現行のファイルサーバーが段々と今日のビジネス要件を満たせなくなっているのは、今企業にとってよくあることです。特に、数年前にファイルサーバーを設置・構築してから更新しておらず、容量不足に単純なストレージのスケールアップ(容量を増設する方法)で対応していたり、もう一つファイルサーバーを設置したり、不要なファイルを削除するよう社員に呼びかけたり・・・。現状をなんとか凌ぐことで対処してきた企業にとっては、まさにファイルサーバーの更新時にこれらの問題を解決し、ビジネスに合わせるベストタイミングだと言えます。
ところが、ファイルサーバーの更新は決して簡単な作業ではありません。問題が起これば、保存されているファイルを損失し、業務に支障をきたす可能性もあります。様々なリスクを回避しつつ、安全にファイルサーバーを更新するにはどうすればよいのでしょうか?
本コラムではファイルサーバーを更新する際に検討したいポイントについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
こんなファイルサーバーはもう替えどき!
まずは、「自社がファイルサーバーを更新すべきかどうか分からない…」という方に向けて、ファイルサーバー更新のサインについてご説明します。以下の項目に1つ以上当てはまる場合は、ファイルサーバーの更新を企画、検討しましょう。
サポート期限が近付いている
現行のファイルサーバーのサポート期限が近付いている企業は多いかと思います。Windows Server 2008及び2008 R2は2020年1月14日に延長サポートが終了するため、同OSを利用している環境では、更新まで時間が全く残されていません。Windows Server 2012及び2012R2に関しても、メインストリームサポートはすでに終了しているので、日々変化するビジネス要件に対応するには新しい環境構築が必要でしょう。
ハードウェアが古くなっている
ハードウェアは精密機械なので、使用年数に応じて老朽化していきます。少しずつではありますが、パフォーマンスは下がっていく一方なので、ある一定のラインを超えるとユーザー側でパフォーマンス低下が著しく感じられるようになります。そうなると日々の業務に支障をきたしますし、組織全体の生産性が下がれば売上や利益にもその影響が及ぶようになるでしょう。
運用管理の負担が増している
長らく同じファイルサーバー環境を運用している企業では、段々とWindows ServerやLinux Serverなど異なる環境が混在し、結果、運用管理の負担が以前より増しているケースが少なくありません。さらに、部門ごとにNAS(Network Attached Storage)を運用しているケースもあるので、現実はより複雑です。運用管理にかかる負担が増えれば、当然ITコストも増します。未来のITへ積極的に投資するには、現状の運用管理負担を軽減することが大切です。
コスト削減を目指したい
各部門に分散されたファイルサーバー環境は、それぞれのリソースを100%使いきることなく終わっている場合がほとんどです。そうしたリソースを「遊休資産」といい、資産を有効活用できていないことを示します。ファイルサーバーを更新し、遊休資産を無くすことができれば全体におけるITコストが大幅に削減され、新しい投資も可能になります。
セキュリティリスクを減らしたい
長期間同じファイルサーバー環境を運用している場合、セキュリティも往々にして年々低下していきます。というのも、サイバー攻撃は日々高度化しており、かつ新しい環境でのセキュリティが日々向上しているため、それと対比すると現行環境のセキュリティは次第に下がっていきます。さまざまな脅威に対応するために、セキュリティを向上したい企業はファイルサーバーの更新も検討すべきでしょう。
クラウド環境を利用したい
2017年のクラウドサービス利用率は56.9%と、前年の46.9%から大幅に増加しています。そのうち「ファイル保管・データ共有」を目的としたクラウドサービスを使用しているのは51.2%を占め、4社に1社以上はファイルサーバーにあたるシステムをクラウド環境で構築していることになります。クラウドサービスには多様なメリットがあることから、クラウド環境への移行に興味があるという場合も、現行のファイルサーバー更新を検討するきっかけとなるでしょう。
