政府主体となって推進する『一億総活躍社会』は、老若男女 誰もが自身の能力を発揮し、活躍できる社会のビジョンです。その一環として取り組まれているのが「働き方改革」であり、2019年4月1日、より働き方改革関連法案のうち、いくつかの法令が施行されました。
特に注目されているのが「時間外労働の上限規制」と言われています。これまで実質的に無視されてきた時間外労働の規定を見直し、罰則付きの上限規制を初めて施行することになりました。そして、これらの法令は2020年4月1日には中小企業にも施行されることになります。
今後、更に多くの法令が施行されていく中で、働き方改革によってもたらされるメリットとデメリットとは一体何でしょうか?本稿ではそれを、従業員の視点と企業の視点、2つの視点から考えていきます。
働き方改革は何のためにあるのか?
端的に説明すると、働き方改革は「日本全体の労働生産性を向上させ、経済成長を促すこと」を目的としています。OECD(経済協力開発機構)が毎年発表している労働生産性ランキングで、日本は数十年間、主要先進7ヵ国中最下位、OECD加盟35ヵ国中20位という低水準にあります。
こうした事実に加えて、日本では少子高齢化による人口減少、それに伴う労働力人口の減少によって慢性的な人材不足に陥ることが予測されています。国の労働力が低下すれば、国の経済は弱体化していきます。
そうした状況に危機感を持った政府が主体となり、働き方改革は推し進められています。また、働き方改革実現会議を自ら牽引する安倍内閣総理大臣の政権情勢も良好なことから、今後さらに働き方改革に関する法令が強化されていることが予想できます。
従業員にとっての働き方改革
働き方改革関連法案は、日本全体の労働生産性を改善すると共に、企業が提示する無理な労働環境の中で従業員が肉体的・精神的ダメージを受けないように、職場環境の改善も目的としています。そのため、働き方改革の影響を受けるのは企業だけではなく、従業員も同じことです。
働き方改革のメリット
政府が推進する働き方改革では、「長時間労働の是正」にスポットがあてられています。数年前には長時間労働による過労死や自殺といったニュースが度々報道され、それに危機感を抱いた政府は日本企業の長時間労働問題へ本腰を上げました。
これにより、2019年4月1日より大企業で、2020年4月1日より中小企業での「時間外労働の上限規制」が施行されます。これは、時間外労働の上限を原則として月45時間、年360時間にするという法令であり、この時間を超えて労働させる場合は、所定の書類を労働基準監督署長に届け出る必要があります。
「時間外労働の上限規制」によって残業が完全に無くなるわけではありません。しかし、上限を定めることで長時間労働の是正に対する士気が高まり、過酷な労働環境を改善するきっかけになるかもしれません。
従って、働き方改革によって最も多くのメリットを享受するのは、これまで過酷な労働環境に悩まされていた従業員と言えます。もちろん、長時間労働の是正に取り組まれていく中で、成果主義に切り変える企業が増えていくことが予想されますので、これまで以上に仕事に対するやりがいを感じられる職場環境の構築も期待できます。
働き方改革のデメリット
デメリットとしては、「時間外労働の上限規制」が施行されることで限られた時間の中で業務を遂行し、成果を出す必要性が生じ、業務のさらなる効率化が求められたり、より時間あたりの労働生産性向上を求められるようになるということです。
もちろん、業務効率化や労働生産性向上というのは企業にとってだけではなく従業員にとっても良い影響があるのですが、「今までのやり方のまま」では限られた時間の中での作業となるためストレスが増す可能性があります。
会社の仕組みはそのままに「時間外労働の上限規制」に対応するとなると、従業員に負担が生じて昼休み返上や残業時間削減による減給などの影響が考えられます。従業員としては、「時間外労働の上限規制」に対して企業がどういった対応策を取るのかしっかりと確認した上で、必要に応じてアイデアを主張することも大切です。
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企業にとっての働き方改革
次に、企業にとっての働き方改革のメリットとデメリットを見ていきましょう。
働き方改革のメリット
行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの「予想通りに不合理」という著書の中では、ある大学において3つのレポートそれぞれの提出期限を「あらかじめ設定したクラス」「生徒に設定させたクラス」「まったく設定しなかったクラス」に分けて行った実験によると、一番成績が良かったのは提出期限を「あらかじめ設定したクラス」だったそうです。
要するにこれは、「時間外労働の上限規制」が無い環境では、レポートの締め切りが無いのと同じ状態となります。その一方で上限規制を作ることで仕事のスピードも質も同時に高まることを意味するということも考えられます。
「残業時間が少なくなれば仕事量が少なくなる=売上が下がる」と悲観的に考えている企業も多いかもしれませんが、考え方によっては業務効率と労働生産性を大幅に向上して、時間あたりのビジネス付加価値を最大化できるかもしれません。加えて、残業時間が少なくなった上に同じ仕事量をこなせる環境を構築できれば、人件費削減や利益率向上に貢献できるのです。
つまり、働き方改革においては、「労働生産性向上」であり、「労働時間の削減」のみがゴールではありません。効率的に成果が達成できれば、結果労働時間は短くなるということです。
もちろん、そのためにはITの利活用や社員教育など企業独自に様々な取り組みを実施する必要があります。
働き方改革のデメリット
会社の仕組みをそのままに「時間外労働の上限規制」に対応しようとなると、未完業務が大量に発生したり、商品の品質低下などが発生したりする可能性が大いにあります。また、従業員に無理な負担を生じさせて従業員エンゲージメントの低下も招くこともあるでしょう。
特に仕事を受託する会社においては、どれだけ多くの案件をこなせるかが利益に直結するため、問題は深刻です。
そこで、業務効率化や労働生産性向上を実現するために会社の仕組みを見直したり、勤務時間を柔軟に計算できるように人事制度を変える、あるいはクラウドストレージやRPA(Robotic Process Automation)といったITツールを導入するといった、新しい制度や環境を構築することが重要になってきます。
中小企業においては、労働生産性向上に向けたIT導入支援補助制度なども充実しているので、そうした制度を利用した取り組みに注目が集まっています。また、労働時間改善を図るために要したコストの一部を負担する『時間外労働等改善助成金』という補助制度もあるので、積極的に検討しましょう。
働き方改革の成功は、日本企業にとって必ず実施すべきことであると同時に従業員の労働生産性向上に大きく依存します。そのため、弊社Boxでは、クラウドストレージを活用したコラボレーションの強化により、企業に大きく貢献致します。ぜひ、この機会にBoxを活用した働き方改革もご検討ください。
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