利用を優先的に考えるのが当たり前になっています。もちろん、環境によってはオンプレミスの方が良いという場合もあるため、一概に「全てをクラウドで」が最適解とは言えません。
ただし、クラウドでシステムを利用することで初期投資を大幅に削減したり、ランニングコストを明確にしてIT予算計画を正確に立てたり、高い生産性を手にしている企業が多いことも確かです。
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文書管理システムの用途とは?
文書管理システムを導入する目的の多くは、生産性向上とペーパーレス化に集約されます。紙のドキュメントを保有することを極力少なくすることで、紙の保管・印刷コストを削減したり、目的の情報へのアクセス速度を速めたりするだけでなく、物理的な紙に働く場所を縛らなくなり、テレワークを実現しやすくすることができます。
先にも述べたとおり、一説では、ビジネスパーソンが探し物にかける時間は年間150時間もあり、その大半がドキュメントを探す時間だと考えられます。営業日に換算した約19日分なので、これを短縮できるとしたら大きな生産性向上に繋がることでしょう。
昨今では働き方改革により、残業時間の削減や有給休暇の取得などへ積極的に取り組まなければなりません。そうした中で、文書管理システムは高い生産性効果を期待できる存在として注目されています。働き方改革の実現はもちろん、ビジネスの成功や事業の成長を大きくサポートするシステムということなのです。この機会に、あらためて文書管理システムの導入や更新をご検討してはいかがでしょうか。
なお、Boxがクラウドコンテンツマネジメントを謳っているのは、Boxが単なるクラウドストレージではなく、クラウド・コンテンツ・マネジメント(文書管理クラウド)の機能を有すからなのです。
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