出典:総務省『平成30年版 情報通信白書』(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd252140.html)
シャドーITによる情報漏洩を未然に防ぎたい
社内に情報システムが認識していないファイルサーバーが存在する場合には、ガバナンスやコンプライアンス、セキュリティが確保されていないことになります。そのファイルサーバーから情報漏洩が発生する可能性も高いため、シャドーITとして運用されているファイルサーバーを撤廃し、ファイルサーバーの統合を検討する必要があるでしょう。
お客様など関係者と自由にファイルをやりとりしたい
今の時代、社内外とのコラボレーションは非常に重要ですが、社内のファイルサーバーで管理しているファイルを社外の方と共有する場合、ファイルサーバーそのものでファイルを共有することは難しく、メール添付やシャドーITによる受け渡しなど非効率的かつ安全ではない共有方法でビジネスを推進しているケースが多数あります。そのような場合には、セキュアにファイル共有が可能な機能を持つファイルサーバーや代替システムを検討する必要があります。
ファイルサーバー更新の際に検討したいポイント
いざファイルサーバーを更新する際は、いくつかの点に注意が必要です。各検討ポイントをしっかりと考慮しながら更新を進めないと、思わぬトラブルによってファイル損失など深刻な問題が発生するかもしれません。以下にその検討ポイントをご紹介しますので、必ずチェックしておきましょう。
1. 事前にデータバックアップを行う
ファイルサーバーを更新している際に万一システム障害でも発生すれば、移行が中断され、一部のファイルを損失する可能性があります。有事の際にバックアップデータが無ければ、損失したファイルは永遠に戻ってこないため、必ず事前にバックアップデータを取得しておきましょう。
2. 分散されたバックアップ計画を見直す
部門ごとのファイルサーバーが分散されていたり、NASを導入していたりする場合はそれぞれの異なるバックアップ方法を取っているかと思います。ただしファイルサーバー更新では情報システム部主導でプロジェクトが進みますので、統一されたバックアップ基準を作り、サービスレベルを保証するためのバックアップ計画を見直す必要があるでしょう。
3. 移行するファイルの優先順位をつける
日々の業務によって生み出されるファイル量は膨大ですし、それらを一度に移行するのは骨の折れる作業です。そこで重要なのが、「使用頻度の高いファイルから優先的に移行する」ことです。業務における使用頻度が高いファイルを優先的に移行すれば、ファイルサーバー更新の途中でも業務を続行できます。逆に、使用頻度が低いファイルを先に転送してしまうと、その分業務が停滞する可能性があります。業務によく使うファイルを可能な限り素早く移行することが、ファイルサーバー更新にかかるコストを削減するポイントです。
4. 転送速度を監視しながら効率化を図る
ファイルサーバー移行は、大量のファイルを同時に移行しようとしてサーバーに負荷をかけることも、余力があるにもかかわらず少ないファイル数で移行するのも、リソースの効率利用上問題があります。大切なのは移行のパフォーマンスを維持しつつ、移行可能な最大ファイル数を常に送り続けることです。そのため、転送速度を常にチェックしながら負荷をかけ過ぎず、余力を出さないために注意しなければいけません。
5. クラウドストレージを検討する
ファイルサーバーを最新化する際には、大きく2つの移行先があります。1つは今まで通りのオンプレミスのファイルサーバー、もう一つはクラウドストレージサービスへの移行です。上記でご紹介したような「もう替え時」で述べたことが、従来のファイルサーバーでは解決できないケースもあり、一方、現代的なクラウドストレージでは補うことが可能なこともあります。
6. ファイルサーバー更新後の教育を行う
ファイルサーバーの更新が完了したら、新しい環境における教育を実施します。たとえばクラウドストレージを更新先として選択した場合、今までとアクセス環境が異なるため、最初に教育を実施しないと現場が混乱することになります。
いかがでしょうか?ファイルサーバー更新を目指す際は、以上の検討ポイントに注意しつつ、既存システムに囚われず、常にビジネスや業務ニーズに合った正しい更新を目指していただければと思います。
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